2023/12/21

防雪カバー

吹き込んだ雪が付着しています
 今シーズンすでに何回か雪が降りましたが、デ1にカバーをかけていませんでした。以前に作ったカバーは、粘着テープで貼り合わせたところが剥がれたり破れたりしているので作り直すことにしていたからです。カバーを作るにはリビングのテーブルをどけてビニールシートを広げ、透明粘着テープで貼り合わせなければなりませんが、立ち座りが大儀で身体が硬くなった高齢者にはこれが難行なのです。冬に向けてビニールは買ってありましたが、なかなか着手する気にならず、かと言って放っておいたら車体が傷むのでやっと重い腰を上げたというわけです。

 前回は立体的に車体を覆うように作りましたが、体力を慮って単純な形態にしました。称して「肉屋の店先で揚げたてコロッケを包む紙袋形」です。長方形のシートの三方を粘着テープで貼り付け、残った一方を開いて電車に被せるのです。ポールが前後に出っ張っているのでむしろ理に適った形状です。1.2m幅のシートなので裾の方はチョッとミニスカートみたいになっています。

チョッと丈が短い

 12月も半ばになると冬本番で、連日最低気温が-10近くまで下がります。全国ニュースで「大寒波襲来、北海道は大雪」などと流すものですから、知り合いから「大丈夫?」と気遣いが寄せられます。鹿部は太平洋側に位置するので西高東低の気圧配置ではあまり雪は積りません。爆弾低気圧が通過したり、弱い低気圧でも停滞したりすると太平洋からの吹き込みで一気に数十センチ積ることがあるので厄介です。まぁひと冬に何度もありませんが。


2023/12/17

待避線(余談雑談) こういうの欲しい

  旧型客車の直角椅子を設けた休憩小屋を庭の片隅に作りたいと書きました(2023/6/2)。小屋を建てる代わりに廃車体の一部を運び込めればいいのですが、それは意外に大きいし費用もかかりそうなので現実には無理です。ところが函館市内と鹿部の隣町七飯町に鉄道車両らしき建物が使われている所がありますので紹介します。

 ラーメン店「ブルートレイン」

 湯の川温泉電停の近くに旧国鉄のワフをそのままお店にしているラーメン店があります。そのままと言っても屋根や側面には板が貼り付けられ、デッキ部には階段や玄関?が作りつけてあるので、なんとなく元ワフという感じです。ところが近づいて足元を観察すると、2段リンクの足回りが本物であることを物語っています。また内部には貨車当時の板張り内装が残っています。こちらに移住してきて初めてその名を知った時は「確かに色はブルーやけど、トレインには程遠いなぁ。」と思っていました。しかし何度かその前を通るうちにいつしか羨望を抱くようになってしまっています。

ラーメン ブルートレイン

 喫茶店「COFFEE TIME

 新川町電停から50mほど南東方向(電車通りから直角)に歩くと右手に赤とクリーム色に塗り分けられた車体が目に入ります。塗色に似合わず客車っぽい感じの車両で、店の前の駐車スペースからデッキに入れます。どう考えても鉄道マニアが廃車体を譲り受けたか、鉄道車両を真似た建物を置いたように見えます。ただ実物の客車の形式に思い当たるものがなく、やっぱり作り物らしいなと思いながら一度なかで鉄話をしたいと機会を窺がっていました。過日近くに買い物に行ったついでに入ったところ、外観ほどに店内は鉄っぽさが感じられず、唯一それらしいのはメッキして磨き上げられた犬釘がディスプレイとして壁に飾られていたことぐらいでした。マスターに聞いたところ、彼自身はまったく鉄っちゃんではなく、先代(父親)がオリエント急行好きで開店する時にこのようなデザインにしたのだそうです。オリエント急行ならこの客車も納得です。

喫茶 COFFEE TIME

 花直売所「小松花園」

 函館から鹿部方面に赤松街道(R5号線)を走り七飯町で函館新道に合流する200mほど手前にある花農園の直売所です。私は高速道路(函館新道)の走行が苦手なので函館への往復にはいつもこの道を利用するのですが、ずっと有蓋貨車の廃車体だと思っていました。貨車だと思っていた理由が屋根のカーブで、単一半径の薄い屋根になっていることからして客車や電車の車体断面には見えません。ところがプレスドアの貫通扉(引き戸)の両側の窓はHゴム固定なので電車の平妻連結面を切り取ってきたかのようでもあります。いかにもな形状の縦樋が付いていますが、それは電車なら側面ではなく妻面側にあるはずです。屋根にはガーランド型ベンチレーターが載っていたりするので、スクラップの寄せ集めかなと思っていました。その後色々な写真を調べていて「これだ!」と気づいたのがヨ8000です。前後の庇と側板は切り取られてなくなっていますが、各部にその名残りを見出すことができます。

花直売 小松花園

      ヨ8000     Wikipediaより

 おまけ「函館牛乳」

 函館空港の西方約2km、函館酪農公社の工場に牛と触れ合ったり乳製品を味わったりできる施設があり、そこに元函館市電の1000型(1006)が保存してありました。廃車体の利用ではなく展示してあるだけで、車内に入ることはできませんでした。ビューゲルはなく、台車は1台を縦割りにして片側からのみ見えるようにしてありました。過去形で書いているのは2019年に撤去されたためです。私がそこを訪問したわずか3か月後のことで、好きな車両だっただけに残念です。

函館牛乳(酪農公社)

2023/12/14

待避線(余談雑談) 鉄道模型のスピードについて

  昔から気になっているのですが、鉄道模型が運転される時のスケールスピード(実物換算速度)は速過ぎるのではないでしょうか?曲線部に入るとカクッと曲がって、動画で見てもいかにも模型ですと言わんばかり。市販品は最小曲線半径で脱線転覆しない程度に最大速度が設定されているのではないかと思われます。Nゲージ等小さなスケールほど、またレイアウトが大きいほど、傾向として速く走っているようです。一般的に自作、市販品にかかわらず、全体のバランスや細部に拘ってできるだけ実物のイメージを再現するように作られています。なのに、なぜか時間軸だけが車両やレイアウトのスケールと合っていません。スピードが遅いとエンドレスを廻って手元に戻って来るまで待ち遠しくて、ついついパワーパックのツマミを回してしまうのでしょう。模型に限らず、車を運転していても多くのドライバーが法定速度を越えて走っているように、何か本能的に駆り立てられる心理が働くものなのかもしれません。

鉄道博物館の巨大レイアウト

 鉄道模型では細部に拘って普通の人なら省略してしまうような小さな部材を取り付けたり、車内の天井や床下の裏側も忠実に再現したりなど、いろんな工夫をして実物っぽく見えるように努力する人がいます。小さな軽便鉄道レイアウトで実にゆっくり走る列車やそれに合わせて車体がゆらりゆらりと揺れるギミックを組み込んだ車両を見たことがあります。電圧を下げただけでは動きがぎこちなくなるので、減速ギア比を大きくしてスロー運転が出来るように工夫しているようです。これらは模型の時間軸も忠実にスケールダウンしたように見えますが、実は時間だけを頑なに縮尺しなかった結果であると言えます。

 鹿部電鉄はどうかと言うと、駆動モーターの出力不足により最高速度は約4/hに過ぎません。スケールスピードで12km/hはどう考えても超鈍足です。しかし庭で走っているのを見て遅いと感じたことはありません、むしろ線路の長さ(庭の広さ)、モデルの古さ(見るからにひ弱そう)などに馴染んでちょうど良い速度に見えます。電車の大きさや見る人との距離感、モーターや車輪の奏でる音響などにも調和しているからではないでしょうか。

 と考えると、模型の実スピードを縮尺で割ってスケールスピードを計算してもあまり意味がないように思えてきます。博物館の大レイアウトの列車がスケールスピードに忠実に走ると退屈で仕方ないことでしょう。逆にロムニー・ハイス・ダイムチャーチ鉄道みたいに広大な大地を走る場合を別にして、一般的な庭園鉄道ではわざとゆっくりエンドレスを周るとか、往復運転やスイッチバックをすることでスピードと無縁の、実物では味わえない遊びを違和感なく楽しむことができます。

ひとりスイッチバックごっこ

 それにしても、やっぱりNゲージは速過ぎる。

2023/11/24

YouTubeあれこれ

  庭の冬支度が一段落し、物置に散らかっていたTR27の部材(再分解していました)もカヌー格納庫に収納してしまったし、とにかく寒くなったので外の作業は春までお預けです。YouTubeには一年近く投稿していなかったので、TR27製作中に撮りためていた写真や動画を編集することにし、チョッと訳あってまず英語版を作成しました。3分弱にまとめ、最後はおふざけで終わります。

https://www.youtube.com/watch?v=_iLU5_GfwIM

日本語版は独立回転車輪などの走行抵抗低減機能について、このブログで説明してきた内容に触れようと思っていますのでいずれお楽しみに。

 投稿した後次々と表示される関連動画に目を遣ると、ほとんどが英語または読めそうもない外国語のタイトルが付いているのについ見入ってしまうのですが、その中にOn30の卓上レイアウトがありました。Oスケール(1/45)30インチナロー(762mm)の、アメリカ風森林鉄道、蒸気機関車が木材を積んだトロッコを牽いて複雑に敷かれた線路をゆっくり走ります。シーナリーはもちろん周辺機材や建物、積み荷も凝った形状になっていて作者の拘りが伝わって来ます。毎日飽きずに運転しては機関士になり切ってるんだろうなと目を細めました。

https://www.youtube.com/watch?v=qG-X-f6oGGY

それにしても見たところ1m×50cmくらいのレイアウトじゃやっぱりその内に飽きそうに思えます。おそらくその作者は車両や周辺のストラクチャーにコツコツと手を加え、線路際のガラクタや人形、留置してあるトロッコの位置を毎日のように変化させることで生きた鉄道に仕立て上げているのだと思います。機関士は窓から左手を出しているだけで実際には動いていないけれど、掌を精一杯振っているように見せている(見えている)ことで毎日飽きずに運転を続けることができるのでしょう。

 そのレイアウトを45 (Oスケールの逆数) するとほぼ我が家の敷地と同じくらいの大きさになるのですが、我が身に照らすと毎日見て運転して飽きることはありません。ただ線路の上を往復するだけでも充分心満たされるし、車両や線路の傷んだ所を修理するのも楽しいものです。買い物から帰ってきてトに雑貨を満載して母屋まで運ぶと、意図しなくても積み荷はその都度変わるわけで、こんな小さな路線でも鉄道本来の使命を果たしていると思えて嬉しくなります。

 自家用軌道をお持ちの“原物合わせは基本ですチャンネル”さんが最近自宅軌道を森林鉄道と称してYouTubeに投稿されました。

https://www.youtube.com/watch?v=ey3y53FyhJ0

庭の奥の植木を剪定した後、手動トロッコで枝葉を広い場所まで運び出す様子が撮影されています。曰く「大量輸送は鉄路の得意分野」「引きずって来るよりなんぼか楽しい」。そうです「自分ン家に鉄道があると便利だ」なんていうのは単なる方便で、わざわざトロッコに積み替えてわずかな距離を運んでも少しも楽ではありません。その代りそれはメチャクチャ楽しい、家に線路のある人にしか味わえない至上の喜びを感じることができます。“原物合わせ・・・”さんは「飲み終わりの酒瓶の運搬が主です」と自慢げにおっしゃいますが、キッチンから酒瓶をわざわざトロッコに積んで表まで運ぶ姿を羨ましいと思う人なんかいませんよね。しかしもし、わずかでも感じるものがあるようなら自家用鉄道のオーナーになる資格があると思います。

2023/11/20

TR27台車の製作 続編

油性ペイント乾燥中
  仮組みした台車はブルーシートを被せて線路の端に留置していたところ、吹き込んだ雨に晒されて鉄肌むき出しの部分はあちこち赤錆が発生していました。防錆目的を兼ねて全体を黒色塗装するため、一旦全部バラします。油性ペイントの場合は塗装前の脱脂が不要なのでひと手間省けますが、埃や金属粉(切断、穴あけ時の切粉)はきれいに除去しておく必要があり、特にネジ溝に残っていると固着して面倒なことになります。一方でペデスタルと軸受には塗料が付着しないようにしなければなりません。お天気の良い日を選び、刷毛で片面と側面、端面にペイントを塗って材木の上に並べて乾燥します。この塗料は数年前に買った後少し使って置いていたもので、やや賞味期限切れの感がありました。というのはなかなか表面がサラっと乾燥せず、2日ほど屋外に放置しても指先で触れると部分的に濡れている箇所が残っているような状況からも窺えました。季節が進んで朝夕には露が降りる日もあったことがそれを助長していたと思います。塗り残した裏面を塗装していると突然雨が降り始め、天候不順が続いたのでさらに屋内で10日ほど乾燥させました。先に仮組みをしていた1台はあまり手直しすることなく再び組み立てることができましたが、もう1台は切ったり削ったり穴あけなおしたりと随分手こずっています。

 この台車の組み立てを始めてから3ヶ月以上経過しているのにまだ完成を見ていません。TR27を自作しようという大胆な挑戦に対する計画が甘かったのが最大の要因ですが、その他にある原因の一つがカヌー格納庫の雨漏り対策に手を焼いていることです。色々な対策を打ちましたが、ひと雨降るごとにどこからともなく床に濡れが広がり、まだ悪戦苦闘が続いています。ガレージの屋根に上っての作業は危険を伴うので、これ以上の対処は中止して格納庫内の雨水飛散防止対策に変更するつもりです。これも気温が下がれば凍り付くので根本対策の実施は雪が融ける春まで文字通り凍結です。この他に線路の延長や駅、転轍機の改良もこのまま来春以降まで持ち越しになると思われます。


 もう一つ遅延に拍車をかける出来事がありました。言い訳のオンパレードですが聞いてください。少し前から加齢に伴ってトイレが近くなったことは書いていましたが、検査の結果前立腺ガンの疑いが高くなり通院や検査入院を繰り返していました。幸いなことにこの部位のガンは、治療をすれば5年生存率100%とも言われているので、これが原因で鹿部電鉄の存続が危うくなることはないと思っています。まぁこの歳になると何があってもおかしくありませんので、主治医の指示に従って出来るだけ長く趣味生活が満喫できるよう健康維持に気を配るつもりです。   

 そうこうしている間に裏の駒ケ岳はほぼ例年通りに冠雪し、紅葉を楽しむ間もなく急に冷え込んで氷点下の朝には里でも雪がチラつくようになりました。外の作業はそろそろおしまいで、残った冬支度を急がなければなりません。

 落ち葉の吹き飛ばし処理(翌日には元通り)   除雪車対策として車止めの撤去    

雪化粧の北海道駒ケ岳

2023/10/25

待避線(余談雑談) さらば昴よ

  過日、歌手の谷村新司さんが亡くなったとテレビで知りました。家内がアリスのファンで、私もテレビやカラオケで代表曲の「昴」を幾度も聞いたことがあります。ただその歌詞の意味を深く考えたことはありませんでした。受け売り的に説明すると昴はおうし座にある星団のことで、肉眼で6個の星が連なっているのが見えるそうです。古代中国では「財の星」と呼ばれ、「さらば昴よ」は物質的な豊かさに別れを告げて未知の世界に歩み出す情熱を歌ったものとのことです。

 私は仕事嫌いですが、エンジニアリングとか機械いじりは性に合っているというかそれしか能がないのが事実です。しかし企業の中でその地位や報酬額を同僚と競って勝ち上ることがどれだけ自分のためになるのか、いつも疑問に思っていました。とは言え家族を養い、世間体を繕うことも避けられない現実でした。そんな長い板挟みから解放されたのが定年退職でした。

 物質文明への積極的な決別と精神的豊かさを求める情熱の歌とは対照的に、定年は時の流れに乗って向こうから近づいてきました。この点で働き盛りに職を捨ててまで夢を追い求める人が命がけで行う決断とは次元が異なっています。さらに嘱託契約になって閑職に就いている間に退職後の生活設計をすることができたので、これまた実に恵まれた転機だったと言えます。ただここで選んだ夢が、幼い頃から望みながらずっと実現できなかった、自分が乗りこんで運転できる電車を庭に作ることでした。漠然と自分だけの鉄道建設を夢見ている間は楽しい時間が過ぎていきましたし、次から次へと作りたいものやアイデアが浮かんでくるものです。ところが憧れの地に移住して生活が落ち着くと、まず何から手を付けてよいものやら、何をどこで手に入れるのか、と自問する日が続きました。購入ルートが見つからなければ心配になり、複数あればどれを選ぶべきか悩みます。それまでは空想であったことが、現実にまとまったお金を支払わなければ先に進まないというプレッシャーがあり、その次には自分の力では簡単に持ち上げられないような重量物が目の前に送りつけられてきます。「こんなに買い込んでしまったけど本当に鉄道建設は出来るのだろうか?」と眠れぬ夜に何度も悩まされました。今ブログを読み返すとサラっと書いていますが、実のところそれは葛藤の日々であったりするのでした。

 昴の歌詞では

目を閉じて何も見えず 哀しくて目を開ければ

荒野に向かう道より 他に見えるものはなし

ああ砕け散る宿命の星たちよ

せめて密やかにこの身を照らせよ

とあります。「自分がどうすればよいのか、過去や未来に目を向けても、これから進もうとする険しい道しか見えない、だれか(星に願うしかない)私の行く先を照らして導いてくれ」とまさにその時の心情に重なります。

 歌は続きます

呼吸をすれば胸の中 凩は吠き続ける

されどわが胸は熱く 夢を追い続けるなり

ああ さんざめく 名も無き星たちよ

せめて鮮やかに その身を終われよ

「考えてみれば心に凩(こがらし)が吹いている、けれど私は情熱をもって夢を追い続ける、仲間の星たちよ、最期まで私と運命を同じくしよう」

 さらに

ああ いつの日か 誰かがこの道を

ああ いつの日か 誰かがこの道を

我は行く 蒼白き頬のままで

我は行く さらば昴よ

我は行く さらば昴よ

「いつか誰かが、私の辿ったこの道を歩くだろうか、私はなおも心の豊かさを求めて進む、さらば昴よ」

 最後の「誰かがこの道を」歩いてくれることを祈って私はブログを書き始めたわけです。と考えると転機を迎えたきっかけは全く恥ずかしい限りですが、先達わずかな15インチゲージの険しい道にあえて挑んだことに始まり、幾多の不安や困難を乗り越えてここまで辿り着けたのも、「わが胸は熱く夢を追い続ける」情熱があったればこそだと思います。谷村新司さんの訃報に接し、代表曲「昴」に思いを寄せました。

2023/09/27

TR27台車の製作 後編

  予定では7月中に台車が完成して8月から車体構体の製作にかかることになっていましたが、部品製作に想定外の時間を費やしてしまい9月も終わろうかと言うのにまだ先の見通しが立っていません。

ネジ穴とバカ穴がずれている
 全部品の加工が終わったら片側の台車の仮組みをして寸法や構造に問題がないか確かめます。正直言って組立はスイスイとは行きませんでした。帯鋼や形鋼を重ねてネジ組立する箇所で貫通する部材の穴径はネジ径より1mm大きめにしていますが、ここが干渉してネジがスパっと入らない、雌ネジまで届いても雄ネジとの軸心が食い違っているというようなことが多く発生しました。M8くらいなら穴径を2mm大きくすればいいのでしょうが、小径ネジの場合はヤスリで長穴に修正せざるをえません。もちろん穴があわない原因が他の部材の干渉や寸法誤差にあるなど、明らかな不良による場合はそちらの修正をまず行います。すべての部品が互換性をもって組立てられれば理想的なのですが、手作りの悲しさでどうしても個々に微妙な寸法誤差が発生して修正をしなければなりません。そこで部品に番号を振って組合せを固定することにしました。

 ネジ穴に次ぐ厄介な問題がもう一つありました。軸受ユニットは自動調心型といってベアリングが球面で保持され軸の方向に自由度が与えられるようになっています。ところがこれが傾いたまま固着して動きが非常に渋く、2個の重い車輪を嵌合させた軸を両軸受けに同時に通すことが大変難しくなっていました。潤滑油を流し、仮軸を差し込んでグリグリと擦り合わせを行い、やっと動くようになりました。

 そんな苦労をしながら片側の台車が塗装前の状態で仮完成しました。ウッドデッキで組み立てた台車を線路に降ろすのにまたひと苦労です。後で体重計を使って測定したところ、軸重がちょうど35kg1台で総重量70kgでした。厚生労働省の指針では成人の人力による運搬は概ね体重の40%とされているので、片方ずつエッチラオッチラ動かすとしても限界値を越えています。違反していてもだれも注意してくれませんから老人の腰は自分で守るしかありません。ドキドキしながら線路の上を押してみると上物の荷重がないこともあってとても軽く転がりました。そのまま急カーブ迄押して行くといい感じでカーブを曲がりましたが、やはり抵抗ゼロではありません。その結果は数値を計測してあらためて報告します。台車の上に乗って体を揺すると軸バネがユサユサと撓んでとても実感的です。と、見たようなことを言っていますが、乗っている自分では見えないので三脚にスマホを据えて自撮りしたのがこちらです。ギシギシ鳴って動きがイマイチ、どうやらペデスタルガイドの平行度が悪くフルストローク動いていないようですね。最終組立て時に調整することにします。

 それにしてもよくここまで作り上げたものだと自分を褒めてやりたい気分です。線路に最初の犬釘を打った時、トロッコが初めて転がった日、デ1が完成してお披露目した文化祭、直接制御器をガチャガチャ回して味わった運転手気分、電車が分岐器を無事通過した瞬間、これまで鹿部電鉄で何度感激を味わったことでしょう。どれをとってもそれまでになかった喜びと感動に心満たされたものでした。鹿部に来た当初にはとても想像していなかった夢の世界が広がっていきますが、この後まだキハ40000の本丸である車体と動力装置の製作が控えています。加齢に伴う健康不安を覚えてもそれを越えるような楽しみが享受できたらと思っています。
仮完成したTR27 いい眺めです

2023/09/20

待避線(余談雑談) キリ(ドリル)について

  キリというと木工で使う木の柄の先に尖った針がついたものを思い浮かべますが、金属加工ではいわゆるドリルのことをキリと呼びます。DIYでは磨り減るほど使わないので古くなると買い換えるのが普通ですが、本職は切れ味が悪くなると短くなるまで研いで使い続けます。何十年も前に新入社員の現場実習でキリの研ぎ方を教わりました。今でもそれを思い出しながら研ぐことがありますが、キリの両側かららせん状の切粉が連続して湧いてくるような見事なキリにはなりません。

鉄工用キリ
 さて金属用(鉄工用)ドリルの先端は木工用ドリルと違って尖っていません。写真を見ていただくとわかりますが、屋根の棟のような形になっていてこの部分はチゼルエッジと言って切削に直接関与しません。その両側の切れ刃が被削材を掬い取りながら進むのに乗じて無理やり食い込んでいくというイメージでしょうか。そのためいきなりキリを鉄の表面に押し付けると、先端が踊ったり走ったりということが起こり、正確な穴あけができません。ポンチを打ってしかるべき位置に凹みを作り、チゼルエッジがそこに落ち着くと穴の切削が始まります。ところがキリの径が大きいと必然的にチゼルエッジも長くなり、小さなポンチマークでは位置決めができなくなります。またキリが食い込んだとしても抵抗が大きく、加工が不安定になることがあります。そこでチゼルエッジを小さくするためにシンニングという技法(研ぎ方)が使われます。”Thin”=薄い・薄くする。というわけで切れ刃の裏側を削り込むわけです。
チゼルエッジとシンニング

 もう一つの回避術が下穴を開けておく方法です。細いキリにもチゼルエッジがない訳ではありませんが、ポンチで位置決めすれば事足ります。例えばφ2の下穴でφ10程度のキリのチゼルエッジを充分にカバーできるので、ほとんど位置ズレなく下穴と同心の穴加工をすることができます。

チゼルエッジの影響を回避する方法


2023/09/16

TR27台車の製作 前編

  台車を製作するにあたって材料や加工のための機材を購入して準備を進めてきたこと、戦前型気動車用の典型としての概要、急曲線通過の際の走行抵抗を低減する仕組み等について繰り返し書いてきました。いよいよ製作に着手したので具体的な加工、組立調整手順や作業上の工夫、気付いた点や感想について記述したいと思います。

花巻電鉄デハ3の板台枠台車 自身撮影
 この台車に限らず鉄道黎明期(昭和初期まで)には大型鋳鋼や溶接による成形は一般的ではなく、鋼板や型材、鍛鋳造部品をネジ・リベットで組み立てるのが主流でした。そもそもこれなら自分で作れると思ったのもそういう理由からでした。事実鉄工所に加工依頼したのは車輪の軸穴の仕上げとトラス部材の曲げだけで、その他に通販で購入したものがありましたが、部材の切断はチップソー、曲げは万力、穴あけは卓上ボール盤を使ってすべて自分で加工しました。作業は想像を大幅に超えて相当な時間を費やすことになりました。

TR27台車の各部名称
 さて構造部材の名称を図に示しています。正式な名称はわからないので私が勝手に名付けたものです。説明文中にこれらの名前が出て来た場合はこの図を参照ください。なお図中のボルスターは山形鋼(L形鋼)の端面のみ示してありますが、左右の台車枠を繋いでいる部材で日本語では枕梁と呼ばれます。まずは台車単体の完成を目指し、ボルスターに取り付けられる心皿や車体との結合部分の製作は別の投稿で解説します。と言うのは独立回転車輪の急曲線走行抵抗低減効果を早く確認したいためです。

 加工が終わった部品から組立を始めるのではなく、とりあえず全部の部品加工を完了させてから一気に組立てることにしました。そのために各部の寸法や仕上がりが問題ないことは仮組みをすることで確認し、必要に応じて修正しておきます。

  無蓋車の下回りは購入品の軸受けと外注加工の車輪をネジで組立てただけでした。デ1の時は2軸台車枠が外注溶接加工で、バネの部分が少し複雑になっておりチョッと苦労はしましたが、数日で組み上がりました。それに対して今回の台車製作については部品を素材から加工するという作業が延々と続きました。ボギー車なので4軸、8輪、部材によっては16個または24個の同一形状品を正確に製作する必要があり、治具や型板を使って能率の向上と均質化を図りました。機械力も同様の効果を発揮しており、投資効果は大きかったと納得しています。

ボール紙のマスターで切断線折り曲げ線をケガく       切断する          
 折り曲げる              ステム24個完成 

 切断箇所や穴中心位置は素材にケガキ針で線を描き入れるのが一般的ですが、素人の仕事ではどうしても誤差が大きくなってしまいがちです。そこで鋼材の表面にクリアまたはグレーのラッカーを吹きつけた上に油性の極細サインペンでケガキ線を描くことにしました。複数個の同一形状部品のケガキにはボール紙のマスターを使用しました。穴あけ治具は正確なケガキをした上で穴位置にφ2のキリ穴をあけ、基準となる縁を合わせてからその治具をガイドにφ2の下穴をあけて行きます。全部の下穴が開いてから所定の径のキリを通し、さらにねじ切りをすることで位置のバラツキのない部品が製作できました。下穴を開けてから大径のキリを通すとキリ先端が躍らず、切刃先も長持ちするようでサクサクと作業を進めることができます。

穴あけ治具(左)と穴加工済のフレーム   穴あけ治具を使って下穴加工中のステム  

加工が終わった組立前の全部品(ネジ類を除く片側の台車1台分)

2023/08/22

お盆休み

  暫く投稿が滞っている理由は例年と同じで、8月は孫が2週間近くやって来てお付き合いに忙しくなるためです。ご近所の爺さん婆さんを訪ねてくるお孫さんが電車に乗りたいと言えば知らん顔はできません。普段通りにサークル活動があり、花火大会やカッター競漕等のイベントもあってゆっくり休む暇はありません。やりかけたTR27台車の製作は寸暇を惜しんでコツコツと進めているものの、成果を発表するほどの形を成しているわけではありません。

 老体に鞭打って夏を乗り越える努力をしているわけですが、体力の消耗のみならずこの時期の電車運転は神経がすり減る思いがします。これぞ15インチゲージの宿命かとつくづく感じたので報告しておきます。

 普段は電車に乗り込むと運転手になりきって「前方よし!」とノッチを進めます(信号がないので「出発進行!」とは言いません)S字カーブでわざと身体を少し揺すりながらフルノッチで走り抜け、微妙なブレーキ操作で車止めギリギリに停めます。続いて固い身体を捩り、後方に障害物がないことを確認してバック運転です。分岐器を少し過ぎて転轍機を切替え、新線の急カーブでのモーターの唸りを楽しみます。カーブのバック運転では首が回らないのでほとんど後方確認はできませんが、ひと気はないので強引に走ります。

 下の孫も3歳になり、子供二人が一緒にいる間はまだいいのですが、親の目を離れて別々になると電車の運転は気が抜けません。無蓋車に座っていても身を乗り出したり、まだ動いているのに飛び降りたり、線路際を走ったり。これにご近所のお子さんまで加わるともうカオス状態になります。実物のように車両限界と建築限界の間に安全距離が取られていればまだいいのでしょうが、どちらもエエ加減なのが現実です。線路際のバラの枝の棘は車両にバリバリ当たります。少しでも車体から手や顔を出すと車庫の柱やウッドデッキの手すりに激突しかねません。もし電車の扉から頭を出してそこを通過するとギロチンになってしまいます。子供はいくら注意しても目が離せません。

 一人で運転を楽しんでいる時には考えが及ばなかったリスクがあることに気付きました。私自身が楽しめるように作った庭園鉄道ですが、他の人から見れば遊園地のミニ列車、つまり乗客の安全が担保された乗り物として映っているのだと想像します。さらに大勢で乗った方が楽しいし、所有者も喜ぶと思われていることでしょう。感染症収束に伴って来訪者が増えたことで今まで気づかなかった問題が新たに浮き彫りになりました。

2023/08/06

待避線(余談雑談) レイアウト

  がんこ爺さんの昔話です。クリスマスプレゼントで電気機関車のおもちゃをゲットして以後、ゼンマイ仕掛けの汽車に続いてOゲージのEB電機と貨車のセットを買ってもらいました。当時の子供としてはずいぶん早くに鉄道模型を所有していたことになります。「子供の科学」「模型とラジオ」「模型と工作」等の雑誌を読んで、よりリアルなHOゲージに憧れ、6年生の時に叔父にR450の円形線路とDT22台車2個を買ってもらって転向を果たしました。その後事あるごとにフレキシブルレールや4番ポイントを買い足してベニヤ板に貼り付けたレイアウトを完成させ、自作した神戸電鉄デ310とともに中学校の文化祭に出品しました。

 レイアウトと言っても線路と駅ホームだけ、いわゆるシーナリーは何もありませんが、これまた自作のパワーパックをつなげば電車は自由に走るので、運転マニアの少年は神戸電鉄の始発駅である湊川から終着の粟生までダイヤ通りの運転に没頭しました。傍から見ればベニヤ板の上ですが、運転手は勾配や踏切に注意しながら次々と現れるトンネルや鉄橋を越えて時刻表通りに次の駅のホームの定位置に停車させる妄想に没頭しているのでした。これぞ私のレイアウトのイメージです。本屋で立ち読みした「鉄道模型趣味」のグラビアページには国内外の大小様々なシーナリー付きのレイアウトの写真が載っていました。憧れて植樹のまね事をしても根気が続かず、住宅模型(プレハブ小屋)を置いた程度でやめてしまいました。私の心の中では、線路と車両は一体で鉄道であるけれど軌道敷以外の植栽や情景は模型化の対象外であるような気がしました。それは今線路と電車は実物のスケールに拘っていても、脇にあるアンバランスな草花がちっとも気にならないことからして、やっぱり昔から変わっていないと思います。

原鉄道模型博物館
 近年博物館のレイアウトなどはジオラマと呼ばれることが多くなってきて、むしろそちらが主流のように思われることがあります。でも私は「それは鉄道模型用語やないやろ」と言い切ります。ネットのサイトでは「レイアウトとジオラマの違い」について尤もらしい解説がされていたりしますが、的確とは言い難いようです。

1/120スケール(ゲージ9mm)で建設中の
スイス登山鉄道レイアウト   自身製作
       







 爺さんの定義では、鉄道模型を走らせる線路はどんな形であれすべてレイアウトです。その中に線路を移動したり収納したりできる「お座敷レイアウト」と固定式レイアウトがあります。固定式の中にはシーナリーが付いているものがあり、むしろそれに拘って車両が脇役になってしまうシーナリーセクションとかモジュールレイアウトがあります。そういうタイプのレイアウトをジオラマと呼ぶこともあるようですが、元々鉄道模型由来の言葉ではなくプラモデルやミリタリーの匂いが漂っていて好きではありません。

2023/08/01

チップソー購入

購入した鋼材は即日防錆処理
 カヌー格納庫の雨漏りはまだ完全に止まってはいませんが、ブルーシート併用で屋根下への資材保管が可能となったので、鋼材や通販で購入した部品、軸穴加工した車輪などはそちらに移しました。鋼材の定尺は種類によって4m5.5m6mとまちまちで、購入してから格納庫に収まるように切断するつもりでいましたが、発注先から「配送は函館市内限定で、鹿部へは配送できない。」と言われました。長尺材の運搬を仕立便に委ねると運賃は非現実的な金額になるため、半分の長さに切断したものをご近所さんの軽トラックで引き取りに行き、その日のうちに脱脂とクリアラッカーの吹き付けをして保管しました。

 これらの資材を使用してTR27台車を製作するにあたり新たにチップソー切断機を購入しました。DIY用で価格が手ごろであり、当面の作業に必要な寸法の鋼材が切断できる物を選びました。作りが華奢で精度もあまり期待できませんが、手挽きの金鋸作業に比べると労力や切断面の平面度などでは格段の能率向上と仕上がりを楽しみにしていました。

チップソー(φ190)に軸受をセットした全景       刃先の様子         
 まずは試しに平鋼の切断をしたところ、直角度が悪いうえにハンドルにガタつきがあり「銭をドブに捨てた」のかと絶望しましたが、取扱説明書を読むと調整や固定方法が書いてあり、何回か試している内に重宝な機械だと思えるようになりました。

上部をカットした軸受
 前回の投稿で軸受ユニットをカットすることにしていると書いた通り、次にこのチップソーで端っこをカットしてみることにしました。ご覧の通り軸受ユニットは鋳物製であるのでつかみどころがなく付属の押さえ金具は役に立ちません。スペーサーを敷いたうえにシャコ万力で当て金に締め付けて固定し、刃物を押し込みました。平鋼に比べて鋳鉄は加工しやすいので火花も飛び散らず意外と簡単に試し切りができました。引き続いて8個の軸受ユニットを所定の寸法にカットし、台車製作の最大の難題の一つが片付きました。

2023/07/27

TR27/28

  キハ40000の兄貴分であるキハ41000の台車はTR26(固定軸距1800mm)で、その軸距を1600mmに短縮したのがTR27(動力側)TR28(付随側)です。軸距2000mmのキハ42000TR29は揺れ枕機構が強化されているものの、外観は類似形状になっています。いずれも帯鋼をトラス状に組み立てた簡易軽量構造ながら乗心地がよく、信頼性が高かったようで戦後製の私鉄気動車にも採用されていました。詳しく観察すると溶接されている箇所は見当たらず、ボルト・ナットとリベットで組み立てられているようで、見れば見るほど製作欲がかき立てられます。

TR27/28総組立図

同上軸受部

同上ボルスター部

上部をカットし軸バネを装着
 大宮の鉄道博物館に保存されているキハ41000の床下にメジャーやノギスを当てて寸法を実測し、JIS規格から塗料の厚さを除外した鋼材の厚さや幅を推定して1/3に縮尺した台車の構造図を作成しました。完全なスケールダウンではなく、印象重視で材料入手の容易さ等を考慮したのはデ1のブリル台車と同じです。軸受は鋳物製のハウジング内に球面保持でユニット化されたテークアップ型と呼ばれる市販品で、両側を上下方向に自由度があるスライドガイドで挟んだペデスタル式になっています。上部をカットし、台車枠と軸受ユニットの間にはバネ座を介して圧縮コイルばねを装着します。運転台側の台車に組み込むバネは運転手の体重を支える分硬くしてあります。

 台車枠の構造材は厚さ6mm、幅32mmの帯鋼で、実物に倣ってすべてボルト・ナットで組み立てます。切断および穴あけ、ねじ切り加工は自分で行いますが、厚さが6mmともなると人力での曲げができないので、トラス構造部材のみおなじみの柴田工作所に加工依頼しました。

 車輪はデ1と同じく永瀬工場製チルド車輪を柴田工作所から手配して機械加工してもらいました。デ1の車輪径がφ230であったのに対して今回はφ250にしました。径だけでなくタイヤ幅やフランジ高さがより実物に近く、床下で目立ちにくいとはいえ完成時の見た目に期待がふくらみます。ただ旧型気動車特有のスポーク車輪でもプレート車輪でもなく少し残念ですが仕方ありません。この車両はそもそも急曲線通過時の両輪の差動滑りによる走行抵抗低減が期待される左右独立回転車輪付きの試験車です(2022119日投稿「妄想トレイン後編」参照)。ただし当初計画では車軸と車輪の間に玉軸受けを組み込むことにしていましたが、これらの相対速度が非常に低いことから樹脂製のカラーを利用した滑り軸受に設計変更しました。部品コストや加工・組立の容易さ、耐久性を考え合わせても賢明な方法だと考えています。滑り軸受を入れた車輪の反対側はキーを入れて車軸と固定してあります。現時点では駆動方法は未定です。走行抵抗の実験をしたうえで駆動軸数(車輪数)と併せて検討するつもりです。

奥がキー溝付き駆動車輪、手前は滑り軸受付き従動車輪
右側4個は油性ペイントによって塗装済み、左側未塗装

車輪との嵌め合い部がある車軸は塗装せず防錆油塗布のみ

 今回の投稿では台車設計の図面と概要説明のみにとどめ、加工・組立が進展したら写真や試運転の様子をお伝えします。

仮組みした車輪

2023/07/17

鉄製品の防錆処理

屋内で約9年間保管されていたスパイキ
大部分は黒錆のねずみ色を呈しているが
加工された先端部は赤錆が広がっている

 レール、車輪、台車等15インチゲージでは鉄製の部品や組立品を多数使用しており、特にレールは塗装もされずに屋外で雨ざらしです。茶色の錆に覆われた質感や趣が何とも言えない雰囲気を醸し出していると言えばその通りですが、よく見ると表面の腐食が進行して凹凸が激しくなっていることが多くあります。レールも含めて鋼材を購入した時点では、その表面の大部分はねずみ色を呈しています。黒錆と呼ばれる四三酸化鉄(Fe3O4)は緻密で安定した性質を持ち、高温下の圧延工程で表面に被膜として生成され、内部を保護する効果により防錆剤として機能します。それでも長期間湿潤に晒されると被膜のない部分からいわゆる赤錆(Fe2O3)が広がってしまいます。この辺りの事情は202112月投稿の「レールの保管について」で詳しく書いています。その対策として、鋼材を購入したらできるだけ早くクリアまたは黒色ラッカーを吹いておく、雨のかからない場所で保管する、等の対策が必要と判断しました。カヌー格納庫の雨漏り対策が難航しているために長尺鋼材の購入予定が遅れているのもそれが理由です

 レールに先行して手配していたペーシ・モール(継ぎ目板)が届いたので防錆対策を施しました。今回30(ペーシ2枚モール4本を一組として)購入しましたが、これは次のレール発注予定が5.5m×20(55m)なので、分岐や短線の分を見越したためです。一組の単価は為替レートやエネルギ・材料価格高騰の波を受けて9年前の¥550(税抜き)から¥750に大幅値上がりしていました(40%増し)。それでも自作の手間を考えると市販品はプレスで長穴加工されており量産効果でリーズナブルだと思います。

 宅配便の箱を開けると仮組状態だったので一旦全部バラしました。ペーシ(プレート)は脱脂スプレー(パーツクリーナー)とウェスで一枚ずつ表面の油分をぬぐい取り、60枚をブルーシートの上に並べて裏面や端面もクリアラッカーを吹きます。仕上げ塗装ではないので塗り残しやダレを気にする必要もありません。モール(ボルト・ナット)は塗膜が付くと回りが悪くなるので、食品冷凍用のジッパー付袋に入れて防錆油漬けにしておきます。

  開梱               クリア塗装
  塗装済の状態           油漬けしたモール

 これらは長尺ではないのでカヌー格納庫の雨漏りが直るまでガレージで保管することにしました。この後TR27菱枠型台車用の帯鋼や山形鋼、丸鋼などを手配するので同様の作業をしなければなりませんが、それぞれの使用目的に応じて塗装、防錆油漬けを使い分けます。長尺重量物は取り扱いに危険を伴うので注意が必要です。

2023/07/15

Google map street view

  鹿部のような田舎でも一応は住宅地であり訪問者がストリートビューを頼りにすることもあるようです。私が鹿部に移住して来てすぐ(20147)に最初の撮影がされたようでした。都会だと数年おき位に更新されると書いてありましたが、9年目にして最新画像に切り替わりました。この間ご近所に越してきた人は何人もいますが、新築や増改築などほとんどなく、住宅の色合いや佇まい、住宅と空地の並び方というか道路沿いから見る街並みに9年前との差はありませんでした。そんな状況でも我が家では道路に向かって線路が敷かれて電車や貨車が庭に鎮座しており、劇的な変化が起こっていたのでした。初めてこの通りを歩く人は大概立ち止まって電車を眺めて行きます。特に鉄道に興味を持っている人でなくても、私が庭にいる時は暫し立ち話の話題には事欠きません。これが最新(2023年4月)ビューです。


こちら2014年7月です。


 さぁストリートビューで我が家の姿を見る人が幾人位いるのかわかりませんが、もし鉄っちゃんがこれを見たらきっと驚くと思います。以前にストリートビューで世界中の鉄道旅行が出来ると書いたことがありましたが、そんな鉄旅人もまさか鹿部でレトロ電車が見られるとは想像していないでしょう。見知らぬ国の鉄っちゃんとの立ち話は楽しみです。