2023/09/20

待避線(余談雑談) キリ(ドリル)について

  キリというと木工で使う木の柄の先に尖った針がついたものを思い浮かべますが、金属加工ではいわゆるドリルのことをキリと呼びます。DIYでは磨り減るほど使わないので古くなると買い換えるのが普通ですが、本職は切れ味が悪くなると短くなるまで研いで使い続けます。何十年も前に新入社員の現場実習でキリの研ぎ方を教わりました。今でもそれを思い出しながら研ぐことがありますが、キリの両側かららせん状の切粉が連続して湧いてくるような見事なキリにはなりません。

鉄工用キリ
 さて金属用(鉄工用)ドリルの先端は木工用ドリルと違って尖っていません。写真を見ていただくとわかりますが、屋根の棟のような形になっていてこの部分はチゼルエッジと言って切削に直接関与しません。その両側の切れ刃が被削材を掬い取りながら進むのに乗じて無理やり食い込んでいくというイメージでしょうか。そのためいきなりキリを鉄の表面に押し付けると、先端が踊ったり走ったりということが起こり、正確な穴あけができません。ポンチを打ってしかるべき位置に凹みを作り、チゼルエッジがそこに落ち着くと穴の切削が始まります。ところがキリの径が大きいと必然的にチゼルエッジも長くなり、小さなポンチマークでは位置決めができなくなります。またキリが食い込んだとしても抵抗が大きく、加工が不安定になることがあります。そこでチゼルエッジを小さくするためにシンニングという技法(研ぎ方)が使われます。”Thin”=薄い・薄くする。というわけで切れ刃の裏側を削り込むわけです。
チゼルエッジとシンニング

 もう一つの回避術が下穴を開けておく方法です。細いキリにもチゼルエッジがない訳ではありませんが、ポンチで位置決めすれば事足ります。例えばφ2の下穴でφ10程度のキリのチゼルエッジを充分にカバーできるので、ほとんど位置ズレなく下穴と同心の穴加工をすることができます。

チゼルエッジの影響を回避する方法


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