2022/07/12

もう一つの15インチゲージ

庫内線路敷設中

 庭の鹿部電鉄の作業はしばらく止まったままになっています。カヌーシーズンを迎えて格納庫の整備をしているためです。昨年までは雨ざらしのウッドデッキにカヌーを置き、必要な時に無蓋車に載せて道路脇の終点まで押して行き、クルマのルーフキャリアに積み替えていました。昨秋雪が降り始めた頃に格納庫の柱と屋根が完成し、愛艇は雪に埋まることなく冬を越すことができました。まだ壁も床もなく、地面は日当たりが良いのでイタドリが生えてきてチョッとみすぼらしい状況です。

 格納庫はガレージの側壁に隣接して建設したので車とカヌーは平行に置かれるようになっています。それぞれが前進すれば簡単にルーフキャリアに載せ替えられるので、その仕掛けを作っているわけです。格納庫にレールを敷き、台車に載せたカヌーを引き出せば車に横付けという寸法です。計画当初は鹿部電鉄と同じ6kgレールにし、当然ゲージは15インチ、格納庫の裏へ延長してエンドレスに繋げようと企んでいました。格納庫に電車が出入りすることも可能になり、なかなか面白そうな運転が楽しめそうだとウキウキでした。エンドレスからの分岐は頻繁に使うこともないし、レールの斜め切りはもうたくさんという事情もあって、簡易な横取り装置を設けてはどうか、とまたまた妄想の日々を過ごしていました(「横取り装置」についてはネット上に詳しい記事がありますので検索してください)

カヌーを載せた台車とレール拡大写真
車輪横の黒い金具が逸脱防止装置です
 ところがカヌーの重量はたった18kgで、大層なレールを敷くために狭い小屋の中で盛土や砂利撒きをすることを想像するともっと簡便な手段があるだろうと思うようになってきました。ホームセンターで使えそうな物を探した結果、引き戸用のレールと戸車が手頃な価格であるのを見つけ、気が変わらないうちに買って帰りました。片側の戸車は溝付き、もう一方は平車です。両方溝車にするとゲージ管理をする自信が持てませんので、ケーブルカーと同じ構造にしました。この場合何をもってゲージと称するのかよくわかりませんが、戸車の中心線間隔を15インチ(=381mm)にしました。

 1.51.8m間隔の支柱に2本の角材を渡して、一方の中央に半円を引き延ばしたような断面の甲丸レールを打ち付けただけの線路です。余計な力が加わらない限り滑らかに動きますが、サスペンションのない4点支持なので溝車の一個が浮き上がると脱線する可能性があります。仮に脱線しても台車が角材から脱落したり転覆したりすることがないように、台車に逸脱防止装置を取り付けました。新幹線の地震対策と同じです。

この状態でルーフキャリアに移載します

 とりあえずカヌー格納庫の線路が完成したら、壁や床、扉の取り付け作業はその後にして、鹿部電鉄の建設作業に戻ります。5.5mのレールが2本あるので曲げと敷設を行い、引き続きレールを仕入れて線路延伸を行うか、急曲線通過特性を改善したボギー車のキハ増備に力を注ぐか、一人だけの重役会議に建議します。

 余談ですが、格納庫の床は雨水浸入対策をしたうえでレールの保管場所にする予定です。

2022/07/04

待避線(余談雑談) 鉄博で見たダブルルーフの構造

  デ1の屋根製作について2021415日に投稿した記事の中で、「その時ダブルルーフが外部の明かりや空気を車内に取り入れるために巧みに工夫された構造になっていることを知りました。」と書いています。16番模型でダブルルーフ車両を作る時は、2段に加工された市販の屋根板の前後をヤスリとサンドペーパーで削るだけなのでその詳しい構造を知る由もありません。大沼電鉄が開業した昭和初期にはすでにダブルルーフの時代は終焉を迎えていたようで、戦後生まれの私は当然そんな車両の天井を間近で見たことなんてありませんでした。ダブルルーフと称される車両に乗ったことはありますが、キャンバスで屋根全体が覆われてしまってその構造がどうなっているかという疑問さえ抱きませんでした。その古典客車は別府鉄道ハフ7で、現在古巣の相模鉄道(元神中鉄道)かしわ台車両センターで復元保存されているそうです。写真を拡大観察する限りは明り取り窓が復元されているように見えますが、その構造まで忠実に再現されているかは不明です。

 別府鉄道ハフ7 1970年頃 自身撮影       古巣に保存中の元ハフ7 Wikipediaより

蒲原鉄道モハ1の内側窓 上部の金具を引くと開く
鉄道博物館「大正時代の3等客車」カットモデル
 その後、1923年製の蒲原鉄道のモハ1の保存車を見学する機会があったのでじっくりと観察しました。この車両のダブルルーフはほぼ原形と思われる構造を保っており、車内から窓の開閉をすることも可能で、きわめて良好な状態で復元保存されていました。また大沼電鉄デ1の製造元である日本車両の図面集を入手することができ、他の車両を含めて寸法的な推測が可能になりました。過日大宮の鉄道博物館を訪ねた際に、「大正時代の3等客車」という実物のカットモデルが展示してあるのを見て、目の当たりにダブルルーフの構造を知ることができました。これらの観察結果からダブルルーフは単に屋根が2段になっているだけではなく、横長窓が内外2重になっていてそれに挟まれた空間がダクト状の構造になっていることをはっきりと再確認することができました。つまり外側にはベンチレーターが設けられてダクト部に外気が導入され、内側の窓は煽り戸状で車内から開閉できるようになっています。必要に応じて換気が可能ですが、この構造のおかげで横風を受けても雨水が車内に侵入することがないように工夫されているわけです。鹿部電鉄のデ1は外観だけを真似て製作されているので、この部分の窓は2重にはなっておらず、ベンチレーターも構造の検討をしているうちに車体が完成して未装着のままになっています。今後、追々製作するつもりではいますが。

デ1の車内

 私には16番模型製作の習性が残っていて1/3スケールの車両でも車内の作り込みには手をこまねいています。これまで模型の車両内部は塗装すらしたことがなく、椅子や吊革に凝る人の作品を見ては「覗き込まなければわからないのに」と思っていました。乗り込める大型車両の場合はそうも言っていられない事情があって、無塗装どころか木質の退化退色や外板の塗料が窓枠から回り込んで垂れている状況に後ろめたさを感じているのが実情です。ダブルルーフには採光に加えて通風機能があることを得意げに説明しておきながら、窓が一重でしかもガラス(アクリル)を固定する木ネジがむき出しのままであることも手抜き丸出しで、もし待避線でもあったら隠れてしまいたいくらいに恥ずかしく思っています。