2023/07/27

TR27/28

  キハ40000の兄貴分であるキハ41000の台車はTR26(固定軸距1800mm)で、その軸距を1600mmに短縮したのがTR27(動力側)TR28(付随側)です。軸距2000mmのキハ42000TR29は揺れ枕機構が強化されているものの、外観は類似形状になっています。いずれも帯鋼をトラス状に組み立てた簡易軽量構造ながら乗心地がよく、信頼性が高かったようで戦後製の私鉄気動車にも採用されていました。詳しく観察すると溶接されている箇所は見当たらず、ボルト・ナットとリベットで組み立てられているようで、見れば見るほど製作欲がかき立てられます。

TR27/28総組立図

同上軸受部

同上ボルスター部

上部をカットし軸バネを装着
 大宮の鉄道博物館に保存されているキハ41000の床下にメジャーやノギスを当てて寸法を実測し、JIS規格から塗料の厚さを除外した鋼材の厚さや幅を推定して1/3に縮尺した台車の構造図を作成しました。完全なスケールダウンではなく、印象重視で材料入手の容易さ等を考慮したのはデ1のブリル台車と同じです。軸受は鋳物製のハウジング内に球面保持でユニット化されたテークアップ型と呼ばれる市販品で、両側を上下方向に自由度があるスライドガイドで挟んだペデスタル式になっています。上部をカットし、台車枠と軸受ユニットの間にはバネ座を介して圧縮コイルばねを装着します。運転台側の台車に組み込むバネは運転手の体重を支える分硬くしてあります。

 台車枠の構造材は厚さ6mm、幅32mmの帯鋼で、実物に倣ってすべてボルト・ナットで組み立てます。切断および穴あけ、ねじ切り加工は自分で行いますが、厚さが6mmともなると人力での曲げができないので、トラス構造部材のみおなじみの柴田工作所に加工依頼しました。

 車輪はデ1と同じく永瀬工場製チルド車輪を柴田工作所から手配して機械加工してもらいました。デ1の車輪径がφ230であったのに対して今回はφ250にしました。径だけでなくタイヤ幅やフランジ高さがより実物に近く、床下で目立ちにくいとはいえ完成時の見た目に期待がふくらみます。ただ旧型気動車特有のスポーク車輪でもプレート車輪でもなく少し残念ですが仕方ありません。この車両はそもそも急曲線通過時の両輪の差動滑りによる走行抵抗低減が期待される左右独立回転車輪付きの試験車です(2022119日投稿「妄想トレイン後編」参照)。ただし当初計画では車軸と車輪の間に玉軸受けを組み込むことにしていましたが、これらの相対速度が非常に低いことから樹脂製のカラーを利用した滑り軸受に設計変更しました。部品コストや加工・組立の容易さ、耐久性を考え合わせても賢明な方法だと考えています。滑り軸受を入れた車輪の反対側はキーを入れて車軸と固定してあります。現時点では駆動方法は未定です。走行抵抗の実験をしたうえで駆動軸数(車輪数)と併せて検討するつもりです。

奥がキー溝付き駆動車輪、手前は滑り軸受付き従動車輪
右側4個は油性ペイントによって塗装済み、左側未塗装

車輪との嵌め合い部がある車軸は塗装せず防錆油塗布のみ

 今回の投稿では台車設計の図面と概要説明のみにとどめ、加工・組立が進展したら写真や試運転の様子をお伝えします。

仮組みした車輪

2023/07/17

鉄製品の防錆処理

屋内で約9年間保管されていたスパイキ
大部分は黒錆のねずみ色を呈しているが
加工された先端部は赤錆が広がっている

 レール、車輪、台車等15インチゲージでは鉄製の部品や組立品を多数使用しており、特にレールは塗装もされずに屋外で雨ざらしです。茶色の錆に覆われた質感や趣が何とも言えない雰囲気を醸し出していると言えばその通りですが、よく見ると表面の腐食が進行して凹凸が激しくなっていることが多くあります。レールも含めて鋼材を購入した時点では、その表面の大部分はねずみ色を呈しています。黒錆と呼ばれる四三酸化鉄(Fe3O4)は緻密で安定した性質を持ち、高温下の圧延工程で表面に被膜として生成され、内部を保護する効果により防錆剤として機能します。それでも長期間湿潤に晒されると被膜のない部分からいわゆる赤錆(Fe2O3)が広がってしまいます。この辺りの事情は202112月投稿の「レールの保管について」で詳しく書いています。その対策として、鋼材を購入したらできるだけ早くクリアまたは黒色ラッカーを吹いておく、雨のかからない場所で保管する、等の対策が必要と判断しました。カヌー格納庫の雨漏り対策が難航しているために長尺鋼材の購入予定が遅れているのもそれが理由です

 レールに先行して手配していたペーシ・モール(継ぎ目板)が届いたので防錆対策を施しました。今回30(ペーシ2枚モール4本を一組として)購入しましたが、これは次のレール発注予定が5.5m×20(55m)なので、分岐や短線の分を見越したためです。一組の単価は為替レートやエネルギ・材料価格高騰の波を受けて9年前の¥550(税抜き)から¥750に大幅値上がりしていました(40%増し)。それでも自作の手間を考えると市販品はプレスで長穴加工されており量産効果でリーズナブルだと思います。

 宅配便の箱を開けると仮組状態だったので一旦全部バラしました。ペーシ(プレート)は脱脂スプレー(パーツクリーナー)とウェスで一枚ずつ表面の油分をぬぐい取り、60枚をブルーシートの上に並べて裏面や端面もクリアラッカーを吹きます。仕上げ塗装ではないので塗り残しやダレを気にする必要もありません。モール(ボルト・ナット)は塗膜が付くと回りが悪くなるので、食品冷凍用のジッパー付袋に入れて防錆油漬けにしておきます。

  開梱               クリア塗装
  塗装済の状態           油漬けしたモール

 これらは長尺ではないのでカヌー格納庫の雨漏りが直るまでガレージで保管することにしました。この後TR27菱枠型台車用の帯鋼や山形鋼、丸鋼などを手配するので同様の作業をしなければなりませんが、それぞれの使用目的に応じて塗装、防錆油漬けを使い分けます。長尺重量物は取り扱いに危険を伴うので注意が必要です。

2023/07/15

Google map street view

  鹿部のような田舎でも一応は住宅地であり訪問者がストリートビューを頼りにすることもあるようです。私が鹿部に移住して来てすぐ(20147)に最初の撮影がされたようでした。都会だと数年おき位に更新されると書いてありましたが、9年目にして最新画像に切り替わりました。この間ご近所に越してきた人は何人もいますが、新築や増改築などほとんどなく、住宅の色合いや佇まい、住宅と空地の並び方というか道路沿いから見る街並みに9年前との差はありませんでした。そんな状況でも我が家では道路に向かって線路が敷かれて電車や貨車が庭に鎮座しており、劇的な変化が起こっていたのでした。初めてこの通りを歩く人は大概立ち止まって電車を眺めて行きます。特に鉄道に興味を持っている人でなくても、私が庭にいる時は暫し立ち話の話題には事欠きません。これが最新(2023年4月)ビューです。


こちら2014年7月です。


 さぁストリートビューで我が家の姿を見る人が幾人位いるのかわかりませんが、もし鉄っちゃんがこれを見たらきっと驚くと思います。以前にストリートビューで世界中の鉄道旅行が出来ると書いたことがありましたが、そんな鉄旅人もまさか鹿部でレトロ電車が見られるとは想像していないでしょう。見知らぬ国の鉄っちゃんとの立ち話は楽しみです。

2023/07/08

物価高騰の影響

  エネルギコストの上昇に加えて円安の影響もあり生活物資の値上がりが続いています。買い物に行く度に色々な商品の値札が度々書き換わっていてジワジワと物価高騰を感じます。ここのところ増備車両の部品手配をしていて、何年かぶりに軸受などの工業製品や機械加工部品の見積りを取るとずいぶん高くなっていることに気付かされます。数年間かかって上昇したのではなく、この数ヶ月の間に一気に値上げが進んだのではないかと思います。通販部品等はカタログに印刷しているのでそう頻繁に価格改定ができず、コストが我慢の限界を超えた時に大幅値上げに踏み切るのでしょうか。

 カヌー格納庫の雨漏り対策が進まず材料手配が遅れていたものの、軸受けやバネ等はどこにでも保管できるのであまり先延ばしにならないように通販サイトの注文ページを開きました。部品表と突き合わせながら「価格を確認する」ボタンを押したところ事前に控えていた価格と食い違っていることがわかり、サイトのお知らせページを見るとなんと僅か4日前に「一部の価格改定をしました」と書いてあるではありませんか。一部の価格改定ではなく、少なくとも発注予定していた部品のうち価格改定されていなかったのは1点だけで残り全部が10%から40%程度値上がりしていました。たった4日違いのことですが、合計6万円ほどの買い物が一気に7万円越えになってしまい、もう少し早く注文していればと悔やんでも悔やみきれません。

 この他に見積もりを取った車輪の機械加工やレールの継ぎ目板、台車の材料の鋼材などが平均でやはり30%から40%程度アップしています。材料の種類によっては2倍近くに迫っているものもあるとのこと。過日届いた年金の支給額通知を見ると、物価にスライドしているとの謳い文句で確かに減ってはいないけどたった2%増でした。「年金は車輪や台車を買うために支給しているわけではない」と言われそうですが、思わずトホホと嘆いてしまいました。こんなことではコツコツと貯めたヘソクリが底を尽くのも時間の問題かもしれません。

夏の鹿部電鉄

2023/07/04

待避線(余談雑談) 七夕

 この時期になると子供のころの思い出がよみがえります。七夕の短冊に願い事を書いて吊るしました。なぜそうすると願いが叶うのかと理屈っぽい老人は考えますが、子供は素直に欲しいものの絵を描いて添えていました。1955(昭和30)頃、国私鉄に続々と全金属製車体の新型車が登場して目を輝かせていた少年も、当然のようにその短冊を吊るしたのでした。

 ナハ10は従来にない斬新なデザインの客車で、大きな窓の四隅にはRが付いてアルミサッシが光っていました。本屋で見た雑誌に載っていたのかそういう客車があることは薄々知ってはいましたが、駅で停車中の列車に(ブドウ色の) ナハ10が連結されているのを初めて見た時は、この世のものとは思えぬ驚きを覚えました。当時はOゲージのEB50とブリキ製貨車を持っていたので、電機と貨車の間にあのナハ10を連結して遊びたいと思ったものでした。ナハ10とは言ってもお座敷運転のレールでは当然のように2軸車でないと無理なので短冊には窓3個分くらいの極端に短い車体の絵を描きました。夢を追いかけるならスケール通りにすればよいものを、わざわざ現実味のあるショーティにしたところがいかにも自分らしいなぁと今思います。そんな客車が(Oゲージで)製品化されることはありませんでしたが、その後ボール紙製で青大将色に塗った車体を無蓋車にかぶせて七夕の願いを実現しました。

 余談ですが、ナハ10はスイスの軽量客車の構造やデザインを取り入れて設計されたと言われています。私がスイスの鉄道に惹かれていたのはそんなつながりがあったからだと思います。客車に少し遅れて全金属製の73系や80(湘南型)70(スカ型)が現れ、そしてカルダンの90(後の101)20(後の151)と続くことになりました。同じように阪急の1000系、阪神のジェットカー、京阪、近鉄、そして関東私鉄にも近代化の波が訪れます。セピア色の思い出話でした。