2021/12/29

妄想トレイン 前編

  と言っても鉄っちゃん向けテレビバラエティ番組ではありません。独立車輪付きボギー車は急曲線の走行抵抗が小さくなるので庭園鉄道に適しているという結論を得て、それならどんな車両がいいかと考えたお話です。鹿部電鉄では翌春から本格的にエンドレス建設に力を注ぐことにしているので車両増備のためにマンパワーを割くわけにはいきません。その後と言うとまたまた年を重ねるので、元気で身体が思い通りに動く間にそんな車両を完成させることができるか甚だ疑問です。たぶん実際に製作することにはならないであろう車両なので、やりたい放題の仕様を盛り込み妄想を膨らませて楽しもうという魂胆です。屋外はすっかり冬景色になって雪かき以外の作業はお休み、スキーから帰ったら暖かい部屋でパソコン遊びに没頭します。

札幌市交通資料館に保存されているD1040
 大沼電鉄にボギー車は存在しなかったのでモデルの縛りはありませんが、やっぱり好きな車両にします。第一候補は「鹿部前史」(2020/10/8投稿)に書いた札幌市電のD10401964(昭和39)製、本邦唯一のディーゼル路面電車です。今日でも通用しそうな近代的スタイルは当時中学生だった私をその虜にしていましたが、北海道への撮影旅行の計画を裏切るかのように1971年に廃車されてしまいました。幸運にも札幌市交通資料館に保存されていて2010年に初対面を果たしました。遡って1979年の夏イギリスに長期出張した際にロムニー・ハイス・ダイムチャーチ鉄道に乗ったのですが、帰り道ロンドンの本屋で”Modern Tramway”という雑誌が棚いっぱいに並べられているのを見つけました。実はその雑誌に憧れのD1040の記事が図面と一緒に載っていることを知っていたので、片っ端から表紙の写真をチェックしてとうとうOctober/1966号を手に入れたのでした。その日は15インチゲージ鉄道の乗車体験よりD1040の図面が入手できたことで天にも舞い上がる気分を覚えました。今その図面で15インチゲージの車両の妄想をしているのは何かの因縁かもしれません。

Modern Tramwayに掲載されていた図面         

 全長13mのうち、窓2個分をカットし、中央の巨大両開きドアを片開きにして10mに短縮します。前面のパノラミックウィンドウをそのまま残せば、イメージを充分再現できます。台車の軸距は1600mmなので1/3より少しでも短く500mmにします。大きな空気バネに揺れ枕が目立ちますが、それらしくなんちゃって台車に仕上げるのは得意技です。車体は全体に丸みを帯びているのでカヌー製作技法が応用できます。車体断面の枠を台枠に固定し、外側に杉の薄板を貼り付け、最後にFRPで仕上げます。窓がはめ殺しなので窓枠を作る必要がなく、その点で手間が省けそうです。本来の扉もその幅では役立たずなのではめ殺してしまい、側板ごと開く「乗務員扉」を目立たぬように設けます。いや、両開きドアを復活した方がいいかな?

ショーティのイメージと車体の構造を妄想する

車内に乗り込めません
 一方でその魅力的な前面の造形をいかに再現するか、パノラミックウィンドウの成形、固定、方向幕と換気口の構造、屋根と裾の3D曲面成形など課題が山積みです。とはいえ、あれこれ考えることは楽しいし、いつ何時までに答えを出さないといけない仕事ではないし、失敗したからと言って誰かに責められるわけでもありません。ただ緊張感のない生活は認知症まっしぐらになりますから、頭と指(パソコン)はできるだけ使うように心がけます。そうやって1/3スケールの図面に私サイズのフィギュアを貼り付けてみると、、、、「アッチャーっ」。D1040は路面電車なのでやはり全体的に小ぶりなのでしょう、乗り込んで運転するには10~20%オーバースケールにしなければならないようです。
キハ40000 Wikipediaより

 もう一台の候補は国鉄キハ40000です。1934(昭和9年)製の11m級省型軽量ガソリン動車で、戦後キハ04~キハ06と呼ばれた兄貴分キハ41000機械式気動車の小型版です。このキハ41000も私の大好きな車両で、過去何度となく16(1/80)で模型化しています。キハ40000は貨車1両を牽引する余裕を持たせるために車体を小型化し、床下を有効に使う目的で台車の軸距も1800mmから1600mmに短縮されているので、急曲線庭園鉄道の車両選びというお題には最適のターゲットだと思います。しかも大沼電鉄と時代が合致するのでデ1と同じ線路に置いても違和感がありません。ただ残念なことにキハ40000は北海道には配属されなかったようです(キハ41000は実績あり)
             キハ40000         水島臨海鉄道キハ310
尾小屋鉄道キハ3運転台
鉄研OB富田さん提供
 機械式気動車は特殊な操作によって運転されることから、その運転方法や運転台の機器配置に深い興味を抱いていました。ガソリン機関もディーゼル機関も電動機のように停止状態からすぐに動くわけではありませんし、回転数範囲も限られているので減速機のギアを切替えなければならず、それゆえクラッチ操作が必要になります。作動原理は自動車と同じですが、機関出力に比べて車両重量が非常に大きいことや、黎明期の機器は熟練技を必要とするものが多くあったことから、乗用車の運転のように誰でもできるという簡単な話ではありません。車両の個体差(クセ)や運転技量によって振動や大きな音が発生することがあり
(いや大概はそうです)、いかに乗心地よく起動・加速するかスロットルとクラッチの操作に運転手は神経を使っていたのだと思います。スロットルはペダルを踏む車両があれば手でレバー操作する車両もあります。変速ギアレバーは運転席の右にあったり左にあったり、ブレーキ弁も機関車のように左手操作するものがあります。私が学生で全国の機械式気動車を乗り(撮り)歩いていた頃、車両ごとに操作方法を記録していたのですが、そのメモは今どこにあるのかわかりません。そんなわけで電車と同様に機械式気動車を自分の手で動かしてみたいと長年思っていました。

TR27の類似台車
元佐久鉄道キホハニ56
 その台車は帯鋼組立菱枠型という簡易軽量にして安定性(乗心地)、信頼性がともに高く、戦前戦後を通じて多くの気動車に使用されてきています。見た目からも明らかなように万力と金鋸とヤスリがあれば自作できそうな形状になっており、DIY本能が目を覚まして思わず身震いしてしまいそうです。実物の車体は半鋼製と言われ、側板と妻板は鋼板を溶接とリベットで組み立てたものです。それらしく作るには木製の骨組みにブリキかトタンを張り付けるなど、工法を検討する必要があります。こちらはスケール通りの車体の中になんとか乗り込めそうですが、多少オーバースケールにしたほうがいいかもしれません。
半鋼製車体の構造                 人体サイズ  
 
 後編は下ネタです。

2021/12/19

待避線(余談雑談) 鉄道用車輪の話 続編

車輪のテーパーとスラックの関係(再掲)

  前回説明した車輪とレールの間で発生した差動滑りと横滑りが走行抵抗に大きな影響を与える問題について、もう少し掘り下げて考えてみたいと思います。車輪踏面のテーパーに関しては鉄道雑学として書籍や博物館の展示などでよく解説されていますし、近年はブログや投稿動画でも取り上げられています。ただしその理屈が成り立つのは実物の鉄道でも半径が数百m以上の曲線の場合であって、路面電車が交差点を曲がる時や列車が駅に接近する時には急カーブを通過せざるを得ない場面があり、そんな時に「チュイーンチュイーン」というカン高い音を発して車輪が滑っていることを感じ取ることができます。最新鋭の電車では自己操舵台車が導入されて速度・乗心地の向上や騒音の低減などが実用化されているようですが、実は鉄道の曲線通過のメカニズムの詳細は完全には解明されておらず、音の発生源についても諸説あるようです。

 15インチゲージの庭園鉄道を模型と考えるか実物の鉄道の一種と見なすかは場面によって異なり、大きさ以外の基本的な機構や走行原理はどちらも同じですが、こと曲線に関して言えば、庭園鉄道ではそのほとんどが急カーブで占められているのに対して、多くの実物の鉄道では駅や車庫などの構内に例外的に存在しているのが実情です。その結果、車輪のテーパーの理屈と同様に必ずしも実物の鉄道での一般的な知見や常識が通用しないことが多々あります。実物の鉄道では旧国鉄の鉄道技研(後の鉄道総合技術研究所)が各種条件(速度、車両重量、曲線半径、勾配等)の下で走行抵抗や脱線限界などを実験調査して定量化(数式化)しており、その結果を庭園鉄道にそのまま適用はできないものの、傾向を窺ったり定性的な判断基準に応用したりすることは可能です。一方で偶然見つけたのですが、林業試験場(旧農林省管轄と思われる)が「森林鉄道貨車の走行抵抗」という研究成果報告論文 (昭和30年代)を発表しています。こちらは762mm(30インチ)ゲージで軸距や車輪径、軸受構造などが庭園鉄道により近く、おおいに参考になる内容が含まれています。この研究では運材車の構造や荷重、曲線半径、勾配の他、線路が乾燥しているか濡れているかなど各種の条件で走行抵抗が測定されています。現在のように便利な計測機器のない時代に苦労と工夫を凝らして解析がされており、大変興味深い内容になっています。
林業試験場発表論文
 その中でも庭園鉄道に取り入れられないかと気になるのが「単独軸型貨車」の記述です。一般的な車軸で両輪が繋がった「2軸型貨車」に対して、前後左右の4輪がそれぞれ個別の短い車軸で支持されたもので、差動滑りが発生しないという特徴を持っています。実験の結果は期待通りで、特に曲線半径が30m以下になると走行抵抗の増加を抑える効果が顕著になると記されています。ところが別の文献で、単独軸の場合は一方の線路に偏って走行するために車輪の片減り(偏摩耗)が発生する、と書いてあります。両輪が固定されて踏面がテーパーになっている一般的な車輪の場合は直線路で長周期の蛇行が起こり、車輪が均等に摩耗する効果があるからだそうです。直線路で偏摩耗が起こるという単独軸の欠点は庭園鉄道では全然問題になりません。なぜなら、少なくとも鹿部電鉄では全線が計画通りに完成した時点で直線と曲線の延長比率は46であり、そもそも長周期蛇行が発生するほどの長い直線区間はありませんし、日常の気まぐれ運転では車輪の摩耗なんて考えたこともありません。となると6割を占める曲線で走行抵抗が小さくなるメリットの方が、はるかに大きな期待が寄せられるべきではないかと思います。
通常の軸受け(左)と単独軸受(右)
林業試験場論文より
 運材車の単独軸では、図のように両端が台枠に固定された短い軸に車輪がローラーベアリングを介して取り付けられていて、4個の車輪はそれぞれが自由に回転します。念のために、軸は固定されていて首振りをするわけではないので、仮にレールがない状態で押すと直進します。また、両端固定の長い軸に自由回転できる2個の車輪を取り付けても同じ効果が得られますし、同様の構造でボギー台車を作ることも可能です。運材車や貨車のような付随車の場合はこれで差動滑り問題が解決できますが、動力車の駆動軸の場合はチョッと厄介です。まじめに考えると自動車のデファレンシャルギアが必要になってきます。

 大型鉄道模型メーカーのモデルニクスホームページでは、詳細はわかりませんが独立回転車輪が使用されていることが記されています。パワートラック(動力台車)の説明には「急曲線用に左右独立差動駆動になっています。カーブに入ると外側車輪は増速し、内側車輪は減速して、直線と同じ速度を保ちます。」とあります。

 世の中には違う目的で同じことを考えている人がいるもので、超低床路面電車では車内の床を低くするために車軸をなくした独立車輪が実用化されています。この電車では左右の車輪が別のモーターで駆動されて機械的に独立している一方、回転数やトルクの差を個別に制御しているそうです。

 差動滑りと並んで急曲線では横滑りが大きな走行抵抗の原因となります。前にも書いた通り固定軸距が長いほど、また曲線の半径が小さいほど、レールの向きと車輪の向きのなす角度(アタック角)が大きくなり横滑りが顕著になります。ボギー車の走行抵抗が四輪単車より小さいのは固定軸距が短くなるからで、さもなければ軸数が増えた分だけ抵抗も倍増してしまいます。図に軸距とアタック角の関係、アタック角と横滑りの関係を示しています。横滑りは、車輪が本来転がろうとする方向とレールの形状に沿って進む実際の動きが異なるために、フランジがレールに押されて発生するものです。後輪側では内側のレールに沿ってフランジを押す力が働きます。

アタック角と横滑りの関係

 ということで、その多くが急曲線で占められる庭園鉄道では、単独軸車輪(独立車輪)を使用して差動滑りを回避することができ、また軸距を短くして横滑りを低減すれば、走行抵抗を小さくすることが期待できます。ボギー台車では必然的に固定軸距が短くなるため、独立回転車輪と組み合わせると大きな効果を得ることができます。ただし、駆動軸の差動滑りを解決する具体的方法が検討課題として残ります。

車輪とレールの動きを
目の当たりに観察する
 鹿部電鉄を計画していた段階では、こんなことは想像もしていませんでした。実際にトロッコ遊びをしていて、S字カーブを通過する時に車輪のフランジが交互にレールに接触すると抵抗が大きくなり、速度が落ちるのを見てなるほどと感心したものです。制御器に電流計を取り付けると、カーブでモーターに負荷がかかっていることが目に見えました。半径4mの曲線では徐々に速度が低下しながらも粘り強く耐えている様子がわかります。これらは自身で鉄道を作ってこその貴重な体験だったと思いますし、机上の知識を物理現象として体感的に理解し、問題を解決したり新たな展開を導いて行く力になると信じています。

 余談の余談になりますが、2021/1/27投稿の「ラジアルトラックという2軸台車」では曲線部で車両にかかる遠心力を利用して前後輪が舵を切る機構について書きました。これもアタック角を小さくすることで急曲線の走行抵抗を低減しようとするものでした。またドイツを始めヨーロッパの路面電車では多くの3軸車が1930年頃から建造され2000年頃まで現役で稼働していました。原理的にはボギー台車に近い構造で、写真を添えておきます。どちらも見るからに複雑で修理やメンテナンスに手こずりそうです。日本に輸入されたラジアルトラックは結局ほとんどが固定軸に改造されてしまいましたが、わざわざまとまった数量を輸出したということは製造元のイギリスではそれなりの信頼性が確立されていたはずです。3軸車に至っては500両以上が製造されたとのことですが、日本には存在しません。コピー生産が得意の日本でもチョッと真似できなかったのでしょうか?

ミュンヘン市電の3軸台車   と       舵取り作動原理図 
Wikipediaより

2021/12/15

踏切(併用軌道)の落し穴

  前々回の投稿で分岐の先にエンドレスの一部となる線路を延長したことを書きました。ここは道路から母屋の玄関に至る通路を横切るので、その後レールの間に敷石を置いて踏切(併用軌道)にしました。その構造は20201225日投稿の「ご近所パワー」に図示してあります。今回は曲線であるためレールとコンクリートタイルの間のスペーサーとなる木材が直方体ではなく加工に時間を要しました。

新設踏切

 ようやく完成したこの区間に電車を乗り入れたところ、フルノッチにもかかわらず急激に速度が低下してモーターが唸り、ノッチを戻すと同時に「ガクン」と停止してしまいました。逆転レバーを回してノッチを入れると少し動いてまた止まってしまいます。敷石を入れる前は急カーブで喘ぎながらもがんばって走っていたので明らかに何らかの異常が発生しているようでした。結局手押しで脱出しましたが、何かが引っかかっているのだろうと思うほど抵抗があり、直線部分まで戻るとウソのように軽くなりました。


スペーサー上に残った2条の黒いスジ
曲線の外側が前輪、内側が後輪の跡
 その日の原因究明は日没終了。翌日スペーサーの上面に2条の黒い筋が付いているのを見つけました。クリ材やアカシア材は鉄に触れた後雨や朝露で濡れると黒く変色するのですが、これは明らかに前後輪それぞれのフランジがスペーサーに接触した痕跡です。同じ変色は直線部に敷石を置いた時にも起こっていましたが、走行抵抗が大きくなるようなことはありませんでした。路面電車が溝付きレール上をフランジ外周で走行することがありますが、それも異常なことではありません。実はこのような急曲線では差動滑りや横滑りが発生しているのですが、木製のスペーサーと鉄製車輪の間の摩擦係数は鉄同士のそれより極端に大きく、車輪が前に進むとこれらの摩擦力が発生し、異常な走行抵抗となって現れていたと想像されます。

 差動滑りと横滑りについては2021/5/22投稿「鉄道用車輪の話」に書いていますが、あらためて説明すると以下の通りです。鉄道用車輪のように一本の軸で固定されている左右の車輪が曲線を通過しようとすると外側の車輪は内側より長い距離を走行しなければならないため、踏面にテーパーを設けて外輪がレールと接する部分の直径が内輪より大きくなるように工夫されています。ところがその前提を越えるような急曲線を通過しようとすると内外輪のいずれか(あるいは両方)とレールの間に回転滑りが生じ、また直進しようとする車輪をレールに沿って曲がらせるために横滑りが発生することになります。

 今回の、木製スペーサーとフランジ外周が接触して走行抵抗が想定外に大きくなった事象は、スペーサーを削って厚さを減じることで解決しました。

 それにしても急曲線は庭園鉄道の宿命です。とはいえ実物の鉄道で国内最急は豊橋鉄道市内線の半径11mですから1/3にすると約3.7mで、半径4m5mは現実にはあり得ないと言うほどの急カーブでもなさそうですし、森林鉄道ではもっと急なカーブもあったようです。通過可能な曲率は固定軸距や軸重、軸バネの有無など台枠や台車の構造の他、レールの表面状態(水平、凹凸や潤滑)などによっても影響を受けるので一概に決められるものではありませんが、限界を超えるとフランジがレールに乗り上げて脱線してしまいます。単に走行抵抗が大きくなると言うだけの問題ではありません。

色づく秋の風景

2021/12/08

レールの保管について

  レールの運搬にはトラックチャターが必要になるためまとめて購入しないと単価が割高になることを書きました(202010月投稿「レールの調達」)2014年春に20(55m)購入してその年に10本を敷設し、残りは庭の片隅に並べて保管していました。雨ざらしですが、そもそも線路は屋外に設置されるもので錆びたからと言って使えなくなるはずはありません。と、思っていました。

 ところが5年以上保管していたレールを使って分岐器を作ることになり、あらためてレールの表面を観察してみると、ずっと使用してきたレールとは異なって凹凸が目だっていることがわかりました。これもワイヤーブラシで擦り取れば平らになると思っていました。酸化で体積が増えた錆が表面に付着しているのならその通りですが、錆が盛り上がっているのではなく、腐食で斑点状に肉がえぐれていたのでした。また安易にグラインダーで削り取ることを思いつきましたが、腐食していない表面は製造時の熱変化で硬化していて砥石が滑るので簡単には削れないことがわかりました。たった5年放置していたレールですが、山中で何十年も眠っていた森林鉄道の廃レールにも似た状態でした。ただ踏面が下に向いた状態で保管されていたレールの腐食は幾分軽症でした。

 5年間雨ざらし保管したレールの発錆状況  右の写真は踏面を下に保管していたもの 

線路として使用していたレール表面
 敷設済みのレールの側面や底面こそ同様に錆びて凹凸表面が目だつ部分もありますが、毎日とは言わずも数日おきに車輪が転がって行くレール上面は腐食が進行しないのでしょうか。時々曲線部に塗布する潤滑油が広がってきて防錆効果があったのかもしれません。

 無駄とは思いながらワイヤーグラインダーで出来る限り錆落としをして分岐器に使用しました。まぁそれが原因で脱線や走行不良、騒音の異常な増大が起こるわけではないので今後気を付けることでケリとしました。対策としては、購入したらできるだけ早くクリアラッカーを吹いておく、最低でも頭部、できれば側面、底面も処理しておくことが望ましいと思われます。保管場所は雨のかからないガレージなどがよいのでしょうが、長さと重量があるので縁の下などは出し入れの方法を工夫する必要があります。初めてレールが届いた日、鉄紺色で断面に角が立ったその姿に見惚れて頬ずりしたことを思い出し、あらためてこの世の無常を悟りました。

ワイヤーグラインダーで錆落とした敷設直後のレール(左)と運行で表面が幾分平らになった後の状態(右)