2024/07/20

各種資材搬入

  キハの車体製作が始まりました。木製車体は主にヒノキ材から製作します。2023年4月19日投稿の「キハの窓試作」に書いた通り、ホームセンターで入手できる工作用ヒノキ角材を使えば日車製軽量気動車の窓まわりが実感的に表現できることに起因しています。窓以外の部分も同じ材質にすることで温度や湿度による歪みや反りを低減できるのではないかと期待しているわけです。ヒノキは風呂の浴槽に使われるくらいですから耐水性、耐久性に優れている一方、柔らかい性質もあって加工性が良い反面、当て傷や掻き傷ができやすいという弱点があります。節のない柾目の材料を使えばきれいな仕上げ面が得られますが、大きな部材はびっくりするような値段になります。色々と悩んだ結果、窓まわり以外の幕板や腰板、屋根のリブ等の構造部材は12mm厚75mm幅の表面仕上げ材を通販で購入することにしました。節なしだと値段が10倍以上に跳ね上がるのでイチかバチか節ありを選びました。どうせ切り継ぎするので表面に節の部分を避けて使えば何とかなるだろうとの見込みです。

工作用ヒノキ角材で試作した窓

節のないきれいな上4枚と節や外皮の残った下2枚
 通販サイトからヒノキ製材長さ2mの24枚セットを注文したところ、価格7800円に対して送料のほうがはるかに高い見積が返ってきたので一旦キャンセルし、長さを1mにして48枚注文したところ送料は2800円と普通の宅配便の料金になったので内容変更して発注し直しました。数日後届いた梱包を開くとほとんど節のないきれいな板が入っていました。「これは儲けた」と勇んで1枚めくるとやっぱり節なし板、しかしもう1枚下からはあちこちに穴の空いた板が出てきてまぁまぁ想定の範囲に落ち着きました。因みに購入した製材はプレーナー仕上げ乾燥済み品でした。表面は組立て後塗装前にパテを塗ってサンダーで仕上げるのでどうでもいいのですが、乾燥材であることは必須条件です。

妻板ユニット用に購入した工作用角材

 車体の工作は手始めに妻板ユニットである正面と運転台横の窓部を作ります。窓枠やウィンドウシル・ヘッダーは工作用角材を使うのでホームセンターで所定の寸法の材料を揃えました。函館には3系列の大手ホームセンターがありそれぞれの価格比較をしました。A店は「同一品が他社より高い場合はさらに10%引きにします」と謳うだけあって一番安く、サイズによって他店の70~50%程度の価格でした。一般的に考えて細い角材ほど加工費(メーカーコスト)は高くなると思うのですが、単純に寸法(体積)に比例したような価格(ユーザーバリュー)が付けられているようで驚きました。ちなみに3×3×900は単価19円でした。

 そうこうしている内に6kgレールの配送連絡がありました。6月に届くとのことでしたが、天候の関係で船積みが滞って遅くなっていました。道路と生垣の間(セットバック用地)に枕木を置いて待っていると、なんとユニッククレーン付きの12t車が家の前に横付けされました。最初の時も4t車で驚きましたが、よほどやりくりがつかなかったのでしょう、送り状には「694kg」と書いてありました。想定外の大型車だったので国道へ出る曲がり角が心配でしたが、難なく帰って行きました。

大型トラックに恥ずかしいような積み荷

 本州各地で梅雨の豪雨被害が出ている中、当地はお天気続きで早速レール踏面の防錆処理(クリアラッカー塗装)をしました。翌日カヌー格納庫に保管する作業を始めました。暑さをしのぎながら(と言っても本州の酷暑とは桁違い)半分ほど(十数本)入れた時点で床が歪んでこれ以上運び込むと底が抜けるかも、という状態になりました。枕木は2本敷いただけだったので荷重が集中していたのでした。さらに翌日、作業効率を考えてカヌー移動用レールを撤去し、一旦全部運び出してから床に枕木を50cm間隔に敷き直しました。レールは3.6mと短めですがそれでも1本20kg以上あり、一人で狭い場所への出し入れで腰への負担は限界に達していましたし、熱中症の恐れもあって作業は半日で中止。次の日は午前4時起床して涼しいうちに開始、日が差す頃にはカヌーレールの復旧を含めて全部の作業を終えました。

左:防錆処理をして格納庫まで一人で入れたり出したり、ここまで3日がかり      、                
                   右:翌早朝から作業して合計32本搬入完了     

 このレールが日の目を見るのはキハの製作が一段落してから、軽快にデやキハが走る日を夢見ながらしばらくここで眠ってもらいます。

2024/07/10

待避線(余談雑談) 刃物の切れ味 続き

  すでにキハの車体製作に着手していますが、その進捗はキリのいいところであらためて報告させていただきます。木工作業の修正や仕上げにカンナを使う機会が増え、切れ味の冴えない刃に少しイラついていました。このカンナは結婚してDIYを始めた頃に懐と相談しながら買って以来、40年余り刃を研いだことは一度もありません。テレビのドキュメンタリーで宮大工が仕事終わりに気合を込めてノミやカンナの刃先を研いでいる姿を見て、素人にできるものではないと信じていたからです。

 キャベツを切る包丁は毎日のように自信をもって研いでいるので、カンナもできるか?とふと思い立ちました。しかし包丁用の砥石は真ん中が凹んでしまっているので使い物になりません。ネットで調べたら「面直し用砥石」という物があって、これで砥石表面を常に平らに修正しながらカンナ刃を研ぐことで真っすぐな刃先を得ることができるそうです。ホームセンターの台所用品売場に行くと、砥石セットと一緒に面直し用砥石があったので迷わずに買って来ました。説明書を読むと、刃を研ぐ前に水に濡らした砥石と面直し用砥石の両方を平らになるまでこすり合わせるとのこと。試しにやってみましたが、どちらも新品なのでそこそこにして刃研ぎを始めました。

 砥石に刃を押し当てて何回かこすってみると、この安物カンナの刃は全然平面になっておらず、刃先どころかアチコチが削れて光っていることがわかりました。全体を平らに削るのはあきらめて、まずはとにかく切れ刃を形作ることにしました。全体形状の修正は時間をかけて根気よく進めます。研ぎ直したカンナで試しに残材の側面を曳いてみたところ、かつお節とまではいかなくてもそれなりに薄いカンナくずが出てきて、木工作業らしくなるかなと思った次第。宮大工の仕事には遠く及びません。

2024/06/27

待避線(余談雑談) 刃物の切れ味

  私の得意料理は千切りキャベツ、葉の厚さより幅が細いフワフワキャベツにとんかつやカラアゲを載せると彩だけでなく味にも影響を与えます。料理包丁は日に何度も使うので、刺身やキャベツを切る前には気合を入れて研ぐことで切れ味が蘇ります。折り刃式のカッターナイフでボール紙を切っていて裏側に切り残しが出るようになったら、「パキン」と刃を新しくすると気持ちよく作業が続けられます。ドリルは切れ味が悪くなると切り粉の出方が変わるのでグラインダーで研ぎ直しますが、先端の切れ刃が上手く削れた時はドリルの両側にらせん状の切り屑がⅤ字型に広がり、切削音も静かになります。

丸鋸用直角ガイド
 工具の切れ味はホントに少しずつ悪くなっていくのでそれに気づかないことがあります。音や振動が大きくなったり、刃が真っすぐ進まなくなったり、進み具合が遅くなったりすることで何かおかしいと思う場合もあります。実は少し前から電動丸鋸で角材を切ろうとしてガイドを当てがっていたのに、何回やっても切り口が直角にならず苦労していました。ガイドの作り方を教えてくれた家具工房の長沢さんに相談したら「直角が悪いンじゃないの?」と言われ、一から作り直しましたが、やっぱり切り口の角度が一定せず、途方にくれていました。ところが先日新しい替え刃に交換してみたところ、音も振動も進み具合もすべて一挙解決、切り口はスベスベでもちろん直角度もバッチリ決まりました。この電動丸鋸は鹿部に移住して来る前に義父のDIYを手伝うために買ったもので、最初から付いていた刃は15年近く使っていたことになります。

チップの損傷状況
 一方昨年購入してキハの台車や構体製作に重宝していたチップソー切断機がやはり直角度不良に加えて異音や異常な熱が発生するようになりました。刃先を点検したところ全周で3ヶ所のチップが欠けてなくなっているではありませんか。慌てて替え刃についてネットで調べたら、値段は数百円から1万円と幅があり、直径はもちろん被削材の種類、刃の材質形状、刃数等によっていろいろな物があるようです。世の中にたくさんの種類があったとしても、近くのホームセンターには数えるほどの在庫しかなく、結局函館の工具専門店へ足を伸ばして、軟鋼用として耐久性の高い替え刃を買いました。チョッと高いかな?と思いましたが、切れ味の良さは仕上がりだけではなく作業性や精神衛生の改善にもつながると考えて奮発しました。さて遅れて届いた構体横梁用□30mm角型鋼管の切れ味は?まるで豆腐を切っていると言えば言い過ぎですが、何の抵抗もなくハンドルが下がって行き、耳をつんざく金切り音はどこかに消え、アッと言う間にウソのような美しい切断面とともに正確な直角に仕上がりました。元々付属していた刃は木金両用と謳っていただけに普及品だったのかもしれません。私がやっている事は所詮趣味のDIYなので大層な機械や本職が使うような道具は猫に小判ですが、せめて替え刃くらいはいい物を使うべきであるという教訓でした。

2024/06/21

キハの車体製作 構体の組立て

  台車の組立ての時は通し穴とネジ穴の位置が合わずに苦労しましたが、構体の加工に際して徹底的に治具の使い方に留意したこともあって組立ては意外なほどにすんなりと行うことができました。

     台枠と台車         4個のメッキが光る台車固定用ボルト
台枠結合                構体完成

 ガセットが片面のみであり、組立て後の剛性がやや気がかりでしたが、しっかりとした組上がりになっています。上部を横から揺すっても構体自体が歪むことなく心皿両脇の側受けで台車が交互に荷重を担って軸バネが撓んでいます。部材の一部(横梁)が未入荷で、この後追加組込みしますが、一応これで構体製作を完了します。

 引き続きこの骨組みの周りに妻板や側板、屋根などの木工部材を取り付けることになります。ところがまだ専用の車庫がないので当分の間ブルーシートで雨風をしのがなければなりません。木工作業の間に現品の寸法や構造をチェックする必要があるためグルグル巻きではなく、必要な時に簡単にまくり上げてアクセスできるようにブルーシートに細工をしました。天井(屋根)には1800×900×t12の合板(コンクリート型枠用防水処理済品)2枚を置いて雨が溜まらないようにしてあります。

   合板を2枚置いて          ブルーシートを被せる(棺桶みたい)

 ついでなのでこの状態でデ1の駐泊所を通過して大型車体が構造物に接触しないか確認しました。完成車体の幅は800mmで、900mmの天板を被せた状態で大丈夫だったので建て替えの必要はないことがわかりました。机上ではピタゴラスの定理で確認済でしたが、あらためてひと安心です。

2024/06/17

TR27台車の走行抵抗試験

  車体製作の合間を縫って完成した台車の走行抵抗特性を測定しました。この台車は左右独立回転車輪を採用することで曲線通過時の差動滑りをなくすのに加え、軸距(ホイールベース)をスケールより短めにすることでアタック角をより小さくして横滑りによる走行抵抗を低減する工夫が加えられています。その仕組みの詳細は2021年12月19日の「鉄道用車輪の話 続編」を参照ください。

 すでに昨年仮組の状態で台車を押して曲線通過時の状況を確認したところ、良い感触が得られたので具体的な数値を測定しようと考えていました。どうせやるなら完全に台車が出来上がってからと思い、その方法を検討していたのでした。件の投稿で引用した1955年(昭和30年)頃の研究論文を読んで、当時の乏しい計測技術(機器)で速度や牽引力を記録する涙ぐましい努力に頭が下がる思いがしました。ならば鹿部電鉄で近代的な計測器が使えるかと言えば、唯一あるのはホームセンターで買った10kgフルスケールのバネばかりが1個だけ。正確な速度さえいまだに計ったことは一度もありませんでした。というわけで、大層なタイトルですが実のところ本当にいい加減な測定結果の報告です。せっかくなので鹿部電鉄の初号車たる2軸無蓋車も同じ条件で測定して比較の材料にしました。デ1は軸距が800mmで無蓋車と同じである一方、駆動系の抵抗があるので測定対象から外しました。

 走行抵抗はバネばかりを台車または無蓋車にワイヤーで引っ掛けて目盛りを読みます。手の引張り加減でその力は大きく変動しますが、感覚的に安定した平均値と判断した数字を記録します。速度は、一定(3~5m)の距離に目印を置き、スマートホンのストップウォッチを使って通過時間を測り、時速に換算します。停止状態から動き出す瞬間の起動抵抗、動き始めて速度1㎞/h前後で抵抗が安定する最小値、さらに3~6km/hの抵抗値を記録しました。手加減、手心満載の測定で、今どき流行りのデータ捏造、偽装のそしりがあればあえて甘んじます。

 とは言え、計測値をグラフにするとそれらしい走行抵抗特性曲線を得ることができました。これは手で押したり引いたりして得た感覚に合致するので全くのウソではありません。まず図1をご覧ください。TR27台車単体の直線、R5m、R4mの走行抵抗です。曲線部では走行抵抗が大きくなっており、独立回転車輪や軸距短縮の効果はそれほど顕著ではないように見えます。R4mの急曲線走行中の車輪を間近で観察するとやはり横滑りが起こっていることは明らかで、その影響を皆無にすることはできないようです。下の動画を参照ください。次に図2はTR27と2軸無蓋車の走行特性の比較です。両者の差として、無蓋車は両輪固定、軸距はTR27が500mm無蓋車が800mm、重量はTR27が70kg無蓋車が100kgです。直線部では独立回転車輪と軸距短縮の効果はないはずなので、この走行抵抗の差は重量または製作後10年の経年劣化によるものではないかと思われます。しかしR4mにおけるTR27の走行抵抗の増加は無蓋車に比べるとかなり小さく、目論見通りの結果になっています。

 上記の研究論文ではレール表面が濡れた状況で走行抵抗がどのように変化するかを調べていますが、明確な結論は得られなかったようです。一方でレールに潤滑油を塗布すると走行が滑らかになり、電車で曲線部を力行する時の速度が上昇することを経験しているので、この効果を定量的に把握しておくことは価値があり、今後機会を見て測定をしようと考えています。レールへ潤滑油塗布するとブレーキが効きにくくなる弊害もあり得失の検討に重要なデータになります。

2024/06/13

キハの車体製作 構体部材の加工

  いよいよ車体製作が始まります。台車完成の勢いが冷めないうちに、魚釣りも庭の草刈りにも目を瞑ってキハの製作に打ち込むことにしました。

 まずは□30の角型鋼管を組立てるに当たって素材の切断、穴位置のケガキ、穴明け、タッピングを行います。切断は昨年購入したチップソーを使用することにより正確できれいな断面を得ることができました。前に記した通り組立てはガセットを介したボルト結合なので、通し穴とネジ穴のピッチが合致するように寸法的に正確な加工をした治具をあてがってクランプで固定してからまずφ2の下穴を明けていきます。治具は構体となる角型鋼管にあけるネジ下穴用とガセットにあける通し穴用の2種類を用意します。これらの治具同士の穴位置が完全に合致していることは絶対条件で、加工中に治具が位置ずれを起こさないように注意することと、加工が終わった後穴同士の相互関係をノギスで確認することを忘れずに行います。最終的に02mm程度の誤差に抑えることを目標にすると組立てはスムースに進められるはずです。

構体の材料                 穴あけ治具

 5月下旬から6月にかけて北海道にはないはずの梅雨で屋外作業は悩まされます。これは鹿部特有の山(駒ケ岳)と海(内浦湾)に起因する気象らしく前線による降雨ではないので本当は梅雨ではないのですが、毎年この時期ジトジトと雨やら霧の日が続きます。風がなければ軒先にテントを張ってこじんまりした作業はできますが、いつ降り出すかわからないので長尺材の加工や塗装は晴天の日を待つしかありません。

やっと来ました塗装日和
 台車を製作した時に塗料がネジ溝に廻って困ったので、下穴加工が終わったらタッピング(ねじ切り)の前に油性ペイントで塗装します。素材購入時に防錆目的でクリアラッカースプレーを吹いていましたが、部分的に赤錆が発生していました。サンドペーパーで錆を除去し、ペイント塗装まで数日間は屋内保管なので軽く防錆油を塗布しておきます。




タッピング完了
 塗料が乾燥したらタッピングです。ガセットを組立てるネジの総数は約150ヶ所あり、TR27台車の約3倍に上ります。スパイラルタップを使うので効率よく作業を進められるとはいえ、同じ加工の繰り返しはうんざりします。ただ漫然とタップを廻していると無意識に指や袖が工具に引っかかって無理な力が加わり、工具を折ってしまうことにもなりかねませんので、常に緊張感を持ち続ける必要があります。時々休憩を取りながら根気強く作業を続けました。

 組立て用のボルト(六角穴付きM5×10)は必要数に余分を見て予めネジ専門店で購入済なので、全部のタッピングが終わったらすぐ組立て作業に取りかかります。鹿部電鉄初のボギー車が線路際の障害物と干渉しないか(どの程度余裕があるか)や走行抵抗の測定をしなければならないので、まず両台車を繋ぐ台枠から着手します。枠組みの直角度や平行度は正確に出せるだろうか?台車はうまく首を振ってくれるか?ボギー車の走行音や乗心地は?布団の中で考えている内に心地よい眠りに落ちていきます。


2024/06/08

小設計変更

  車体製作の前にというか、製作中急に思いついて構造を変更することにしました。台車の両脇に側受けと称するプレートを取り付けて車体下部のローラーから偏荷重を受けることにしていましたが、このローラーを台車側に付けることによりメンテナンス性を改善します。メンテというより故障対策、ネジが緩んだリ潤滑剤が枯渇して動きが悪くなった時に車体の下に潜り込んでの作業はやりにくいし危険を伴うので対策を考えたわけです。

台車に側受けローラーを取り付けるよう設計変更

 台車は今後動力装置やブレーキ機構を組み込む予定があるので、車体をジャッキアップしておいて前後に引き出すことを考えていました。ジャッキアップの前に車内からボルトを緩めると心皿が取り外せる構造にしてあります。もしローラーをはじめ台車に不具合が発生した時はこうやって修理をしたり、下回りの改造や改良をすることが可能になります。