2024/05/17

TR27台車の仕上げ

  4月になってようやく気候が落ち着き、屋外で電車作りの作業が出来るようになりましたが、良きにつけ悪しきにつけなかなか思うようにコトが運びませんでした。それでも台車にケリをつけないと楽しみな車体製作に移れないので、頑張って「台車完成!と言えるよう面倒な仕事を後回しにせずこまごまとした作業を続けました。

 残っていたのは側受け部、心皿取付け部、、軸受カバーの製作および上塗り塗装(タッチアップ)です。

1.側受け

 心皿(センターピン)には市販の回転盤を使うことにして通販で入手済みでした。これはテレビ台の回転部とか工場の組立作業台などいわゆるターンテーブルと呼ばれる箇所に使われる部品で、上下の板金に円形の溝をプレス加工しベアリングボールを挟み込んでカシメ加工により一体化したものです。以前に回転椅子をDIY製作した時使用したところ、耐荷重は充分にありましたが椅子にもたれて偏荷重が加わると壊れはしないものの板金が変形して安定性が損なわれてしまいました。これをそのまま心皿として使用すると車体が傾いた時、つまり人が乗り降りしたり曲線通過で遠心力を受けたりした時にやはり変形してしまい安定性が失われる可能性が懸念されます。そこで車体下部の心皿両側にローラーを取り付けて偏荷重は台車のボルスターに取り付けた側受けにかかるようにします。台車が曲線で回転した場合にそのローラーが転がる部分をt6の鋼板で作ってあります。

2.心皿取付け部

 回転盤の上下2枚の板の隙間は10mmもありませんのでこれを直接台車と車体に取付けることは不可能ではないにしても、実際には上下分離などのメンテナンスが出来なくなってしまいます。そこで上下の板をネジ加工が出来る別の部材に固定しておき、車体内部の充分広いアクセススペースからボルトで台車の着脱が出来るようにしました。実は昨年台車の仮組立てをした段階ではこの部分の構造はまだイメージしかなく、庭が雪に閉ざされている期間に設計図面を作成したのでした。

心皿部の詳細設計図

 当初外注による部品加工を前提に検討していましたが、せっかくチップソーとボール盤を購入したのでこれらを有効利用して部品製作しようと再設計し直しました。台車の構成部材であるt6×32および□12の残材にネジ加工して回転盤に固定しますが、上にも書いたように回転盤の隙間がわずかしかないので六角ボルトの頭の厚さを3mmまで削り取りました。またスプリングワッシャーも入れられないため、貫通したボルトの先端にダブルナットを噛ませて緩み止めにしてあります。
心皿部詳細
 台車本体部品の加工の際には穴位置のケガキが不正確であったり加工時や組立時に位置ずれが発生したりで、ネジ穴とボルトが干渉して組立に支障が生じていました。これを防ぐために治具を作ってできるだけ正確な位置に下穴を明けることはもちろん、同じ治具を使ってボルトの通し穴の下穴も加工するという手法を採用しました。最初は少し面倒ですが、一個ずつケガキをする必要がないし、ボール盤作業も細かい気遣いをせずに進められるので結果的に効率よい仕事になりました。

3.軸受カバー

ボール紙製フランジボルト穴
位置決め用治具
 デ1の台車も軸受はピローブロックで、じっくり眺めると軸端がクルクル回るのが見えます。メタル軸受箱風のカバーを付けて隠そうと思いながらずっとそのままになっています。一度出来上がってしまうとわざわざそういう改造をするのが面倒くさいと思ってしまうのは私だけでしょうか。TR27も台車としてそれなりに使えるようになるとその二の舞になるような予感がしていたので、これではいけないと仮組した台車からピローブロックを取り出し、軸受カバーが取り付けられるようにネジ穴加工をしました。ピローブロックは鋳鉄製で基準になる面がなく、両面にボス(カラー)が出っ張っているのでスケールを当てて穴位置のケガキを正確に行うのはほぼ不可能です。そこでボール紙に正確にケガキ線を描き込み、ボスの外径にちょうど嵌まり込む穴を切り抜いた治具を作りました。ボール紙製治具をテープで固定し、ケガキ線の上からポンチを打ってネジの下穴を明け、ハンドタップでねじを切りました。この治具は捨てずに置いておきます。

 日車製の軽量気動車は起動時の摩擦抵抗を小さくするため当時としては珍しくコロ軸受を使用しており、軸箱端面には四角いフランジに円盤状のカバーが取り付けられています。外注加工すれば金属製の部品として作ることもできますがフライス工程が必要でかなり高価になりそうです。これは単なる飾りだと割り切れば木製で充分であり、過去に作った直接制御器の逆転器ハンドルに比べると形状は単純であり、ドリルレースで製作することにしました。t15×□80のフランジをクリ材の板から切り出し、中心にボスが通る大きな穴をホールソーで明けます。次にピローブロックのネジ穴加工に使ったボール紙製治具を当てがって四つのボルト穴を明け、角をR10に仕上げます。そこにφ70の炮烙状にドリルレースで削った円盤を接着すればそれらしくなり。ラッカーパテを塗ってサンドペーパー仕上げを3回位繰り返し、黒色ペイントを塗れば完成です。同じ治具でネジ穴と通り穴の位置出しをしたので何の干渉もなく取り付けることができるはずでしたが、木に竹を接ぐ例えの如く鋳鉄のピローブロックと木製の軸受カバーはなぜか穴位置が全然合わず、木工用丸ヤスリで一個ずつ拡大調整するはめになりました。8個作るのに仕上げ塗装を含めて実質5日ほどかかってしまいましたが出費はゼロ円で済みました。

軸受カバーの製作過程  と       完成品    . 

4.上塗り塗装

 仮組み後に製作した部品や相マーク代わりに貼り付けていたテープの跡、ボルトの頭、なぜか塗り忘れていた部分、雨に濡れて発錆していた部分などに黒色ペイントを塗ります。バネやバネ座などは組立分解作業の際に塗膜が剥がれていたので取り外し、上記の側受けや心皿部の部品も分解して塗り直します。

 軸バネやバネ座を取り出す分解の際には下フレームのみを取り外します。これ以外の部材を分解すると、苦労して合わせたネジ穴がずれたりペデスタルの平行度や隙間の具合が狂ったりしてしまうからです。

 最後に軸受カバーを取り付けてからメッキが光るボルト頭を黒色でタッチアップすると、昨年夏から作り始めたTR27はここに至って遂に完成を見ました。2台並べてしげしげ眺めると、いろんな困難があってなかなか効率的な作業ができなかったものの、時間をかけて丁寧に組立て、必要な部品を安易に省略しなかったことも幸いして非常に実感的な仕上がりになり、感無量の思いがこみ上げてきました。

          遂に完成              お見事! 自画自賛

 次はいよいよ車体の製作にとりかかります。

2024/05/08

6kgレール終わった

  15インチゲージの線路にはJIS規格(E 1103)で定められた最も軽量の6kgレールを使用しています。JIS規格で決められているのだからどこにでもある、いつまでもあると信じていたところ、ある日ネット上で6kgレールがなくなるとの記述を見ました。悪い冗談だと思いながらも気になったので複数の販売元に問い合わせたところ、すでに生産終了していて在庫もないとの回答が返って来ました。

2014年に購入した6kgレール
 実は手持ちのレールが残り1本になっていたので、エンドレスを全通させるために20本(線路長で55m分)手配しようと見積りまで取っていました。ところが当面キハ40000の製作に注力するため発注は先送りしていたのです。生産終了になることがわかっているなら見積回答時にひと言添えてくれてもよさそうに思うのですが覆水盆に返らず、どこかに在庫が残ってないか電話やメールで探すことにしました。最初にも書いた通り規格があってそれなりの需要があり、流通していると思っていたのに、やっと得た情報でも辛うじて数本どまりでした。ただこんな状況でかき集めても運賃ばかり高くついて現実的な解決には結びつきません。

 いよいよ6kgレールが入手できなかった場合は9kgレールで代替するかと腹を括りました。9kgレールの高さは63.5mm(6kgは50.8mm)、踏面の幅は32.1mm(同25.4mm)で見た目の違いは目立つほどではありません。ただし重量は1.5倍、5.5mの定尺で約50kgあるので曲げたり運んだりするには危険と人力の限界が立ちはだかります。半分の長さにすると扱い易くはなる代わりに、切ったり繋いだりの手間が増えます。6kgと9kgの継ぎ目の処理を考えなければなりません。レールベンダーの形状を変更するかもう一台作ることになるかもしれません。いつもの悪い癖で考えだすと眠れなくなってしまいます。

重量物の人力運搬には危険が伴います

 そんなところに朗報が飛び込んできました。ごく最近知り合いになった15インチゲージャーから「海外向け仕様の6kgレールの在庫情報があるが、少量販売してもらえないか交渉中」とのこと。探しても見つからないのにあるところには捌ききれないくらいの量が眠っているもので、しかも引き取り先がなければ再溶融してリサイクルされるのだとか。それはなんとしてでも手に入れたい、少々割高でもと考えていたにもかかわらずm当たりの単価は相場より3割以上安い、ただし千葉の工場経由になるので輸送費は高くなりそう。といささかの不安が残るものの、製造元の大阪製鉄および取扱商社である島田商会と交渉を続けてもらいました。よく聞くと、一本の長さは9.1m(30フィート)、継目穴のピッチがJIS規格と異なる(どうせ切って使うので「そんなの関係ねぇ」)、32本単位での販売が必須条件とのことでした。結局9.1mを5.5+3.6mに分割し、私が3.6mを、相手方が5.5mを各32本引き取ることで決着しました。3.6mは体力的に考えて私にとっては大変都合よく、全長も当初必要としていた量とほぼ同じです。先行して大量に仕入れていた6kg用ペーシとモール(継ぎ目板/ボルト)も無駄にしなくて済みます。ということで鹿部電鉄における6kgレールパニックは願ってもない幸運な結果に終息し、あとは着荷(6月)を待つばかりとなりました。

 今後15インチゲージ鉄道を新たに開設する場合は9kgレールを使用することになります。重い、曲げにくい、高くつくというデメリットは避けられませんが、最初からやるなら致命的な問題ではありません。既に6kgレールで敷設された線路に増設延長する場合は、上に書いたように継ぎ目やレールベンダー改造等の工夫が必要になります。