デ1の屋根製作について2021年4月15日に投稿した記事の中で、「その時ダブルルーフが外部の明かりや空気を車内に取り入れるために巧みに工夫された構造になっていることを知りました。」と書いています。16番模型でダブルルーフ車両を作る時は、2段に加工された市販の屋根板の前後をヤスリとサンドペーパーで削るだけなのでその詳しい構造を知る由もありません。大沼電鉄が開業した昭和初期にはすでにダブルルーフの時代は終焉を迎えていたようで、戦後生まれの私は当然そんな車両の天井を間近で見たことなんてありませんでした。ダブルルーフと称される車両に乗ったことはありますが、キャンバスで屋根全体が覆われてしまってその構造がどうなっているかという疑問さえ抱きませんでした。その古典客車は別府鉄道ハフ7で、現在古巣の相模鉄道(元神中鉄道)かしわ台車両センターで復元保存されているそうです。写真を拡大観察する限りは明り取り窓が復元されているように見えますが、その構造まで忠実に再現されているかは不明です。
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別府鉄道ハフ7 1970年頃 自身撮影 古巣に保存中の元ハフ7 Wikipediaより |
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蒲原鉄道モハ1の内側窓 上部の金具を引くと開く |
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鉄道博物館「大正時代の3等客車」カットモデル |
その後、1923年製の蒲原鉄道のモハ1の保存車を見学する機会があったのでじっくりと観察しました。この車両のダブルルーフはほぼ原形と思われる構造を保っており、車内から窓の開閉をすることも可能で、きわめて良好な状態で復元保存されていました。また大沼電鉄デ1の製造元である日本車両の図面集を入手することができ、他の車両を含めて寸法的な推測が可能になりました。過日大宮の鉄道博物館を訪ねた際に、「大正時代の3等客車」という実物のカットモデルが展示してあるのを見て、目の当たりにダブルルーフの構造を知ることができました。これらの観察結果からダブルルーフは単に屋根が2段になっているだけではなく、横長窓が内外2重になっていてそれに挟まれた空間がダクト状の構造になっていることをはっきりと再確認することができました。つまり外側にはベンチレーターが設けられてダクト部に外気が導入され、内側の窓は煽り戸状で車内から開閉できるようになっています。必要に応じて換気が可能ですが、この構造のおかげで横風を受けても雨水が車内に侵入することがないように工夫されているわけです。鹿部電鉄のデ1は外観だけを真似て製作されているので、この部分の窓は2重にはなっておらず、ベンチレーターも構造の検討をしているうちに車体が完成して未装着のままになっています。今後、追々製作するつもりではいますが。
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デ1の車内 |
私には16番模型製作の習性が残っていて1/3スケールの車両でも車内の作り込みには手をこまねいています。これまで模型の車両内部は塗装すらしたことがなく、椅子や吊革に凝る人の作品を見ては「覗き込まなければわからないのに」と思っていました。乗り込める大型車両の場合はそうも言っていられない事情があって、無塗装どころか木質の退化退色や外板の塗料が窓枠から回り込んで垂れている状況に後ろめたさを感じているのが実情です。ダブルルーフには採光に加えて通風機能があることを得意げに説明しておきながら、窓が一重でしかもガラス(アクリル)を固定する木ネジがむき出しのままであることも手抜き丸出しで、もし待避線でもあったら隠れてしまいたいくらいに恥ずかしく思っています。
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