2023/09/16

TR27台車の製作 前編

  台車を製作するにあたって材料や加工のための機材を購入して準備を進めてきたこと、戦前型気動車用の典型としての概要、急曲線通過の際の走行抵抗を低減する仕組み等について繰り返し書いてきました。いよいよ製作に着手したので具体的な加工、組立調整手順や作業上の工夫、気付いた点や感想について記述したいと思います。

花巻電鉄デハ3の板台枠台車 自身撮影
 この台車に限らず鉄道黎明期(昭和初期まで)には大型鋳鋼や溶接による成形は一般的ではなく、鋼板や型材、鍛鋳造部品をネジ・リベットで組み立てるのが主流でした。そもそもこれなら自分で作れると思ったのもそういう理由からでした。事実鉄工所に加工依頼したのは車輪の軸穴の仕上げとトラス部材の曲げだけで、その他に通販で購入したものがありましたが、部材の切断はチップソー、曲げは万力、穴あけは卓上ボール盤を使ってすべて自分で加工しました。作業は想像を大幅に超えて相当な時間を費やすことになりました。

TR27台車の各部名称
 さて構造部材の名称を図に示しています。正式な名称はわからないので私が勝手に名付けたものです。説明文中にこれらの名前が出て来た場合はこの図を参照ください。なお図中のボルスターは山形鋼(L形鋼)の端面のみ示してありますが、左右の台車枠を繋いでいる部材で日本語では枕梁と呼ばれます。まずは台車単体の完成を目指し、ボルスターに取り付けられる心皿や車体との結合部分の製作は別の投稿で解説します。と言うのは独立回転車輪の急曲線走行抵抗低減効果を早く確認したいためです。

 加工が終わった部品から組立を始めるのではなく、とりあえず全部の部品加工を完了させてから一気に組立てることにしました。そのために各部の寸法や仕上がりが問題ないことは仮組みをすることで確認し、必要に応じて修正しておきます。

  無蓋車の下回りは購入品の軸受けと外注加工の車輪をネジで組立てただけでした。デ1の時は2軸台車枠が外注溶接加工で、バネの部分が少し複雑になっておりチョッと苦労はしましたが、数日で組み上がりました。それに対して今回の台車製作については部品を素材から加工するという作業が延々と続きました。ボギー車なので4軸、8輪、部材によっては16個または24個の同一形状品を正確に製作する必要があり、治具や型板を使って能率の向上と均質化を図りました。機械力も同様の効果を発揮しており、投資効果は大きかったと納得しています。

ボール紙のマスターで切断線折り曲げ線をケガく       切断する          
 折り曲げる              ステム24個完成 

 切断箇所や穴中心位置は素材にケガキ針で線を描き入れるのが一般的ですが、素人の仕事ではどうしても誤差が大きくなってしまいがちです。そこで鋼材の表面にクリアまたはグレーのラッカーを吹きつけた上に油性の極細サインペンでケガキ線を描くことにしました。複数個の同一形状部品のケガキにはボール紙のマスターを使用しました。穴あけ治具は正確なケガキをした上で穴位置にφ2のキリ穴をあけ、基準となる縁を合わせてからその治具をガイドにφ2の下穴をあけて行きます。全部の下穴が開いてから所定の径のキリを通し、さらにねじ切りをすることで位置のバラツキのない部品が製作できました。下穴を開けてから大径のキリを通すとキリ先端が躍らず、切刃先も長持ちするようでサクサクと作業を進めることができます。

穴あけ治具(左)と穴加工済のフレーム   穴あけ治具を使って下穴加工中のステム  

加工が終わった組立前の全部品(ネジ類を除く片側の台車1台分)

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