2020/10/11

レールの調達

  次は金物類です。今の時代なんでもインターネットで調べることができます。先に枕木を発注したことを書きましたが、調べると「軌框」(ききょう)という名で15インチゲージ線路の完成品が市販されていることがわかりました。発売元によって長さは1.1mとか2.75mとか、定尺(5.5m)から切り出した寸法になっています。別のサイトで価格比較もされていますが、意外にリーズナブルです。模型のお座敷運転の感覚で、庭の片隅でトロッコ遊びするのには適していると思います。またレイアウト案を描けばそれに合わせて曲げや切断もしてくれる、逆にすべてがオーダーメイドになるので図面検討が必要とも書いてあります。いずれもレールと枕木の締結はスクリューとレールクリップ(角座金)のようで、簡単確実かもしれないけれど、私は犬釘にこだわりがあったので購入に踏み切れませんでした。

軽レールのJIS規格と
使用例(芦生森林軌道)
 やはりインターネットで大阪の小川レール商会がヒットしました。以前、まだインターネットが普及していなかった時代の話ですが、鉄道模型雑誌にレールの販売店を探すのに苦労した話が載っていたので心配していました。6kgレールのJIS規格があることは仕事中に鉄鋼材料の資料を調べている時に目ざとく見つけて知っていましたので、探せばどこかで購入できるだろうとは思っていました。需要は15インチゲージ庭園鉄道だけではなく、工場や学校の大型門扉など身近なところにあります。スパイキ(犬釘)やペーシ・モール(継ぎ目板)もネットカタログにあり、早速見積依頼をしました。ここで大きな問題が発生。レールは、5.5mの定尺のままでは宅配便はもちろん、一般の混載便でも扱えないので専用貨物になります。レールを生産している製鋼所のある京浜地区から小樽か苫小牧までは船便、そこから鹿部まで200km余り4トントラックをチャーターしなければならないので、最低でも別途運賃が10万円かかります。レールの価格は定尺で1本約1万円なので、計画中の総延長110m40本約40万円のさらに25%が輸送費になります(消費税抜き)

 寝床に就くと、庭に敷かれた線路の上の電車を運転している自分の姿を想像しながら眠りに入っていくのが常なのですが、ふと不安がよぎる日があります。いくら余生は趣味に没頭すると決断したとはいえ、総延長100m超の庭園鉄道は本当に実現できるのだろうか。電車の運転は夢だったけれど、素人の力だけで最後まで鉄道建設の困難に立ち向かえるのか。それだけの初期投資をして途中で気力が失せたり他の趣味に気が移ったりすることはないだろうか。せめて20~30mほどの線路でトロッコ遊びができるところまで作ってみて、見通しが立ってから本格的に延長することにしたほうがよいのではないかと思い始めると、寝付けなくなってしまう夜もありました。しかし、購入するレールの本数を減らしてもトラックをチャーターしなければ鹿部まで輸送することができません。仮に本数を減らせば減らすほど総額に対する輸送費の占める割合が多くなっていきます。
 もし函館辺りで鋼材を扱っている企業があれば何か打開策があるのではないかと考え、やはりインターネットでヒットした藤光鋼材にレールを扱っていないか聞いてみました。いとも簡単に「取り寄せて配送します」との返事が返って来たので、見積を依頼したところ単価は多少割高ではあるけれど20(55m分)の購入ではこちらが有利と判断しました。ただし、スパイキ、ペーシ・モールは小川レールの方が安く、これらは混載便で大阪から取り寄せることにしました。発注した枕木の20060m相当はこの時の計算によるものです。藤光鋼材は、この後も車軸用の丸鋼や車体台枠の一部に使用した鋼板など、小口調達でも親切に対応してくれておおいに助かりました。

 スパイキ類はファックスで発注し、代金を銀行に振り込んでから一週間もしないうちに自宅に配送されて来ました。ずいぶん昔の話ですが、木曽森林鉄道の廃線跡を歩いた時に道端の一隅に錆びた細い犬釘が忘れられたように落ちているのを見つけて持ち帰ったことがありました。それ以来、兵庫県や鳥取県などの山奥で森林鉄道跡を探訪することに興味を持つようになり、朽ちた枕木に刺さったままの犬釘や土の中に埋もれたレールを見ると異様な興奮を覚えるのでした。そういう時は腰に下げて行った金鋸を使って230㎝の長さにレールを切出し、リュックに入れて持ち帰るのが楽しみになりました。*) 

廃線跡で草に埋もれていたレール    切って磨くと命が蘇ります

*)法学者に確認したところ、場合によっては違法行為になるので注意。
家で更に1㎝くらいの厚さに切り、ヤスリやサンドペーパーを使って錆を落として磨き上げ、クリアや銀色の塗料を吹き付けて机の上に飾ると、幻の森林鉄道が蘇ったようで無性の喜びを感じるのでした。拾った犬釘もまた同じです。告白します、そう私はレールフェチなのです。
スパイキ、ペーシ、モール

そんなところに大量の犬釘が届きました。錆も傷もない鉄紺色のバージンスパイキが我が物になった日の夜、密かにそれを握りしめ不気味にほくそ笑む私の姿がありました。

 次の日の昼前に4tユニック車(クレーン付きトラック)が自宅の前に来たのが窓越しに見えました。荷台にはレールが積んであるのですが、大型車には不釣り合いで申し訳なさそうに一列に並べてありました。トラックが庭に入れるかと気を揉みましたが、プロドライバーは巧みなハンドルさばきで母屋の前まで進めてクレーンのフックをワイヤーにかけると20本のレール(660kg)を一気に降ろしました。大きな買い物にもかかわらず、わずか10分あまりの早業で納品され、あっけに取られている内にトラックは帰って行きました。これまた山奥で何十年も雨にさらされ泥をかぶって錆びるに任されていたものと違い、断面には鋭い角が立ったバージンレールです。「それが今、我が家の庭に横たわっている!」と考えると、まだ新しいオレンジ色の錆に薄っすら覆われたレールの踏面に思わず頬ずりしてしまいました。レールの断面を何度も眺めながら、いよいよ長年夢見て来た鉄道のオーナーになる日も近い、との思いが込み上げて来ました。

「我が家にレールが来た!」

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