2021/05/02

屋根板の貼り付け


自作艇の進水式で大沼湖畔に
集まってくれたサークルの面々

 ご近所には色々な趣味を楽しむ人達が住んでいます。車で20分ほどの七飯町(ななえちょう)に国定公園の大沼があり、やはり同じくらいの距離ですが反対方向の森町(もりまち)に、カヌー工房を構えて希望者に製作指導してくれる方がいます。秋田カヌー工房の主は元高校の教師で、ご自身の趣味が高じて周辺に百人近い門下生を数えるまでになっています。私のご近所でもカヌー作りが盛んになって、後に私自身も自作カヌーオーナーになりました。

 そのカヌーは杉の薄板を型板の周りに立体的に貼り付けて流線形の船体を形成し、補強(リブ)や縁取り(ガンネル)、イス(シート)などを取り付けて製作します。まだ私が自分のカヌーを作ろうと思う前のことですが、杉板を曲げて3次元曲面を作り出すのだと聞いて秋田カヌー工房を訪ねました。実物のダブルルーフ電車の写真を見せ、製作中の電車も見てもらって、カヌーの製作技法が応用できるか聞いたところ、「それは可能です」とお墨付きを頂きました。そして数日後、杉板の束を届けに来たついでに板の曲げ方を実演手ほどきまでしてくださいました。

両縁を凹凸加工した屋根板
 曲げに適した道南産の杉板は厚さ5mm、幅45mm、長さ約2mで、板の長手方向の片側の縁が凸R、反対側が凹Rに仕上げられています。板同士は単なる突き合わせではなく、凹凸Rを嵌め合わせて木工用ボンドで接着することで段差なく組み合わさるワケです。杉は柔らかい材質ですが、そのまま曲げようとすると割れてしまいます。曲げるためには最低数時間、水に浸す必要があり、水より温水、さらに熱水のほうが効果は上がります。カヌーと違って曲げるのは端の方だけなので、夏なら水を入れた大きめのポリ袋等を利用して炎天下に放置することで柔らかくすることができます。水()から取り出した後、曲げ癖をつけますが、単に曲げるだけではなく、捻ったりしごいたりして無理なく曲面ベースに沿うようになるまで馴染ませるのがコツです。
 まず屋根骨組みの中心線に沿って前後方向に1枚だけ特殊な杉板を貼ります。この板だけ両側が凹Rに仕上げられていて、順次これを挟むように両側から凸R側の縁を接着していくことになります。
中央部に屋根板を貼り終えた状態
 杉板は屋根の骨組みおよび隣り合う杉板に接着剤を塗って木ねじで固定します。この木ねじは1昼夜を経てから抜き取り、次の工程で再利用します。中央部の2次元曲面部の貼り付けには大した技術は必要ありません。前後端の3次元曲面部は先端に行くほど隣の板と干渉しないように幅を狭くする必要があります。凹R側の縁は加工しにくいので直線のまま残し、凸R側をナイフや木工用ヤスリ、サンドペーパーで整形しながら調整します。削り方が足りなくて板同士が干渉すると浮き上がって手に負えなくなりますが、スキマが空いてしまった場合はコッテリパテで埋めることができます。時間をかけて丁寧に仕上げることが肝心です。全面に杉板を貼り終えたら一旦雨樋を取り外し、#80の電動サンダーで継ぎ目の段差や部分的な膨らみを削り取り、#240で仕上げします。表面の凹凸は掌で撫でて感じ取るのが一番解りやすいと思います。屋根が平滑になったら雨樋を復旧し、コッテリパテを駆使して継目やネジ穴を埋めていき、さらにサンダーをかけて次工程の防水加工に備えます。
画像処理して屋根が完成したようにイタズラ     ポールとライトはボール紙製
 杉板を途中まで貼った段階でとてもいいお天気の日があったので、撮影した写真をパソコンで加工してあたかも完成した屋根にポールやヘッドライトが取り付けられているように見せかける悪戯をしました。何も知らない友人に「電車が完成したよ」とメールを送ったら「おめでとう」と祝福してくれました。


2021/04/25

車体の塗装

  屋根の製作を進めながら側板と妻板の仕上げや塗装を並行したので説明が前後します。ウィンドウシル・ヘッダーや幕板の継目など隙間が目立たないようにコッテリパテで埋めました。水性なので水で溶いて刷毛で上塗りするときれいな平面になります。23日置くとパテが痩せるので削って盛ることを何回か繰り返すと継目はほとんどわからなくなります。#80で粗削りした後、#240で電動サンダー仕上げします。羽目板の部分は節の凹みなどを除いて木目を残すためにできるだけパテを塗らないようにしました。

パテ塗り仕上げ完了

 表面が平滑になったら、削りカスをきれいに拭き取り、油性ペイントを刷毛で塗ります。「ニッペホームペイント、鉄部・建物・トタン用」ですが、もちろん木部にも使用できます。実物はおそらく当時の国鉄客車や電車の標準色、ぶどう色1号だったと考えられます。ニッペの中では「チョコレート」が最もそれらしく、調合済みなので後で買い足しても色調に差が出ないだろうと考えました。屋外使用を前提とした油性ペイントはラッカーより耐候性が強く、塗膜が厚いうえに刷毛塗りでもムラが出にくいというメリットがあります。重ね塗りをすることで塗膜をさらに丈夫にしてムラをなくすことができます。超速乾とは謳っているものの、ラッカーに比べると乾きが遅いので重ね塗りには23置く必要があります。とりあえずは2回塗って、後は1年ごとくらいに塗り重ね、ある程度の塗膜になれば適宜補修するという計画でよいと思っています。

車体塗装完了
 木製車体を組み立ててから約1年無塗装状態でした。直接風雨にさらされないように、作業時と運転時以外はシートを被せていましたが、濡れるとシミができて見苦しくなります。「せっかく木造なんだからニス塗りにしたら?」と冗談で言われたこともありました。確かに函館市電の復元車はキレイな木目車体です。油性ペイントは、塗って数ヶ月くらいは水を弾きますが、その後徐々に撥水性は低下していきます。それでもクリやアカシア材は水に強いので腐るおそれはありません。むしろ濡れることでペイントそのものの色艶の劣化が進むことが心配です。

2021/04/15

屋根の製作

  デ1型電車の屋根はいわゆるダブルルーフと呼ばれるタイプで、明治から大正時代の客車や電車で一般的な構造でした。この電車が製造された1928(昭和3)頃にはシングルルーフの鋼製車体が新造ボギー車の主流になっていました。しかし地方の小私鉄では依然として廉価な小型木造車を必要としていたのでしょう。山形交通モハ100(1926年製)や羽後交通デハ1(1927年製)がダブルルーフの四輪単車で、大沼電鉄とよく似た寸法・形態でした。いずれもこの電車の屋根を製作した前年の2017年現在静態保存されていたので、実物を参考にすることができました。実はその年、鉄道研究会OB会が新潟で開催されたのに便乗して東北地方の保存電車を見学して回ったのでした。その際に大沼電鉄デ1よりも少し古い蒲原鉄道の1923年製木造ボギー車モハ1を間近で車内外から観察することができました。
山形交通モハ103            羽後交通デハ3

  蒲原鉄道モハ1        ダブルルーフの内外形状
 その時ダブルルーフが外部の明かりや空気を車内に取り入れるために巧みに工夫された構造になっていることを知りました。初めて大沼電鉄デ1型を再現すべく図面を描いた時は寸法や構造のことをあまり深く調べず、なんとなくそれらしい形になればいいくらいに考えていました。その後製造元の日本車両の図面を入手するなど詳しい寸法・形状がわかることになるのですが、時すでに遅し。着工していた屋根の製作は初期の計画図に基づいて行い、厳密に言うとスケール通りではなくなってしまいましたが、作った本人さえそんなことに気づかなかったわけですから見た目は立派な()ダブルルーフです。

日の丸自動車法勝寺線
デハ203修復工事中の屋根

後藤工業ホームページから
 電車の基本構造の項目でも書いたように屋根は車体の上に取り外し可能な形で被せるようにします。実は鹿部で走らせる電車のことを空想していた時、小さな車両の屋根から頭を出して運転するとか、屋根を跳ね上げて乗り降りするとかと考えていたことがありました。そんな概念に捕われていたのか、屋根を独立した構造物にすることを当然として計画しました。ただ、前後端部の3次元曲面をどう作るかに関しては具体的な工法を想定してはいませんでした。たまたまネットで見つけた日の丸自動車法勝寺線のデハ203修復工事の記事には、曲面仕上げされた短冊状の板がきれいに並べられている写真が載っており、16番のペーパー車体なら常套手段ですが、このサイズではかなりの難工事が予想され自信を失いかけていました。後に詳述しますが、偶然この問題を解決する画期的な手法に出会い、見事に3次元曲面を作り上げることができました。

屋根の構造図              屋根骨組み

 屋根のユニットは、10×90mmの板で作った、車体(側板と妻板で枠組みを囲ったもの)より全周に渡ってひと回り(5mm)大きい枠に、屋根板を貼り付ける骨組みを載せ、外周に雨樋をはめ込む構造にします。説明を聞くより図面と現物の写真を見る方がよくわかると思います。中央の直線部6か所の骨組みは、20mm厚の板から型紙に沿って切り出した部材を接着剤と木ねじで組み立てたものです。前後の3次元曲面部のベースは大きな角材からチェーンソーや木工ヤスリを使って削り出し、やはり断面ごとの型紙を当てながらカンナで仕上げてあります。削り過ぎた部分はパテで埋めたりもしましたが、この部分は最終的には屋根板で覆われるのであまり丁寧な仕上げは必要ありませんでした。車体より5mm出っ張った板の部分に、10mm幅の溝が切られた雨樋をはめ込みます。キッチリ仕上げられているので木槌でトントンと叩くと気持ちよく収まります。直線部は所々木ねじで固定し、妻板の曲線部は雨樋の裏側からノコギリで切れ目を入れて少しずつ曲げながら4060mmごとに木ねじで固定します。

2021/04/09

その後の進化

  電車にモーターや制御器が取り付けられて実感的な運転ができるようになると、やっぱりまたそれに夢中になって作る方の手が止まってしまいます。それでも少しずつですが、電車は進化を遂げます。

少し引き締まった感じになりました
 側板と妻板は最初ノッペラボーでしたが、幅広の側窓中央に縦桟を追加して小窓に分割し、ウィンドウシル・ヘッダー(窓上下の帯板)を取り付けて、少し引き締まった顔立ちになりました。妻板のシル・ヘッダーは裏側からノコギリで切れ目を入れて少しずつ曲げながら木ねじで固定します。クリ材は硬いので何か所かひび割れしてしまいました。ウィンドウシルは古典車輛らしく2段にしてメリハリをつけようと試作を試みました。窓桟の間にキッチリはまり込むように切れ目を入れるのは指物師の仕事みたいで難しく、技術の及ばないところはコッテリパテで埋めるという最終手段に頼らざるを得ません。目立たないところですが、側板のステップ部(戸袋の部分)と中央部の羽目板長さが異なる段差にRを付けて切り取りました。
ウィンドウシルの構造と部品図

制御器ハンドル
 制御器は「起動」「運転」の2段だったところ、日本橋のパーツ屋で買って来たロータリスイッチに交換して「起動」「加速」「運転」の3段になり加速がスムーズになりました。それに伴って電流の変動が小さくなり、無理なノッチ進段でスリップすることもなくなりました。スイッチのツマミでは味気がないので、マスコン風の木製ハンドルを金色(真鍮色)に塗装したものを接着し、雰囲気を盛り上げました。

バッテリーユニット



 バッテリーは最終的に8ユニット直列とし、定格96Vで使用することにしました。満充電だと110V以上になります。電圧が70Vまで低下すると充電済のものと総入れ替えします。一個ずつ扱うのは煩わしいうえに断線・ショートの恐れもあるので、8個のユニットが収まる箱を作って車内に置いておくことにしました。それでも安定がイマイチよろしくないのでもう少し取り扱いやすいものに改良しようと考えています。

 無蓋車を牽引するために連結器を取り付けました。実物は自動連結器ですが、模型の電車で編成物の中間部に使用されるドローバータイプにしました。電車側は端梁にボルトを通して首を振るように取付け、無蓋車のピンにドローバーの穴を引っ掛けるようにしてあります。ドローバーという言葉は昔から聞いたことがありましたが、これを作って初めて語源がおそらく”Draw bar”「牽引棒」だということに気付きました。路面電車が故障した際に救援用電車で牽引するために、両端に穴の空いた棒を差し込んで連結していたことを思い出しました。いずれ鹿部電鉄の車両には見た目も本格的な連結器を装備したいと思っています。実物同様の鋳鋼製というわけにはいきませんが、ナックルが動いて連結・開放ができたら楽しいだろうなぁと考え、各地で保存されている旧型車両の自動連結器を近くで見た時には構造や寸法をメモしたり写真に収めたりしています。

   ドローバー           いずれ自動連結器を

2021/03/24

駆動部と制御器の設計・製作

  入手した直流モーターおよび電源となるバッテリーの実験と、駆動部および制御器の設計・製作は車体製作に先行して、あるいは並行して行っていました。雨対策を考えると屋根のない車体に電装品を取り付けるわけにもいかず、車体と仮屋根の完成を待っていたわけです。

直接制御器 仙台市電保存館
 実物の路面電車の直接制御では、2個のモーターを直列接続した状態で、3段の直列抵抗と抵抗なし1段の計4段、さらにモーターを並列に接続しなおして同様の4段、合計8段のノッチが刻まれます。さらに「断」位置から逆方向に電制が68段あります。庭園鉄道では走行距離や最高速度の関係からせいぜい力行4段程度が適していると思われます。もっともモーターが1個なので直並切り替えできません。制御装置は、最終的には直接制御器の実物をスケールダウンしたものを製作したいと思っているので、とりあえずの運転試験ができるようなスイッチや計器をアルミ製のシャーシに取り付けることにしました。先にも書いたように感電防止を最優先して密封構造にします。スイッチや計器は手持ち品に加え日本橋のパーツ屋であらかじめ購入していました。設計を進めるうちに必要となった部品は通販を利用しました。僻地にいても特殊な品物が数日で手に入れられる、便利になったものです。それでいて東京や大阪に出た時のジャンク屋漁りは楽しくて、使いもしない余計なものをつい買ってしまいます。

配線作業中の制御器
 制御器には、ブレーカー、逆転スイッチ、電圧計、電流計、そして速度制御用のロータリスイッチを取り付けられるように設計しました。手持ちのロータリスイッチが「切」を含めて3ポジションなので、突入電流を抑える抵抗を直列に入れる「起動」位置と抵抗をパスする「運転」位置の2段のみとしました。30m足らずの線路を往復するだけなら当面は2段で済むだろうとの予測ですが、もし段数を増や
制御器回路図
す必要があるようなら多段のロータリスイッチを通販で購入すればいいかと楽観的に考えての判断です。抵抗器は被覆(外皮絶縁体)の種類や抵抗値、容量(W)など何種類も用意してあったのですが、この度実際に使うのはそのうちの1個だけ、とりあえず40Ωを取り付けて加速や発熱の様子を観察し、最終モデル設計の参考にします。なお電流(電圧)の制御は電機子側のみで、界磁はブレーカー投入と同時に常時電源電圧が印加されるようになっています。運転しないときは「切り忘れ注意」です。実は運転し
40Ω抵抗器
た後ブレーカーを切り忘れて一晩放置、翌朝バッテリーが完全放電して電圧0Vになっているのを発見!この時は無事復活しましたが、致命傷になる確率が高いそうなので以後ブレーカー確認は必ず
行うようにしています。

 駆動部は、40Wの交流可変速モーターを取り外して大型直流モーターが取り付けられるように、フランジの一部を削り取ったり固定用金具を製作したり、さらに中間軸のレイアウトを変更しました。軸径や軸間距離が変わるのでスプロケットやチェーンも交換して台枠に取り付けました。

制御器とブレーキ
 「起動」時の突入電流は問題なく、「運転」位置に切り替えた時の電流やショックも懸念したほどではありませんでした。もう一つわかったことがありました。電機子だけオフで界磁電流を流したまま惰行するのと、界磁もオフで惰行するのとでは減速加減に差はほとんど感じられませんでした。つまり永久磁石界磁型モーターを使用しても小さな模型のようにノッチオフしたとたんに急減速してしまう心配はないだろうということが想像できました。重い車体の慣性力は模型に比べるとはるかに大きいこと、一方で実物と比べるとほぼ一定速度で惰行が続くということはなく停止までの距離はやはり短いこと、を実感しました。
 箱型車体の運転台に乗り込んでスイッチを回すと駆動系の唸りがだんだん大きくなり、身体全体で加速感が味わえます。これはパソコンのシミュレータではなく、本当に自分が乗って電車を動かしているのです。もうトロッコ遊びも卒業です。「僕は電車の運転手だーっ!」



2021/03/20

直流モーターと電源

  結局駆動部の実証実験の結果は、もっとパワフルな直流モーターが必要との結論になりました。懲りずに秋葉原や日本橋のジャンク屋でガラクタ漁りもしましたが、希望に叶うモーター探しは徒労に終わりました。そんな折、「中古の直流直巻モーターがある」との耳より情報を得ました。仕様を聞いたところDC100V200Wとのことですが詳細は不明、必要なら送ると言ってくれました。DC100Vというのが気になりますが、日本橋のパーツ屋で整流用ブリッジダイオードを買っていたのでAC電源を利用して実験くらいはできるだろうと思い、送ってもらうことにしました。

直流モーター
 我が家には重量物の配達がよくあるのですが、その日も宅配のお兄さんが「重いですよ。」と言いながら段ボール箱を置いて行きました。すぐに箱を開けると緩衝材の中にねずみ色の物体が横たわっていました。目方は約20kg200Wの割に図体がバカでかい、「えらいモンを受け取ってしもうた。」と少し後悔しながら、さらに観察を続けました。図面が同梱されていて、寸法の他、諸元や簡単な配線接続(電線の色表示)が描いてありました。テスターを当ててショートしていないか、手で回した時に異音がしないかなどを調べたうえで、12Vの中古バッテリーに接続すると静かに回り始めました。定格100Vに対して12Vですから指で軸をつかむと止まってしまうくらいでしたが、壊れて使い物にならないわけではなさそうでした。DC100Vを得るには、AC100Vを整流してDC化するのが最も簡単で、車載するにはバッテリーのDC12VからインバーターでAC100Vに変換することができます。いずれにしてもDC化すると実効値が70Vくらいになってしまうという問題が残ります。
 直巻モーターと聞いていましたが、界磁と電機子のそれぞれに電線が接続されていて、結線の仕方で直巻あるいは分巻のいずれでも使用できそうです。図面には電圧や電流値が書いてあるのですが、条件やどの部位の数値なのか不明なのでさっぱり参考になりません。結局、テスターや電流計などをつないで測定しながらこのモーターの素性を調べたり、さらに鉄研の電気・電子工学系の後輩に相談を持ちかけたりして有用なアドバイスをもらうことができました。当初の狙い通り直巻モーターとして接続すると界磁の抵抗値が大きいために電機子の電圧・電流が制限されて充分な出力が期待できないことがわかりました。結局、界磁と電機子にそれぞれ電圧を加えて分巻モーターとして使用するのが最も効率の良い使用方法であり、そうすることによって電源電圧DC100V200W程度の出力が得られるだろう、との結論に達しました。ただ電車の動力源として適しているか、つまり直巻モーターに期待していた加速ができるかは、そこから発する音響も含めて、実際にこのモーターに適合する駆動部を設計製作して確認することにしました。

Ni-MHバッテリー
 その過程で「用済みではあるが充分使用可能なバッテリーがあるので譲ってもよい。」との申し出を受けました。そのバッテリーはニッケル水素電池というコンパクトながら高性能で、単3乾電池と同じくらいの大きさのものを10個直列接続して定格電圧が12Vとなるようにユニット化されているものでした。これを6ユニット直列接続すると72V8ユニットでは96Vとなり、定格電流は3A、突入電流は5A程度まで取れると言うことで、モーターのテスト結果に照らしても余裕をもって使用できそうであることがわかりました。バッテリーが放電したらそっくり入れ替えることができるように予備を含めて16ユニット分けてもらえることになりました。併せて専用の充電器も用意してもらい、もう感謝感激です。

 唯一の懸念は、DC96Vはもとより72Vでも危険電圧であり、直接触れることがあると生命の危機を招く恐れがあることです。端子や電線被覆のない部分の露出は絶対に許されません。メンテナンスや故障の際でも感電が起こらないような構造にしなければなりません。駆動部と制御装置の設計ではこのことを念頭に置いて作業することにしました。また1/3スケールでは架線に手が届くため架線集電はあきらめざるを得ません。

2021/03/11

木造車体の組立

  材料を使用部位ごとに並べ、凹凸のはめ込み具合を確かめ、不都合のある部分は予備材を充当して、すべての材料が揃っていることを確認してから組立を始めました。腰板の上下の裏側から補強材を木ねじで固定しますが、表側からもその都度不揃いがないかチェックしながら作業を進めます。妻板は1000Rに加工した補強材に取り付けるため、表側から木ねじを入れます。深めの皿モミにしてねじ頭を少し沈ませ、塗装前にパテで埋めて表面仕上げします。もしも妻板を分解するなら塗装とパテを剥がす必要があるということになります。ホームセンターではステンレス木ねじのサイズが限られているので、ねじ専門店の通販で適切なものを大量に取り寄せました。


組立てた側板


組立てた妻板
 組み立てられた妻板はすでに台枠に固定されている構体(枠組)の隅柱に木ねじで取り付けました。やはりネジは表側からしか入らないので、容易に取り外しができないことは容認せざるを得ません。

 一方で側板は、下部に固定した山形鋼(Lアングル)を台枠に引っ掛けて木ねじで固定し、上部は構体の側梁に表側から長めの木ねじで固定します。この部分は最上部で雨樋に隠れるので埋め込み処理は不要です。したがって狭い車内での駆動部の取り付けや修理といった作業時には側板が簡単に取り外せます。またこの後で側板に窓枠などを内側から取り付ける際も広い場所で作業することができます。

側板と妻板を車体枠組に取り付けた状態
 まだ青天井で、車体が雨で濡れないようにシートを掛けても、真ん中に水が溜まってびしょ濡れになってしまいます。そこで発泡スチロール板を買って来て仮の屋根を付けました。定尺の1.8mで少し足りない前後部分は板で塞ぎ、風が吹いた時に軽い屋根が飛んで行ってしまわないように、ガムテープで固定しました。なんか掘っ立て小屋みたいですが、少しは電車らしくなりました。仮とは言え屋根がついて車内への雨の侵入がなくなるので駆動部や制御器が取り付けられるようになりました。
スチロール製仮屋根を取り付け