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自作艇の進水式で大沼湖畔に 集まってくれたサークルの面々 |
ご近所には色々な趣味を楽しむ人達が住んでいます。車で20分ほどの七飯町(ななえちょう)に国定公園の大沼があり、やはり同じくらいの距離ですが反対方向の森町(もりまち)に、カヌー工房を構えて希望者に製作指導してくれる方がいます。秋田カヌー工房の主は元高校の教師で、ご自身の趣味が高じて周辺に百人近い門下生を数えるまでになっています。私のご近所でもカヌー作りが盛んになって、後に私自身も自作カヌーオーナーになりました。
そのカヌーは杉の薄板を型板の周りに立体的に貼り付けて流線形の船体を形成し、補強(リブ)や縁取り(ガンネル)、イス(シート)などを取り付けて製作します。まだ私が自分のカヌーを作ろうと思う前のことですが、杉板を曲げて3次元曲面を作り出すのだと聞いて秋田カヌー工房を訪ねました。実物のダブルルーフ電車の写真を見せ、製作中の電車も見てもらって、カヌーの製作技法が応用できるか聞いたところ、「それは可能です」とお墨付きを頂きました。そして数日後、杉板の束を届けに来たついでに板の曲げ方を実演手ほどきまでしてくださいました。
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両縁を凹凸加工した屋根板 |
曲げに適した道南産の杉板は厚さ5mm、幅45mm、長さ約2mで、板の長手方向の片側の縁が凸R、反対側が凹Rに仕上げられています。板同士は単なる突き合わせではなく、凹凸Rを嵌め合わせて木工用ボンドで接着することで段差なく組み合わさるワケです。杉は柔らかい材質ですが、そのまま曲げようとすると割れてしまいます。曲げるためには最低数時間、水に浸す必要があり、水より温水、さらに熱水のほうが効果は上がります。カヌーと違って曲げるのは端の方だけなので、夏なら水を入れた大きめのポリ袋等を利用して炎天下に放置することで柔らかくすることができます。水(湯)から取り出した後、曲げ癖をつけますが、単に曲げるだけではなく、捻ったりしごいたりして無理なく曲面ベースに沿うようになるまで馴染ませるのがコツです。 まず屋根骨組みの中心線に沿って前後方向に1枚だけ特殊な杉板を貼ります。この板だけ両側が凹Rに仕上げられていて、順次これを挟むように両側から凸R側の縁を接着していくことになります。 |
中央部に屋根板を貼り終えた状態 |
杉板は屋根の骨組みおよび隣り合う杉板に接着剤を塗って木ねじで固定します。この木ねじは1昼夜を経てから抜き取り、次の工程で再利用します。中央部の2次元曲面部の貼り付けには大した技術は必要ありません。前後端の3次元曲面部は先端に行くほど隣の板と干渉しないように幅を狭くする必要があります。凹R側の縁は加工しにくいので直線のまま残し、凸R側をナイフや木工用ヤスリ、サンドペーパーで整形しながら調整します。削り方が足りなくて板同士が干渉すると浮き上がって手に負えなくなりますが、スキマが空いてしまった場合はコッテリパテで埋めることができます。時間をかけて丁寧に仕上げることが肝心です。全面に杉板を貼り終えたら一旦雨樋を取り外し、#80の電動サンダーで継ぎ目の段差や部分的な膨らみを削り取り、#240で仕上げします。表面の凹凸は掌で撫でて感じ取るのが一番解りやすいと思います。屋根が平滑になったら雨樋を復旧し、コッテリパテを駆使して継目やネジ穴を埋めていき、さらにサンダーをかけて次工程の防水加工に備えます。 |
画像処理して屋根が完成したようにイタズラ ポールとライトはボール紙製 |
杉板を途中まで貼った段階でとてもいいお天気の日があったので、撮影した写真をパソコンで加工してあたかも完成した屋根にポールやヘッドライトが取り付けられているように見せかける悪戯をしました。何も知らない友人に「電車が完成したよ」とメールを送ったら「おめでとう」と祝福してくれました。
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