2021/05/13

屋根の防水加工


防水加工を待つ
 次の防水補強加工もカヌー製作技法の応用です。杉の薄板は曲面貼り付けすることである程度強くはなりますが、外力が集中して加わるようなことがあると破損が広がることが考えられ、またひび割れや接着不良によってスキマから雨水が侵入する可能性があります。カヌー製作過程では、表面にグラスクロス()を敷いた上から速硬化性の樹脂を塗布することで、強度の向上と防水性の実現を図っています。いわゆるFRP(Fiber Reinforced Plastics )と呼ばれる材質というか工法です。カヌー工房から分けていただいたグラスクロスおよび主剤と硬化剤を101に混合する2液性樹脂を使用したものの、メーカーや仕様、購入ルートは聞いていません。門下生の一人が函館の船具店からまとめて仕入れてくるので誰もその詳細を知る必要がないという謎の材料、怪しいシロモノではないようです。近年は漁船もプレジャーボートもFRP製が主流なので船具店で修理用材料として扱っているそうです。塗料専門店や場合によってはプロ向けホームセンターで扱っているかもしれません。

 屋根にFRP処理をする前に車体から屋根ユニットを取り外し、低め(60~70cm)のテーブルに載せます。車体に樹脂が付着するのを防止するためと作業の視認性をよくするためです。ダブルルーフの側面はマスキングしておきます。樹脂主剤に硬化剤を混合すると約5分でドロドロのコンニャク状になって刷毛で塗り延ばすことができなくなるので、何人かで手分けして一気に塗るか、一人で塗る場合は何分割かする必要があります。私は三分割してグラスクロスの端を指で押さえながら刷毛で樹脂を塗りましたが、幅のあるローラーで素早く塗り広げるのがいいと後で教えられました。硬化は化学反応で発熱を伴うため、紙コップの中に残った樹脂から煙が出ていました。薄く塗り広げた場合は表面から熱が発散しますが、塊の場合は蓄熱するようで手で触れないくらい熱くなっていました。この工程は写真を撮る余裕がなかったので画像がありません。

 一昼夜硬化させてから電動サンダーで表面を仕上げます。グラスクロスの重なった部分、樹脂の塗り重なった部分、樹脂が不十分でグラスクロスの織り目が露出している部分などが目立たなくなるように#80#240を使い分けます。やはり後で教えられたのですが、私はここで気を付けなかったために地獄に落ちることになりました。サンダーで削り取られたグラス繊維が飛散し、袖口や襟から作業服の中、肌着の中に微細な棘が入り込んできていたのでした。その時すぐに痒みでもあれば気を付けることができたのですが、チクチクと痛むのは作業が終わってから。それがグラスクロスのせいだとわかったのは翌朝のことでした。痛みのある場所を探しても元凶を見つけることはできず、仮に見つけたとしても幾千もの棘を抜き去ることなどできません。シャワーで洗い流しても効果はなく結局数日間、悶々とチクチク痛みに耐えるしかありませんでした。この作業の際には使い捨ての紙製ツナギ作業服を着て裾、袖、衿をガムテープで密封、ゴム手袋を着け、フードを被り、花粉対策メガネと防塵マスクをお忘れなく。

 表面はある程度滑らかに仕上がっていれば及第点です。実物の車両でもキャンバス張りの屋根はデコボコしているものです。所々に織り目が残っていてもよしとしました。ただし、屋根と雨樋の間で樹脂が充分に回っていない箇所があったのであらためて樹脂を流して防水処理をしました。ダブルルーフの縁からはみ出して固まったグラスクロスは切り落としてヤスリか電動サンダーで仕上げておきます。

 さらに数日後、お天気の良い日に油性ペイントで塗装しました。白、黒に車体のチョコレートを混合してグレーに鉄錆が重なったような色調にしました。混合度合いで色目が変わるので、多めに調合してから刷毛で塗りました。雨樋の外周は、後で車体と同じチョコレートを塗ります。

 電車の屋根の造作が想像以上に上手く行ったのに気をよくしていたところ、周囲からカヌーの製作を勧められ、カヌー工房の先生に相談したところ快く受け入れてくださいました。翌年まだ積雪が残り、朝夕は氷点下に冷え込む3月初めに製作に着手。カヌー作りは初めてながら、杉板張りもFRP作業も経験済みなのですべて順調に進み、通常よりかなり短い工期で完成に漕ぎつけることができました。平成最後の日となる430日、ご近所のカヌー仲間や工房の門下生が見守る中、ホームレイクの大沼で無事進水式を挙行することができました(前の投稿の最初の写真がその時の様子です)。
翌年の4月、完成間近のカヌーと並んだデ1

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