結局駆動部の実証実験の結果は、もっとパワフルな直流モーターが必要との結論になりました。懲りずに秋葉原や日本橋のジャンク屋でガラクタ漁りもしましたが、希望に叶うモーター探しは徒労に終わりました。そんな折、「中古の直流直巻モーターがある」との耳より情報を得ました。仕様を聞いたところDC100V、200Wとのことですが詳細は不明、必要なら送ると言ってくれました。DC100Vというのが気になりますが、日本橋のパーツ屋で整流用ブリッジダイオードを買っていたのでAC電源を利用して実験くらいはできるだろうと思い、送ってもらうことにしました。
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直流モーター |
我が家には重量物の配達がよくあるのですが、その日も宅配のお兄さんが「重いですよ。」と言いながら段ボール箱を置いて行きました。すぐに箱を開けると緩衝材の中にねずみ色の物体が横たわっていました。目方は約20kg、200Wの割に図体がバカでかい、「えらいモンを受け取ってしもうた。」と少し後悔しながら、さらに観察を続けました。図面が同梱されていて、寸法の他、諸元や簡単な配線接続(電線の色表示)が描いてありました。テスターを当ててショートしていないか、手で回した時に異音がしないかなどを調べたうえで、12Vの中古バッテリーに接続すると静かに回り始めました。定格100Vに対して12Vですから指で軸をつかむと止まってしまうくらいでしたが、壊れて使い物にならないわけではなさそうでした。DC100Vを得るには、AC100Vを整流してDC化するのが最も簡単で、車載するにはバッテリーのDC12VからインバーターでAC100Vに変換することができます。いずれにしてもDC化すると実効値が70Vくらいになってしまうという問題が残ります。
直巻モーターと聞いていましたが、界磁と電機子のそれぞれに電線が接続されていて、結線の仕方で直巻あるいは分巻のいずれでも使用できそうです。図面には電圧や電流値が書いてあるのですが、条件やどの部位の数値なのか不明なのでさっぱり参考になりません。結局、テスターや電流計などをつないで測定しながらこのモーターの素性を調べたり、さらに鉄研の電気・電子工学系の後輩に相談を持ちかけたりして有用なアドバイスをもらうことができました。当初の狙い通り直巻モーターとして接続すると界磁の抵抗値が大きいために電機子の電圧・電流が制限されて充分な出力が期待できないことがわかりました。結局、界磁と電機子にそれぞれ電圧を加えて分巻モーターとして使用するのが最も効率の良い使用方法であり、そうすることによって電源電圧DC100Vで200W程度の出力が得られるだろう、との結論に達しました。ただ電車の動力源として適しているか、つまり直巻モーターに期待していた加速ができるかは、そこから発する音響も含めて、実際にこのモーターに適合する駆動部を設計製作して確認することにしました。
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Ni-MHバッテリー |
その過程で「用済みではあるが充分使用可能なバッテリーがあるので譲ってもよい。」との申し出を受けました。そのバッテリーはニッケル水素電池というコンパクトながら高性能で、単3乾電池と同じくらいの大きさのものを10個直列接続して定格電圧が12Vとなるようにユニット化されているものでした。これを6ユニット直列接続すると72V、8ユニットでは96Vとなり、定格電流は3A、突入電流は5A程度まで取れると言うことで、モーターのテスト結果に照らしても余裕をもって使用できそうであることがわかりました。バッテリーが放電したらそっくり入れ替えることができるように予備を含めて16ユニット分けてもらえることになりました。併せて専用の充電器も用意してもらい、もう感謝感激です。
唯一の懸念は、DC96Vはもとより72Vでも危険電圧であり、直接触れることがあると生命の危機を招く恐れがあることです。端子や電線被覆のない部分の露出は絶対に許されません。メンテナンスや故障の際でも感電が起こらないような構造にしなければなりません。駆動部と制御装置の設計ではこのことを念頭に置いて作業することにしました。また1/3スケールでは架線に手が届くため架線集電はあきらめざるを得ません。
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