入手した直流モーターおよび電源となるバッテリーの実験と、駆動部および制御器の設計・製作は車体製作に先行して、あるいは並行して行っていました。雨対策を考えると屋根のない車体に電装品を取り付けるわけにもいかず、車体と仮屋根の完成を待っていたわけです。
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直接制御器 仙台市電保存館 |
実物の路面電車の直接制御では、2個のモーターを直列接続した状態で、3段の直列抵抗と抵抗なし1段の計4段、さらにモーターを並列に接続しなおして同様の4段、合計8段のノッチが刻まれます。さらに「断」位置から逆方向に電制が6~8段あります。庭園鉄道では走行距離や最高速度の関係からせいぜい力行4段程度が適していると思われます。もっともモーターが1個なので直並切り替えできません。制御装置は、最終的には直接制御器の実物をスケールダウンしたものを製作したいと思っているので、とりあえずの運転試験ができるようなスイッチや計器をアルミ製のシャーシに取り付けることにしました。先にも書いたように感電防止を最優先して密封構造にします。スイッチや計器は手持ち品に加え日本橋のパーツ屋であらかじめ購入していました。設計を進めるうちに必要となった部品は通販を利用しました。僻地にいても特殊な品物が数日で手に入れられる、便利になったものです。それでいて東京や大阪に出た時のジャンク屋漁りは楽しくて、使いもしない余計なものをつい買ってしまいます。
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配線作業中の制御器 |
制御器には、ブレーカー、逆転スイッチ、電圧計、電流計、そして速度制御用のロータリスイッチを取り付けられるように設計しました。手持ちのロータリスイッチが「切」を含めて3ポジションなので、突入電流を抑える抵抗を直列に入れる「起動」位置と抵抗をパスする「運転」位置の2段のみとしました。30m足らずの線路を往復するだけなら当面は2段で済むだろうとの予測ですが、もし段数を増や |
制御器回路図 |
す必要があるようなら多段のロータリスイッチを通販で購入すればいいかと楽観的に考えての判断です。抵抗器は被覆(外皮絶縁体)の種類や抵抗値、容量(W)など何種類も用意してあったのですが、この度実際に使うのはそのうちの1個だけ、とりあえず40Ωを取り付けて加速や発熱の様子を観察し、最終モデル設計の参考にします。なお電流(電圧)の制御は電機子側のみで、界磁はブレーカー投入と同時に常時電源電圧が印加されるようになっています。運転しないときは「切り忘れ注意」です。実は運転し |
40Ω抵抗器 |
た後ブレーカーを切り忘れて一晩放置、翌朝バッテリーが完全放電して電圧0Vになっているのを発見!この時は無事復活しましたが、致命傷になる確率が高いそうなので以後ブレーカー確認は必ず行うようにしています。 駆動部は、40Wの交流可変速モーターを取り外して大型直流モーターが取り付けられるように、フランジの一部を削り取ったり固定用金具を製作したり、さらに中間軸のレイアウトを変更しました。軸径や軸間距離が変わるのでスプロケットやチェーンも交換して台枠に取り付けました。
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制御器とブレーキ |
「起動」時の突入電流は問題なく、「運転」位置に切り替えた時の電流やショックも懸念したほどではありませんでした。もう一つわかったことがありました。電機子だけオフで界磁電流を流したまま惰行するのと、界磁もオフで惰行するのとでは減速加減に差はほとんど感じられませんでした。つまり永久磁石界磁型モーターを使用しても小さな模型のようにノッチオフしたとたんに急減速してしまう心配はないだろうということが想像できました。重い車体の慣性力は模型に比べるとはるかに大きいこと、一方で実物と比べるとほぼ一定速度で惰行が続くということはなく停止までの距離はやはり短いこと、を実感しました。 箱型車体の運転台に乗り込んでスイッチを回すと駆動系の唸りがだんだん大きくなり、身体全体で加速感が味わえます。これはパソコンのシミュレータではなく、本当に自分が乗って電車を動かしているのです。もうトロッコ遊びも卒業です。「僕は電車の運転手だーっ!」
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