ノコギリやカンナは機械ではなく、工具の部類です。DIYで木工をしている人が使う電動ドリルや電動丸鋸もやはり電動工具と呼ばれます。それでは木工を生業にしている人たちはどんな機械を使っているのでしょうか。またそれらはDIYで使う電動工具とどう違うのでしょうか?
電車の車体作りでお世話になった長沢さんの工房には家具などの木工製品製作に必要な本格的機械が複数備えられています。車体部品の製作に際し、加工に立ち会うことで今まで知らなかった木工に関する知識を得ることができました。奥の深い世界ですが、その一部を紹介します。大きく分けて「切る機械」と「削る機械」があります。切る機械はノコギリ、削る機械はカンナを、電気(AC200V)で動かして正確な加工ができるようにしてあります。
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帯鋸盤 |
まず機械には対応できるサイズに制限があるため、材料が大きい場合は最終形状に近い大きさに切り出します。例えば大きな丸太や角材から板を切出す場合に使うのが帯鋸盤です。帯状の鋸刃が上から下へと走るので、鋸刃と平行に固定された当て板に沿わせて材料を押すと板が切り出せます。誤差や仕上げ代を考慮して少し厚目にしておきます。
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手押しカンナ盤 |
帯鋸で切断した表面は比較的粗く、材料が大きい場合は平面度もあまり期待できないので、手押しカンナ盤で表面の仕上げを行います。長いベッドの中央に回転刃があり、材料をベッドに押し付けながら前方に滑らせて何回か削るうちに完全な平滑面になります。ベッドが大きい分手持ちの電動カンナより格段に精度よい平面に加工できます。次にこの加工した面をベッドと直角に調節された当て板に押し付けて側面が平滑になるまで削ると、互いに直角の2つの基準面が形成されます。
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自動カンナ盤 |
次は自動カンナ盤です。基準面を下にして材料を投入すると自動的に送り込まれ、予め設定した板厚になるように上面が回転刃で仕上げられます。削り代には限界があるので材料が厚い場合は何回かに分けて板厚設定する必要があります。これで3面の仕上げが終わることになります。最後の面もこの機械で仕上げることができますが、幅に比べて板厚が小さい場合は不安定になるので次の丸鋸盤で切ります。
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丸鋸盤 |
丸鋸盤は、大きなベッドの下から電動丸鋸の刃が出たような形で、鋳鉄製のベッドには鋸刃と平行に溝が切られています。溝の中を滑る金具と一緒に動く治具に材料を押し付けるかクランプなどで固定することで正確な幅や長さに切断ができます。丸鋸盤は切断だけではなく、ベッドから出た鋸刃の高さを小さくする(ベッドを高くする)ことで、溝やほぞの加工ができます。羽目板をつなぐ凹凸溝もこれを使って加工しました。
いずれの機械も大きな材料の加工ができるように大電力モーターを使用して刃が高速回転しています。使用に際しては重大な危険が伴うので、上手く加工する知識や技術以上に危険を回避する対策やその仕組みを理解すること、さらにそれらの点検確認に費やす時間を持つ心の余裕が必要です。
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木工用角ノミ盤 |
これ以外に角ノミ盤という便利な機械があり、ほぞ穴などの四角い穴をあけることができます。ドリルを囲むように4面のノミが取り付けられていて、ボール盤と同じようにハンドルを回すと丸い穴の周りが四角に仕上げられます。手ノミと違って互いの刃が直角に仕上げられており、必ず鉛直方向に動くので正確な角穴が加工できます。
これらの機械が手持ちの電動工具と大きく違うのは、いずれも刃面と平行あるいは直角に調整された大きなベッドあるいはガイド(当て板)が装備されていることです。これにより、まず基準面を削り出し、順次正確な平面を形成することができるわけです。ホームセンターの木材売り場でカットサービスがある場合、特に大きな(長い)面を正確に加工するにはお金を払ってでも利用する価値があると思います。
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