次は金物類です。今の時代なんでもインターネットで調べることができます。先に枕木を発注したことを書きましたが、調べると「軌框」(ききょう)という名で15インチゲージ線路の完成品が市販されていることがわかりました。発売元によって長さは1.1mとか2.75mとか、定尺(5.5m)から切り出した寸法になっています。別のサイトで価格比較もされていますが、意外にリーズナブルです。模型のお座敷運転の感覚で、庭の片隅でトロッコ遊びするのには適していると思います。またレイアウト案を描けばそれに合わせて曲げや切断もしてくれる、逆にすべてがオーダーメイドになるので図面検討が必要とも書いてあります。いずれもレールと枕木の締結はスクリューとレールクリップ(角座金)のようで、簡単確実かもしれないけれど、私は犬釘にこだわりがあったので購入に踏み切れませんでした。
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軽レールのJIS規格と 使用例(芦生森林軌道) |
スパイキ類はファックスで発注し、代金を銀行に振り込んでから一週間もしないうちに自宅に配送されて来ました。ずいぶん昔の話ですが、木曽森林鉄道の廃線跡を歩いた時に道端の一隅に錆びた細い犬釘が忘れられたように落ちているのを見つけて持ち帰ったことがありました。それ以来、兵庫県や鳥取県などの山奥で森林鉄道跡を探訪することに興味を持つようになり、朽ちた枕木に刺さったままの犬釘や土の中に埋もれたレールを見ると異様な興奮を覚えるのでした。そういう時は腰に下げて行った金鋸を使って2、30㎝の長さにレールを切出し、リュックに入れて持ち帰るのが楽しみになりました。*)
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廃線跡で草に埋もれていたレール 切って磨くと命が蘇ります |
*)法学者に確認したところ、場合によっては違法行為になるので注意。
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スパイキ、ペーシ、モール |
そんなところに大量の犬釘が届きました。錆も傷もない鉄紺色のバージンスパイキが我が物になった日の夜、密かにそれを握りしめ不気味にほくそ笑む私の姿がありました。
次の日の昼前に4tユニック車(クレーン付きトラック)が自宅の前に来たのが窓越しに見えました。荷台にはレールが積んであるのですが、大型車には不釣り合いで申し訳なさそうに一列に並べてありました。トラックが庭に入れるかと気を揉みましたが、プロドライバーは巧みなハンドルさばきで母屋の前まで進めてクレーンのフックをワイヤーにかけると20本のレール(660kg)を一気に降ろしました。大きな買い物にもかかわらず、わずか10分あまりの早業で納品され、あっけに取られている内にトラックは帰って行きました。これまた山奥で何十年も雨にさらされ泥をかぶって錆びるに任されていたものと違い、断面には鋭い角が立ったバージンレールです。「それが今、我が家の庭に横たわっている!」と考えると、まだ新しいオレンジ色の錆に薄っすら覆われたレールの踏面に思わず頬ずりしてしまいました。レールの断面を何度も眺めながら、いよいよ長年夢見て来た鉄道のオーナーになる日も近い、との思いが込み上げて来ました。