やっぱり15インチゲージには大きな壁があるとお思いの方がいらっしゃると思います。意外に誰でも楽しめる趣味だということを理解していただくためにどれくらいの費用がかかるのか紹介します。その金額を高いと感じるかどうかは人によって違うのが当然として、他のゲージの鉄道模型や他の趣味を楽しむのに必要な費用と比較していただけるように具体的な金額を示したいと思います。
前にも述べた通り、わたしは基本的に線路も車両もスクラッチビルドで製作しています。部品、部材として購入した際に支払った金額(以下消費税抜き)を(実額)と表示します。併せて、組立品として販売されている場合はわかる範囲でカタログ価格(カタログ)と、問い合わせて見積を取った場合の金額(見積)を参考値として記載します。
1.レール
レールは定尺(販売時の材料の長さ)が5.5mあるので宅配便はもちろん混載便でも扱ってもらえず、仕立便の費用が別途必要になります。購入金額にはそれが転嫁されるので大量に仕入れるほど安くなります。
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6kgレール |
6kg軽レール定尺5.5m1本の単価は2014年5月時点で9800円でした。当時20本分をまとめて仕入れた場合の運賃を含めた購入金額は1本13300円(実額)で、犬釘(@70)、ペーシ/モール(継ぎ目板@550)、枕木(@240)を加えて敷設線路1m当たりでは約6800円となりました。仕入れ数量、枕木の本数、締結方法(犬釘/スクリュー)などで変わります。
参考までにモデルニクスの直線軌框は1m単価12100円(カタログ)です。レールにメッキが施されていたり、枕木が耐候性特殊強化樹脂製であったりということで単純な比較はできません。せんろ商会では長さ1.1mの軌框を販売していますが、価格は要問合せとのことです。多少割高になるかもしれないけれど、最初は少量対応してくれるメーカーの軌框も一つの選択肢になるかと思います。
2.車輪
レールに次いで金額が張るのは車輪です。素材もさることながら車軸との正確な嵌め合わせのために旋盤加工が必要で鉄工所に発注することになります。車輪を指定して加工工場から発注してもらうのが手間もコストも省けて最良の方法だと思います。
φ230チルド車輪軸穴加工(精度H7)4個の金額(2014年5月)は、
A社(見積) 75000円(車輪@7500+加工@11250 送料別途)
B社(見積) 59520円(車輪+加工 内訳不明 送料別途)
C社(実額) 46100円(車輪@7650+加工@3875 引取り)
と幅がありました。
最終的にC社で加工した車輪に車軸(φ35丸鋼@2882)、軸受(ピローブロック@1648)を加えて2軸4輪(1両分)の合計(実額)は約58500円となりました。
一方、D社で車輪/車軸/軸受のセットを販売していて、ほぼ同様の仕様で(見積)68000円(送料別途)でした。
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軸穴加工済み車輪素材 と 軸受/車軸/車輪組立品 |
3.初期費用まとめ
トロッコを走らせるためにはレールと車輪の他に、台枠や車体を形造る木材やそれを加工するための工具が必要になります。電動丸鋸や電動ドリル、カンナやノミ、ペンチにスパナにドライバー等々。それらが手元になくて新たに購入することになってもDIYでの利用価値が高いので専用の出費と考えないほうがよいでしょう。その先はこの趣味にのめり込んでから揃えてもいいと思います。
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5.5mの線路とトロッコ(貨車台枠) 夢の第1歩にこぼれる笑み |
15インチゲージを始めるにあたって最小限必要なものはレール5m程とトロッコ1台とすると、木材やネジ、塗料などの小物を含めて10万円前後で自家用鉄道開業可能ということになります。世の中の一般的な遊びと比べて決して贅沢な道楽ではないと思うのですがどうでしょうか?将来も続ける強い決意があるなら50m分あるいは100m分のレールをまとめて購入しておくことで後々の出費をする必要がなく、トータルでコストを抑えることができます。コツコツと線路を延ばしたり、車両を改良、増備したり、駅や建物や信号といったシーナリーを建設するようになると、趣味としての方向性が定まる段階になります。工夫して費用をかけずに夢を広げることもできるし、スケールの車体に本格的なメカニズムやエレクトロニクスを導入して最先端の鉄道を自宅で再現することも不可能ではありません。15インチゲージ趣味を楽しむことが日常生活の一部になって動力車増備、線路規模拡大を計画するようになると、費用のことはあまり気にならなくなると思います。むしろ家族への感謝や思いやりを忘れず、理解を得られるように努力することが大切になってきます。 4.アドバイス
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森林鉄道の運材車 |
私は電車とそれに牽引される貨車の製作を前提にフルサイズの車輪を購入しましたが、トロッコや森林鉄道の運材台車あるいはスケールに拘らないのであれば小径の車輪(φ100~150)が手頃で、価格も加工コストも半分以下になると想像します。レールは外観に目をつぶってコストを抑えるなら角型鋼管という手があります。ホームセンターで取り寄せてもらって手頃な長さに切断して持ち帰ることもできるでしょう。枕木との固定方法など解決すべき問題がありますが、将来の目標は別にして「とりあえずトロッコ」という最初の課題を実現する近道にはなるかと思います。 5.5mのレールは3分割すると約1.8mになり乗用車の車内に積むことができ、車内が無理でもルーフキャリアに載せることは可能です。どうしても自宅に線路を敷くスペースがない場合、空地や河川敷など他者の迷惑にならない場所でトロッコ遊びが楽しめないか考えてみてはどうでしょうか。
体験からのアドバイスですが、コストを抑えるために木製の線路や車輪という発想はお薦めしません。鉄の線路の上を鉄の車輪で転がってこそ、ニュートンの慣性の法則が体感できるからです。