多趣味の私は恥ずかしながら鉄一辺倒ではありません。神戸の自宅の近くに六甲山人工スキー場があったので週末ナイタースキーで足を磨き、社会人になってからは休暇を取って信州などへ遠征していました。その後ゲレンデで知り合った女性と家庭を築いて、現在に至っています。
ベルナーオーバーラント鉄道(BOB)ABDeh4/4 初めて乗った窓が大きくて明るい登山電車 画像はすべてWikipediaより |
ラウターブルンネンでウェンゲルンアルプ鉄道(WAB)に乗り換え、最後はクライネシャイデックからユングフラウ鉄道(JB)でヨーロッパ最高地駅(3454m)に至りました。これら3つの鉄道はラックレールの方式が異なる他、WABだけが800mmゲージ、JBは3相交流電化(架線2本)、BOBは牽引運転でWAB、JBは山麓側動力車の固定編成であるなど、ことごとく個性を主張していました。共通しているのは、内装が阪急電車の上を行く気品に溢れた木目調で外観も大変美しいことです。その時以来私はスイス鉄道のファンになってしまいました。いっぱい写真を撮りましたが、ネガもプリントも今は手元にありません。
仕事で上京した時は必ず洋書店に寄って、スイスの美しい景観の中を走る鉄道写真集や車両図面の載ったガイド本、月刊誌とそのバックナンバー、地図やポスターなどを買い集めました。スイスには鉄道ファンが多いようで、国私鉄の実物から模型まで結構マニアックな書籍が揃っています。それらはドイツ語で書かれていたので、学生時代に使っていた辞書と首っ引きで読みふけりましたが、慣れるまではサッパリ意味が解らず不勉強を後悔しました。挙句は通信講座やドイツ語教室に通うなど費用をかけて自己研鑽に励んだ結果、雑誌に何が書いてあるかぐらいは解るようになりました(専門用語さえ理解すればなんとかなります)。日常会話も少しはできるようになりましたが、ほとんどのスイス人やドイツ人は英語を喋るのでこちらがカタコトでためらっていると英語会話になってしまい、本場ではほとんど役に立ちませんでした。
マルティニシャトラール鉄道(MC) 右側の電車BDeh 4/4は松本電鉄のモハ10型です |
レーティッシュ鉄道(RhB)のABe4/4 京浜急行旧500型の正面貫通車です |
そんな風にユニークだったスイスの鉄道車両のデザインが、現代的というのかどれも似たような丸っこい流線形になり、部分低床化の影響で窓や扉の不連続配置が強いられるなど、かつて私の心を揺さぶった憧れのスタイルからどんどん乖離していきました。月刊雑誌の定期購読は打ち切り、もっぱら蔵書に目を通す程度になりますが、ときめくようなニュースがなければそんな興味も失せるもので、いつの頃からか本棚は埃をかぶったまま眠りに就いたようになっていました。
最近のことですが、YouTubeに忘れかけていた懐かしい電車の走行シーンが映っているのを見つけました。古いモノを大切にするお国柄があのロッドを揺らしながら走る片ボギー車の動態復元を成し遂げたとのこと。大好きだった電車が時の流れの中で淘汰されてしまうことを懸念していたのでとても嬉しく、現地を訪れることは多分もうないと思いながらも安堵の念を覚えました。
アルトシュテッテンガイス鉄道(AG)の片ボギー電車CFe3/3 1948年頃と近年復元後の姿 1911年製木造車で、ピニオン駆動機構は取り外されているが修復が予定されているらしい |
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