2021/11/01

分岐器を作る 第2編

  トングレールはクリアラッカーのおかげでガレージでの冬眠から覚めてもその輝きを失うことはありませんでした。続いて色々な工程が待っています。

 (2)フログ

 近年の実物の鉄道ではフログとウィングレールは一体鋳造で成形した部材が使われていますが、例によってレールを削って製作します。レールの斜めカットはトングレールに比べて角度が少し大きいのでその分楽ですが、金鋸の弦が邪魔して一気に切り落とせない状況は変わりません。分岐角度(14°)で切ったレールを少しずらして継ぐ方法と半分の角度で切って重ね合わせる方法があり、後者にしてチョッと工夫をしました。

ずらし継ぎ         合わせ継ぎ         挟み継ぎ  
                                      (独断の呼び方です)

組立済フログ(仕上げ前)
 その理由は単純に斜めカットすると先端部は腹の部分がなくなってしまうからです。トングレールと同様に予め曲げておいて頭部だけを削る方法もありますが、斜めカットしても平板を両側から挟むとなくなった腹を簡単に復元することができることを思いつきました。よく見える所ではないし、腹がなくなっていても別にレールが荷重に耐えかねて変形するおそれもありません。これも偏執モデラ―のこだわりの一つです。レールの高さ(50.8mm)と同じ幅にt4.5の平鋼を切出し、2本のフログレールに挟んでクランプで固定しておいて腹の残っている部分に2ヶ所のφ4通し穴をあけ、片方のレールにはM5のねじ加工をしたうえで残りのレールと平鋼の穴をφ6に広げます。これらの間に接着剤を塗布してボルトで締め上げ、接着剤が硬化してからヤスリで余分の角を落とすとフログが完成します。

(3)リードレールとウィングレール

 リード部とウィング部は別々に切出してから溶接でつなぐのが真っ当な方法ですが、切り込みを入れて曲げ、腹部か底部に当て板をねじ止めすれば溶接する必要がなくなると考え、切り離さずに一体で作り始めました。リードレールの曲線側は既設レールの曲率に合わせて予め曲げておきました。リードレール/ウィングレールの折れ曲がり箇所でレール底部の片側(内側)に約5mmを残して分岐角度と同じ14°のV字型の切欠きを入れ、ウィング側を万力に挟んで「エイッ」と力を入れるとすんなり曲がりました。しかし、想定とは違って切欠きの形状が適切でなかったのかレール同士が密着せず、見事に失敗。得意満面のVサインとはならず、念入りな仕上げも徒労に終わりました。

     当初の目論見はこんな感じ            実際には断面が密着せず

レールの底にあけたネジ穴
 結局両者を切り離してから当て板で接合することにしました。t4.5×70mm×100mmの平鋼板に16ヶ所の皿モミ穴をあけた当て板を、裏返しで正確に置いた4本のリード・ウィングレールに重ねて穴位置を写し、レールの底部に下穴をあけてからM5のねじを切ります。この作業は16個のネジ穴位置がすべて正確に加工されなければネジが入らなかったり、入ってもレール同士の関係が設計通りにならなかったりします。案の定一部の皿モミ穴をヤスリで広げる羽目になりました。少し厄介でした。

 ウィング部の先端のフランジガイドも同様のやり方でレールを折り曲げるのが本来ですが、手抜きをして頭部のみを45°にカットしてそれに代えてあります。後述のガードレールも手抜きします。

タイバー
 4本のレールが繋がったとはいえリードレールの長さは1.4m、端部に力が加わるとモーメントになって付け根のM5ネジに大きな負担がかかり、極端な場合は剪断されてしまう可能性もあります。そこで両リードレールをタイバーで結合して剛性を高めてあります。実は、この加工は前述の当て板を取り付ける前に済ませてあり、当て板のネジ穴の位置決めの精度を上げるための一助にもしてありました。タイバーはφ10の鋼棒の両端にM10の雄ネジ加工をしたもので、リードレールの腹にあけたφ12の穴の両側からナットで締め付けてあり、曲線側はタイバーとレールが直交しないのでテーパーワッシャを介してあります。

 結果的に当て板とタイバーの組み合わせでリードレールとウィングレールは強固に一体化することが可能になり、溶接をしないで分岐器を製作するという秘策はチョッと形を変えて実現することができました。もちろんそれは同時に不安でもあったわけで、大きな達成感を味わうことになりました。

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