2021/11/22

分岐器を作る 第5編

 (8)試運転

 レールが繋がれば一刻も早く運転したいものです。ただ、水平確認しただけでいきなり電車を走らせて万が一脱線でもすると大変です。まずは無蓋車を手押しでゆっくり通過させます。最大の不安はフログでの脱輪です。分岐角度が小さいので動線に沿ってウィングレールとフログの間に大きなギャップがあり、乗り移る際に車輪が落ち込んでしまわないか、落ち込まないまでも衝撃や乗り心地への影響が大きくならないか心配していたのですが、結果的にはそれは杞憂でした。車輪の踏面の幅が想像以上に広いのでスムーズにウィングレールからフログへ乗り移っている、つまり一時的には両方のレールに乗っている状況を経て通過していることがわかりました。もう一つの懸念は異線進入です。この時点ではまだガードレールを取り付けていないので、フランジがフログの先端にぶつかったりそのままあらぬ方向に進んでしまったりしないかを確認しました。こちらも結果は上々で、直線側、曲線側とも普通に無蓋車を押して走らせる限り異線進入は起こりませんでした。ただこの部分を通過中に車体を横方向に押すと脱線が起こりえることを確認しました。結論としてガードレールは必要です。ただ常時ガードレールでフランジの内側を案内するのではなく、異常な外圧が加わっても車輪がフログ部で異線進入を起こさない程度の位置に設置することが望ましいと判断しました。


(9)ガードレール

 路面電車では溝付きレールでフランジを案内することによって決まった軌跡から逸脱せずに運転されていることを書きました(2021/5/22投稿「鉄道用車輪の話」)。鹿部電鉄では溝付きレールは使用せず、基本的にガードレールは異常時の脱線防止策として機能するようにします。高速鉄道と同じ考えです(エヘン!)

 そこでガードレールは、①通常の運転時には車輪と接触せず、②外部から力が加わって押されても異線進入しないようにフランジ内側を案内し、③外力が加わった状態でガードレール部に進入しても衝撃が生じない、このような形状と位置に設置することにします。具体的にどのような形状にするのがよいか、木製(枕木)のガードレールを設置して検討することにしました。ちょうど良さそうに反りが出て曲がった枕木があったので曲線側に置いて上記の①から③の条件を満足する最適な寸法を測定し、最終的にレールを曲げてガードレールを製作、設置します。ただしレールベンダーではスパンの関係でどんな形状にでも曲げられるわけではないので、実際に試行錯誤しながら設計していきます。

 通常ガードレールの両端は線路の内側へ曲げてあります。ウィングレールの先端も同じ形状になっていて、その目的は脱線復帰機能を持たせるためです。実際に後部車両が脱線したまま走行していた貨物列車が分岐通過した際に復線して何事もなかったかのように運転を続けていた事実があるようです。旅客や車掌の乗った列車ではこんなことはあり得ませんし、鹿部電鉄でも脱線復帰は期待しないものの、見た目はリアルに再現したい気持ちはあります。前述の通りウィングレールの曲げが思い通りに行かなかったのでどうしたものか悩みながら、その先端は頭部を斜めカットすることでお茶を濁しているのが現状です。実はこれと同じ形状のガードレールをJRの分岐器観察中に見つけたのですが、昭和の始めにこのようなものがあったかどうかはわかりません。

JRの先端カットガードレールと鹿部電鉄同ウィングレール  

 ところが昔の絵葉書と思われる大沼電鉄鹿部駅の写真を拡大してみると、ウィングレールもガードレールも先端はカットではなく曲げてあるようです。

鹿部駅(時期不詳)

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