2021/11/06

分岐器を作る 第3編

  レールの斜め切りが終わってホッとしました。ここまで来たらもう少しと思っていましたが、どっこいすることは次々と出てきます。

(4)その他のレールと枕木

曲率を比較しながら曲げます
 分岐器が完成したら既設の線路と置き換える計画です。だから分岐の曲線側の基本レールもリードレール、トングレール同様既設線路の上において同じ曲率になるように比較しながらレールベンダーで曲げます。既設レールを外して使うと理想的ではありますが、工事が終わるまで運転ができなくなる期間が長くなって買い物やカヌーの運搬など色々と問題があります。一方左右で長さの違うレールを思い通りに同じ曲率に曲げるのは難しく、詳しくは後述しますが、完成した分岐器が前後の既設線路の間にピッタリと納まらなくなるという事態を招いてしまいました。

仮置きの状況
 枕木はクリ材の□70×2000角材から、予め設計図に書き込んでいた寸法に切り出し、防腐剤を2度塗りして乾燥します。トングレールがスライドする部分の枕木は約4mm凹ませてから6個の研磨した平鋼板を皿ネジで取り付けておきます。またウィングレールの当て板が取り付けられる部分も凹ませておきます。これらを図面にもとづいて広い場所に並べ、レールを置いて左右の曲率やゲージを確かめます。同じように作ったはずでも並べてみると微妙な差があり、またまたレールベンダーで更に曲げたり戻したりして修正します。次にトングレールが動作する部分の基本レール内側は底部を切り欠いて密着するようにしておきます。レールの継目に食い違いがないか隙間が適切かなども点検し、必要に応じて置き直したり削ったりします。問題がなくなったら枕木にレールと犬釘の位置をマジックで描き、レール側にも枕木の位置を描き入れます。一旦レールをどけて枕木に描かれたマークに犬釘の下穴をあけておきます。こうすることで敷設予定地にあらためて枕木とレールを高い再現性で置き直すことができるわけです。

(5)転轍機構

 16番模型の場合、両トングレールは付け根部と先端部で真鍮板がはんだ付けされて四角の枠形となり、それぞれの真鍮板の中央にピン(ビスまたはハトメ)を取り付け、片方は回転中心、他方は左右に動かすことで分岐器の切り替えができるようになっています。一方実物の分岐器では、左右のトングレールはいわゆるリンク結合になっていて平行四辺形が歪むように動きます。鹿部電鉄ではこれもこだわって実物に倣うことにしました。分岐器メーカーのウェブサイトを見ると、近年の高速鉄道では可動部のレールの倒れやゲージの狂い、衝撃などを防止する目的で色々と複雑な仕組みが導入されていて、両トングレールも剛結合されているようです。しかし昭和の地方私鉄や森林鉄道、軽便鉄道の分岐器を観察してきた限りにおいて、それらはこの鹿部電鉄方式と大差ない機構になっています。
鹿部電鉄のトングレール結合         木曽森林鉄道の分岐器 

トングレールの継ぎ目
 リードレールとトングレールは継ぎ目板で柔結合します。一般の継ぎ目板は長穴になっていてレールの伸縮や誤差を吸収できるようになっています。一方この継ぎ目板は長手方向には自由度を持たせず、トングレールが首を振れるように少しばかり開き気味にしてあります。リードレールのボルト・ナットは強く締め上げ、トングレールの付け根はしっかり保持されながら継ぎ目板の他端側はレールとクリアランスが保てるようにボルトが取り付けられていますがダブルナットで緩みを防ぐ対処がしてあります。

 トングレールの先端は上述の通り左右がピンで結合されてリンクを形成しています。両者を結合している棒(バー)の正式な名称を調べたのですが的確な答えを見つけることができませんでした。ここでは転轍バーと呼ぶことにします。そしてこれと繋がって外部の転轍機(テコ)の動きを伝える部材を転轍棒と呼びます。転轍バーはすべて山形鋼や平鋼から金鋸で切り出してヤスリで仕上げた部品で構成されています。点数はありますが、レールを切ったり削ったりした後だったので大した苦労とは思いませんでした。ピンの役目を果たすボルトはやはりダブルナットで緩まないように締め付けてクリアランスを保ってあります。部品同士の結合に使用するネジは六角頭のボルトにしてあります。なぜならキャップスクリューと呼ばれる六角穴付きボルトやプラスネジが普及したのは戦後のことで、大沼電鉄が建設された昭和初期には六角頭とマイナス溝のネジしかなかったからです。転轍バーの裏側中央にはリンクボールを取り付け、転轍棒と連結できるようにします。見えないところでは時代を無視した便利なものを使います。今回はまだダルマ転轍器(テコ)が設計中で間に合わないので当面はレールを直接手で動かします。

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