2021/11/15

分岐器を作る 第4編

 仮組みで問題のないことを確認したらいよいよ分岐器の敷設工事に取りかかりますが、その前に分岐器製作で工夫したことについてお話ししておきます。

 (6)レール穴あけ治具

 分岐器を製作する場合、レールを短く切ったり、組立後に左右の長さを調整したりという必要が出てきます。切ったら繋がなくてはならないので継ぎ目板(ペーシ)を取り付けるための穴あけをしなければなりません。レール端部の穴径と位置はJIS規格E1103で決められています。元がインチ系の寸法なので小数点付きの細かい数字になっていますが、バカ穴でいいので神経質になる必要はありません。とは言うものの手持ちの電動ドリルで大径の穴あけをしようとするとレールは表面硬化していることもあって刃先が走って狙い通りの位置に加工できません。そこで正確な穴あけ加工ができるように簡単な治具を作りました。t4.5×32の帯鋼から図のようなガイド板を作ります。このガイドは下穴をあけるためのものでφ5です。ガイドとレール端部を面一にしてクランプで固定してから小型の電動ドリルで下穴を加工します。その穴をガイドにしてφ12.7(φ12~φ13で可)のドリルで正規の径に広げ、丸ヤスリでバリ取りをすれば加工完了です。ステップドリルとかタケノコドリルと呼ばれるものを使うとバリ取りする必要もなく小型の電動ドリルで最後まで加
工できます。

レール端部の継目板用穴 JIS規格と穴あけ治具
治具をクランプし     φ5の下穴をあけ    φ12.7に拡大する
↖ステップドリルを使うと便利

(7) 分岐器敷設工事

 さて、分岐器を計画していた場所つまりS字カーブの東側の線路の位置に敷設します。一旦5.5m分の線路を取り外し、道床(砂利)を撤去して路盤(地面)を現状よりさらに掘り込みます。これは既設部分の枕木の厚さが50mmであったのに対して分岐器部分は70mmとなるためです。さらに線路を取り外してわかったことですが、枕木下の砂利厚さが薄いためか水はけが悪く一部の枕木が腐っていたことからその対策として砂利層を厚くしようと考えたことにもよります。

 線路撤去は、犬釘抜去、レール移動、枕木掘り出し、砂利除去、路盤掘り込みの順に行います。犬釘は最初に打ち込んでから7年が経っていました。ついこの間のように思っていましたが、そんな年月が流れていたのかと思いながら一抹の不安を抱えていました。202011月投稿「最初の犬釘」で書いたように「何年か経って釘が錆びた時も同じような力加減で抜くことができるかは確かめる術がない。」というものです。結論から言うと、幾分は抜き難かったけれど犬釘が錆びついてビクとも動かないということはありませんでした。硬いクリ材の中で木と鉄が密着していたため酸欠状態で錆の発生が抑えられていたのでしょう。一方で継ぎ目のボルト(モール)は雨ざらしのもと錆が進行して固着し、取り外しに苦労しました。前述のように枕木の一部は腐敗していました。敷設時に防腐剤の塗布をしていてもいつまでその効力が持続するかは疑問です。砂利の厚さを増すことに加えてなんらかの対策が今後線路延長時の検討課題となりました。

下半分が腐った枕木


 既設線路から除去した砂利には、規格外の大石小石や異質な石(火山岩)、木の枝、根、実(クリのイガ)、キノコや昆虫の残骸など色々な物が混入しているので、ふるい分けたうえで洗浄して再利用します。7年のうちに散乱して量も減っているし、道床が厚くなる分も補充しなければなりません。

路盤の掘り込み
 既設線路の撤去に続いてエンドレスに繋がる線路の路盤の掘り込みを行います。久しぶりに連通管式水準器が復活して、分岐部のすべての箇所で水平が出ていることを確認しながら掘ったり埋め戻したりします。もともと地面が傾斜しているのでエンドレス側に進むにつれて掘り込みが浅くなっていきます。錯覚しがちなので目視だけでの作業は禁物です。次に砂利を入れ枕木を並べた上にレールを置くのですが、ここで大問題発生。曲線側(既設側)の基本レールが前後の既設線路の間に入りません。叩いても捩っても収まりません。5.5mでわずか0.5mm程、全長の1万分の1ですが新線の曲率が甘かったのでしょう。無理に入れて継目のスキマがなくなったり、夏の熱膨張で線路が曲がったりという副反応も心配です。思い切って3mmほど切り落とすことにしました。レールを切るのは慣れているので30分もあれば仕事は終わる、と思っていました。実はこれが落とし穴でそれだけではなく、継ぎ目板(ペーシ)とレール端の位置がずれるために穴を広げなければならず、電動工具がないのでヤスリを使う手仕事になってしまいました。

 仮組みの際に描き入れたマークを頼りに互いの位置を確定していき、必要に応じてスクリューで仮固定しておきます。ゲージを確認しながら基本レールの端から順番に犬釘を打っていき、フログ、リードレールを固定、トングレールとその関連部品を結合します。犬釘を打ち込むと砂利の中に枕木が沈み込み、別の場所でレールが浮き上がることになるので、その都度レール上面の水平を確かめます。沈んでいる場合はL型バールで枕木をもち上げながら別の棒で砂利をザクザクと押し込む、いわゆるマルチプルタイタンパーの作業を人力でやる感じです(一人でやるのでシングルタイタンパーです)。この段階で枕木の間に砂利が入っていると浮いた枕木を沈めるのがいささか厄介になるので、全部の結合が終わってから砂利を充填します。7年前に初めて犬釘を打った時と比べると老齢化で腰椎が硬くなり、立ち屈みが大儀、根気が続かないだけでなく、トイレも近くなって頻繁に作業中断するなど能率の大幅低下が否めない状況になっています。

佳境に入った分岐器敷設工事

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