2020/12/02

無蓋車の製作

   車輪、車軸、軸受が揃ったところでこれらを取り付け組み立てる台枠の製作にかかります。材料は枕木を仕入れた時に一緒にウッドデッキ用に発注したクリの70㎜角材です。簡単に言えば「目」の字形に組んだ枠に軸受を取り付けるだけでトロッコ完成です。サスペンションを入れることで線路の歪みに対して脱線しにくくなるうえに乗り心地や騒音も改善されるのですが、一刻も早く走らせたい一念で板バネに見せかけた台形のスペーサーにピローブロックを取り付けることにしました。時間的余裕ができたらバネか防振ゴムに交換して効果を確認しようと思いながらそのままになっています。

無蓋車台枠の図面

 台枠の製作は散々でした。木材の切断に手持ちの丸鋸を用いたことで切断面の直角が正確ではなく、材料そのものの歪みもあって図面通りに組み上がらず、分解しては削り直しを繰り返しました。一方で車輪、車軸、軸受は精密加工のおかげでミクロン単位の嵌め合わせも驚くほどスムーズに行きました。なんとか4輪が線路の上を転がるようになった時は思わず笑みがこぼれました。さっそくトロッコに乗って5mばかりの線路を何往復したことか。はじめてレールが届いた日、枕木にレールを載せて犬釘を打った日、そしてとうとうトロッコを走らせることが出来た日、夢に向かって確実に歩を進めている感激に酔いしれました。

木製台枠

軸受、車軸、車輪の組付作業
 車両もこれだけ大きいと1/801/150の模型とは全然違う動きをします。小さな模型を動かす時、パワーパック(コントローラー)の電圧を上げていくと急に走り出し、電圧を下げると最後はガクンと止まります。これは車輪や歯車の抵抗になる静摩擦力が動摩擦力や慣性力に比べて大きいために起こる現象で、小さな(軽い)模型の宿命です。こんなトロッコでも人が乗ると重量が100kg近くある一方、ボールベアリングや鉄の車輪の転がり摩擦が大変小さいため指一本の力で押すだけで静かに動き出し、一旦動くとその後はいつまでも転がって行くのです。これぞニュートンの慣性の法則。実物の鉄道車両に近い動きが体感できるのも15インチゲージならではの特長です。



無蓋車計画図

側板は未装着
 トロッコ遊びに明け暮れる日が暫く続きました。それはそれで楽しいことなのですが、いつまでもトロッコではなく無蓋貨車にグレードアップを図らなければ進歩がありません。実物の写真を参考に何枚かの図面を描き、できるだけ実物のイメージに近い形態に決めました。前後の妻板は手押しの力に耐えられるよう、台枠との結合部に剛性を確保すべくクリ材をステンレス製のスクリューで固定しました。一方床板は、旧ウッドデッキを解体した時の廃材から状態の良い部分を切出した38㎜厚のSPF(ツーバイフォー材)です。雨ざらしにすると寿命は56年ですが、傷んだら交換するつもりで加工性とコストを優先しました。そのため接着剤は一切使用せず、スクリューを緩めれば解体が可能なようにしてあります。まだ側板はありませんが、台枠だけのトロッコよりはそれなりに鉄道車両っぽくなりました。
冬ごもり
 この時点で201410月末です。北海道に移住して来ておよそ半年が経過していました。考えてみればその間、何もないところに線路を敷き、手押しながら無蓋車が走るようになったわけで、かつて経験したことのないような感動を何度も味わいました。それ以外にもウッドデッキや机の製作など密度の濃いいろいろなDIYを体験しました。真夏も屋外で作業が続けられるのは北海道ならではの特権でしょう。ただ11月の声を聞いて裏の北海道駒ケ岳(1131)が雪化粧するような日にはめっきり気温も下がり、指がかじかんで外では仕事にならないこともあります。庭の植栽の雪囲いのついでに無蓋車をブルーシートで包み、初めての冬支度をしました。とりあえず翌年の雪融けまで運休です。
 義父母と家内をフェリーで自宅に送り届け、私一人だけ舞い戻って越冬することにしました。北海道の冬と言っても太平洋に面した道南地方の気候はそれほど厳しいものではなく、積雪量や冷え込みも想像より穏やかです。住宅の断熱構造や暖房設備により、室内温度はほぼ20℃で一定に保たれているため快適な生活を送ることが出来る一方で、適度の降雪があってゲレンデスキーや歩くスキーが楽しめ、屋内コートでテニスや卓球などができるので運動不足の心配もありません。トロッコ遊びはできないけれど、ご近所との交流など満ち足りて心豊かな冬を過ごすことが出来ました。

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