2020/12/17

レールを曲げる

  スキー場も3月には雪質が不安定になり、4月になると庭の雪がほとんどなくなって、お天気の良い日には屋外で春を迎える作業が始まります。昨年やり残したウッドデッキの仕上げを急がなければなりません。2015年の目標として、5m余りの線路を表の道路まで延長してトータルで30mにすることにしました。

杭の打ってある所が線路延長予定地

レールベンダー

 線路の予定地には樹木が立ちはだかっているので、S字カーブで避けなければなりません。購入して庭に置いてあったレールを持ち上げてみる(33kg)と意外にユラユラと撓り、地面に置くとまた直線に戻るので、これはいわゆる弾性変形です。これくらいの曲率だと軽く撓ませた状態で犬釘を打っていくことで曲線路を作れます。大概実物の鉄道ではそうやっているのだと思います。一方で、急曲線(概ね半径20m以下)は予めレールを所定のカーブに塑性変形させてから枕木に固定する必要があります。森林鉄道や軽便鉄道では現場でレールを曲げる工具を使うそうで、博物館や写真で見たことがあります。

2個の庭石
 庭の片隅に高さが50cmくらいの石が2個、やはり50cmくらい離れて置かれていました。義父が家を新築した時に、アクセントにしようと造園店から購入して殺風景な庭に置いたものだそうです。結構な重量があって、押しても引いてもビクとも動きません。この2個の石にレールの端をかませて他端を押すか、ロープを掛けて引っ張ると曲がりそうな気がしました。果たして結果は? あのどっしり構えた石が動いてしまってレールは全然曲がりませんでした。小学校の理科の教科書に「テコの原理を使って重い石を動かす絵」が載っていたのを思い出しました。

 次に試したのは2本の立木、その根元にレールをかませてロープで引っ張ったところ、大地に根を張った木はビクともせず、ロープを緩めるとレールは元に戻りますが、わずかながら曲がっているように見えました。どこまで引っ張ったかがわかるように目印を付けて何回か試してみたところ、大きく引けば引くほど戻した時に残っている変形量も大きくなっているようでした。順序が逆ですが、工学部の授業で使っていた材料力学の教科書を読み返して計算したところ、約20kgの力で引っ張った辺りから塑性変形(永久変形)が始まるようです。もちろんこの数値は2本の立木の間隔、ロープを掛ける位置で変わってくるのですが、工夫すれば6kgレールは人の力で曲げられることの証しになりました。

 4本の5.5mのレール端1.5mくらいを同じ条件で曲げて突き合わせるとS字カーブになります。結果的にオフセットは500mm、半径は約5mで計画通りうまく樹木を避けて線路が敷設できそうです。邪魔になる切株を掘り起こして整地し、砂利を敷いて枕木を並べ、S字型にレールを置いて犬釘を打てば、11m分の路線延長が完成しました。

敷き終えたS字カーブ

 と言えば簡単な話ですが、少し面白いことがありました。下の写真()を見てください。S字型用地を掘り込んだ路盤に砂利を入れただけなのでレール面は水平なのですが、どう見てもジェットコースターみたいに上下にうねって見えるでしょ。反対側から見ると水平だし、「鹿部ミステリースポット」で売り出そうかと思っていたのですが、枕木とバラストを入れたら普通の線路(写真右)になってしまいました。

本当は左右に振れているだけなのにジェットコースターみたいに見えます

 もう一つ面白い話、このS字カーブを含むレール2本分が繋がれば線路の長さが従来の3倍になります。それを眺めていると、ミステリースポットが「ここを一気に走ると楽しいぜ!」と誘惑してきました。既設の5mで無蓋車に助走をつけてレールを置いただけの新線に突っ込むと、2mも走らないうちに脱線。後にも先にも鹿部電鉄で唯一の「重大インシデント」になりました。レールは枕木に固定してこそ線路、ケガはなかったものの遊び心も過ぎると笑いごとでは済まないという教訓です。

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