メンテナンスなどと言うと日頃から点検や保守を怠らずに手入れしていると思われてしまうかもしれません。実は最初に敷設してからそれらしいことは何もしていませんでした。広葉樹の枯葉は強い風が吹くとどこかに飛んで行きますが、落葉松(カラマツ)の針葉は砂利の間に入り込み、泥土と絡んで堆積していきます。寂れた地方私鉄の雰囲気を醸し出していると思って放っていました。土があると雑草が生え、ますます寂れます。
カラマツ針葉に覆われた線路 |
落葉泥土除去作業後 |
腐朽した枕木 |
想像を超える生命力のスギナ |
メンテナンスなどと言うと日頃から点検や保守を怠らずに手入れしていると思われてしまうかもしれません。実は最初に敷設してからそれらしいことは何もしていませんでした。広葉樹の枯葉は強い風が吹くとどこかに飛んで行きますが、落葉松(カラマツ)の針葉は砂利の間に入り込み、泥土と絡んで堆積していきます。寂れた地方私鉄の雰囲気を醸し出していると思って放っていました。土があると雑草が生え、ますます寂れます。
カラマツ針葉に覆われた線路 |
落葉泥土除去作業後 |
腐朽した枕木 |
想像を超える生命力のスギナ |
「趣味とは何ぞや?」難しい問いかけですね。「小さい頃から電車が好きなだけで、理屈なんかあるかい。」とずーっと思っていました。でもやっぱり歳取ると理屈っぽくなるわけです。最近なんで鉄道模型を作っていたかを考える機会がありました。
人間って理性の仮面をかぶっていますが、実は本能に操られているンです。それを突き動かすのは征服欲とか独占欲です。あからさまな民族支配とか略奪ではなく、人道を遵奉しながら代替行動を取ることでそれは満たされます。昔の若者は馬を馴らして野山を駆け巡っていたのが、現代では車を意のままに動かして征服欲を満たします。鉄ッチャンは気に入った車両の模型を作ったり買ったり、それにディテールを付けたりして我が物にしますが、これらは合法的独占欲の発現に他なりません。他人と違う物を手に入れたり、違った方法を使ったりすることでより強い欲望が満たされます。撮り鉄然り、乗り鉄また然り。ある時期、私は山の中で土に埋もれた森林鉄道のレールを掘り起こして金鋸で切出し、それを自分の手で握りしめた時無上の喜びを感じました。これは「掘り鉄」と言うのでしょうか、それとも「切り鉄」?「○○鉄」と一括りにできないような千差万別のフィールドがありますが、気付かぬうちに本能に駆られて一人愉悦に浸るのが趣味ではないでしょうか。
受け売りで恐縮ですが、仏教の解説書にこんなことが書かれていました。人間の欲には二種類あって、一つは欲求もう一つは欲望である。食欲や睡眠欲が生命を維持するために必要な欲求であるのに対して、快楽欲や金銭欲は生きていくのに必須ではない欲望である。長い人生をかけて収集した鉄道コレクションを命より大切だと言う人がいるかもしれませんが、鉄道に限らず趣味にうつつを抜かすのは生きることに余裕のある証しではないかと思います。無人島に漂着した時、砂浜に椰子の実とブレーキハンドルが転がっていたら、あなたはどちらを先に手に取るでしょう。
初夏の鹿部電鉄 |
転轍機と分岐器が繋がってとりあえずはうまく動作するようになりましたが、前回の投稿に挿入した動画ではなんとなくぎこちない動きをしているように見えました。トングレールがスライドするプレートの表面が汚れていたので清掃してから新しいグリスを塗布し、2本のロッドの長さを調整することで定位側と反位側で伸縮筒の動きが均等になりました。
こうやって試行錯誤の末に新しいモノが出来上がっていきます。世の中で言えば決して新しいどころか100年以上もの昔からあった分岐器ですが、鹿部電鉄にとっては新規開発品です。真っ当な使い方をして期待通りに動作するだけでは開発したとは言えず、想定外の事態に遭遇しても損傷を被ったり危険な状態に陥ったりしないことを検証しておく必要があると思います。と言ってもこれを販売するわけではありませんので、耐久試験や取扱説明書の作成まではやりません。ついうっかりやってしまいそうな「想定外の事態」に備えて安全性の確認だけはしておこうという話です。
つまり、転轍機を切り替えて閉じた側の線路から車両が逆行した場合でも絶対に破損や脱線が起こらないことを確かめます。理屈の上では伸縮筒が撓んで鎖錠状態の転轍機に無理な力が加わらないようにしてあります。
もう一つの試験では不完全な切替え操作、つまりレバーを中間の位置で止めてトングレールが基本レールに密着していない状態で車両が進入した場合、どの程度不完全な状態なら脱線に至るのかを確かめます。完璧に密着していなくてもフランジのテーパーのおかげで簡単に脱線しないことは解っていましたが、実は中途半端な状態で進入すると間違いなく脱線するだろうと想像していました。試験結果は動画をご覧ください。
2本のトングレールの幅と両輪のフランジ間隔がほぼ同じであることが幸いして、両側の車輪は必ず揃ってトングレールのいずれかの側へ転がり、脱線することはありませんでした。結果的に解ったことですが、こういう異常な状況下でもトングレールの幅が狭過ぎず広過ぎないことで脱線を免れる要因が備わっていました。動画の後半ではフランジがトングレール先端に乗り上げる様子が映っています。速いスピードでこういう衝突が起こるとおそらくなんらかの問題が発生することは想像に難くありません。転轍機を操作した時は確実に切り替わっていること、また日常点検で転轍機と分岐器が正常に連動していることを確認しておく重要性をあらためて感じました。後編は、実物のだるま転轍機の動作原理に少し触れてから、鹿部バージョンのメカニズムとリンク系について説明します。
21世紀の今では、だるま転轍機を見る機会はほとんどありません。保存鉄道や使われなくなった側線とか地方私鉄の車庫・工場などで稀に目にすることがある程度でしょう。その構造はシンプルで、レバー(テコ)でL型ベルクランクの一端を上げ下げすると他端が水平方向に動いて転轍棒で繋がったトングレールを連動させる、というものです。
だるま転轍機の動作原理 |
前編でも触れたとおり、実物のだるま転轍機のようにトングレールの真横に設置すると操作上不便が生じるので、貨車一両分手前からロッドとリンクで遠隔操作(?)できるようにします。したがって転轍機側面にL型ベルクランクは取り付けず、独自の機構でレバーの操作と同じ方向にロッドが動くようにしました。機構学用語では揺動スライダークランクと言います。その仕組みは動画をご覧ください。
転轍機設置位置 |
伸縮筒の構造 |
2022年春の屋外作業は、前年に完成した分岐器の転轍機を製作することから始めました。「分岐器の転轍機」って何のこと?と思いますよね。線路が分かれる部分を「分岐器」と呼び、それを切り替える機械を「転轍機」と言うことになっているようです。しかも「器」と「機」を使い分けるのが一般的です(区別していない記述も見受けられます)。分岐器の構造が時代とともに変化していたり、文献やウェブサイトによって各部の名称やその定義(範囲)もまちまちであったり、さらに私自身がその方面の専門家ではないので何が正しいのか判断できず、とりあえず上記のように分類することにしました。
だるま転轍機 Wikipediaより |
狩勝エコトロッコ鉄道さんがダルマ転轍機を鋼板からレーザー切断して溶接組立製作した、と聞いたので図面を見せてもらいました。機材や技術力で後れを取る鹿部電鉄では木材を成形して鋳物のような質感に仕上げることにしました。スケールは線路や車両に合わせて1/3です。本体部分はt12のクリ材をジグソーで切り出し、t24のスペーサーを挟んでやはりt24のベースに取り付けます。レバー類はt6の帯鋼から金鋸とヤスリで削り出して重量感を持たせることにしました。レールの斜め削りに比べると大して根気のいる作業ではありません。
だるま転轍機の基本寸法 実物とは形状・動作が異なります |
簡易軸受 |
組立前の部品 と 組立て後パテ塗りの状態 |
レバーは当初t3の帯鋼を2枚重ねにネジ止めしてしてから加工しようと思っていました。たまたま新規開店したホームセンターの鋼材売り場でt6×32を見つけたので、それを利用することで多少の省力化ができました。所定の位置にM10のタップを立て、そこに寸切りボルトをロックナットで固定して軸にしました。
ドリルレース |
塗装完了した鹿部電鉄バージョンだるま転轍機 |
今年の冬、札幌は大雪で連日列車運休のニュースが全国的に流されたこともあって知人から「大丈夫か?」と心配の電話が頻繁にかかって来ました。太平洋に面した鹿部は例年になく穏やかで雪かきに忙殺されるようなことはありませんでした。とは言え感染症が怖くてスキーには行かず、買い物のための外出も最小限に抑え、専ら家でパソコンを操りながら春の到来を待っていました。
妄想トレインはD1040よりキハ40000に傾き、窓割りの詳細をメーカー(日本車両)図面から読み取って1/3の縮尺に落とし込む作業を楽しみました。寸法を割り出すだけではなく、材料や補強構造を考えながら、当時の超軽量設計の車体イメージを損なうことなく安全性や耐久性を確保する方法や、どうやって車内に乗り込んで運転するか(乗降トリックを考えるのは楽しい!) など、色々と思いを巡らせました。同様にTR27型帯鋼組立菱枠台車の1/3スケール設計も進めました。溶接や複雑な機械加工を必要としない構造で作れそうであることも確認できました。庭の雪がなくなったら新線の路盤工事に着手しなければならないのでいつまでも妄想に耽るわけにはいきません。とりあえずここまでのまとめをすべく、車体と台車の図面を仕上げてブログ報告させていただきます。
キハ40000鹿部電鉄バージョン |
窓他の詳細寸法 |
TR27鹿部電鉄バージョン |
自分で撮影した菱枠台車の写真や蔵書に掲載されていた図面はそのほとんどが今手元にないので参考になりそうなものをネットで探してみました。帯鋼の厚さや幅について大体の見当はつきましたが、これも最終的には保存車で確認が必要です。実際の構造と1/3スケールで再現するための手法(材料・組立)もほぼ確立できそうです。一つだけ迷ったのが揺れ枕で、せっかくこのサイズで作るならと意気込んだのですがこの台車の揺れ枕は外からほとんど見えず、想定される苦労の割には見た目の効用に疑問が生じたのでやめました。
スイスがらみ三題噺の最後です。長男が2歳になった頃、電車のおもちゃを作ったので枕元に黙って置いておきました。目覚めて布団の周りで戯れているうちにそれを見つけると目を輝かせて大喜び、それからしばらくそのおもちゃで遊ぶ日が続きました。しっかりDNAが受け継がれていると喜んだものです。頑丈であることを第1に□35mmの角材の角を落とし、敷居の溝にはまって動かせるように20mm幅の板を足回りにしてあります。1/80スケールにしたのは16番の寸法を真似られるからでした。サーフェーサーで目止めをしてからベルナーオーバーラント鉄道とウェンゲルンアルプ鉄道の色に塗装してあります。子供のおもちゃなので赤とか青にすればいいのに、親の拘りに付き合わされた哀れな息子です。
敷居電車第1号 |
その息子のところに生まれた初孫は男の子でした。じいじの家に遊びに来た時に備えて置いておいた色褪せた電車を見せてやると、やっぱりとても喜んで遊んでくれました。家が京浜急行沿線なので、次の年に来る時は新車をプレゼントしてやろうと考えたのが2100型です。ベルナーオーバーラント鉄道に比べるとずいぶん進化してるでしょ。
京急2100型 |
中央線E233系 と 阪急新1000型 |
西武2000型 |
こちらは家具工房「わ」の長沢さんのお孫さんにお礼かたがた贈った電車です。
電車を贈る時はいくらかの線路も添えます。夢が広がるでしょ。