2021/09/06

直接制御器各部の構造 前編

  まずは完成した直接制御器の外観をご覧ください。実物の1/2の大きさですが、良く出来ていると思いませんか。

完成した直接制御器

 図面検討した各部は、部品図を作成して外注加工するものと自身で彫刻や仕上げ加工をするもの、通販で購入するものからなります。

直接制御器内部構造図

 1.主ハンドル軸とノッチ機構

 制御器の機構部はt3.2の亜鉛メッキ鋼板を、長ネジを介して3枚配置し、そこに主ハンドル軸、カム軸、前後切替軸の軸受けユニットを取り付けます。実物の制御器のノッチ機構は各種あるようですが、製作容易=構造簡易=動作確実と考えて、主ハンドル軸上のVノッチを加工した円板にローラーを押し付ける構造にしました。バネの押し付け圧力は作ってみてから調整します。主ハンドル軸は大きな力や衝撃が加わってもズレが生じないようハンドルやVノッチ円板とはキーを介して固定します。

 その主ハンドルは20mm厚の黄銅板から削り出すことにし、軸が嵌る穴やネジ加工があるので荒削りも含めて鉄工所に外注します。ハンドルの下に別体の円形ベースを取り付けます。この部品が軸と嵌合し、やはりキー溝加工を施して手荒な取り扱いでも緩んだり抜けたりしないように強固に固定します。

機械加工が終わったハンドル
 これら制御器内部の機構部品は、従来からお世話になっていた函館市内の柴田工作所に発注しようと考えていました。ところが感染症流行で世間全体が休眠状態の中、テレワークもママならぬ鉄工所が果たして操業しているのか心配して訪問したところ、意外にも好況で忙しいとのこと。図面を手渡して「本業の合間仕事で結構なので出来るだけお安く!」と無理をお願いし、次の買い物で出かけたついでに部品を受け取ることにしました。
 フライス盤による加工の終わった主ハンドルはグラインダーとヤスリで角を落とし、Rに仕上げます。こちらはパテで修正ができないので少しずつ削りながら真円になっているか形状を確認し、最後はサンドペーパーで磨きます。主ハンドルは直接制御器の見せ場であり、我ながら見事な仕上がりになったと自慢の一品です。

 ノッチの動作状態はバネ圧を含めて試作一発目の出来上がりで丁度いい感じになったと思います。Vノッチ円板には通常の操作範囲を超えてハンドルが回らないようにストッパー(ボルト頭)が取り付けてあり、思いっきりハンドルを回してもガッチリ止まります。指先でロータリースイッチを遠慮がちに回していた時とは違ってとても実感的です。

 2.カム軸

左側がカム軸とマイクロスイッチ
 実物の制御器のようにカムで接点を押し付ける構造にすると相当の駆動力が必要になることが想像されますし、接点の構造設計や信頼性に自信が持てませんでした。市販のマイクロスイッチ(ローラー付きリミットスイッチ)を使用することで構造を簡便にし、駆動力も低減できると考えました。電動機負荷125V2.5Aの開閉ができるOmron製マイクロスイッチをネットで探し出し、予定しているコントローラーの寸法にきっちり収まることを確認して設計を進めました。必要な駆動力が小さいので歯車の代わりにタイミングベルトで主ハンドル軸と連動するようにします。マイクロスイッチを押すカムは「シャフトホルダー」という市販部品で、相手のローラー動作範囲に合わせてフランジ部分を削り取って使用します。マイクロスイッチは5個使用し、Off位置からノッチ1の中間で界磁がOnになり、ノッチ1の手前で電機子と抵抗3個の直列接続回路が形成され、その後順に抵抗を短絡してノッチ4でバッテリー電圧が電機子に加わるようにカム軸を調整します。つまり、力行は4段ということになり、従来の制御器より1段増えます。実際の抵抗値は完成後の運転で試行錯誤して決めます。なお、ロータリースイッチで制御していた時はタップ間で一旦無電圧になるため、ツマミの位置によっては加速が止まってしまうことがありましたが、この機構ではそういう懸念はありません。
スイッチタイミングチャート

旧回路(左)と新回路(右) 抵抗と界磁の接続が異なる

 カム軸が回ってスイッチが順に動く様子は鉄道博物館で見た制御器の動作と似ていて、こんなものが手元にあるのかと思うとゾクゾクします。

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