2021/06/15

トロリーポール

 前照灯がついて動力車らしくなりましたがまだ屋根上は寂しく、セピア色の写真で見たどこかのガソリンカーに似ています。この電車がクラシックに見えるポイントは、木造車体、ダブルルーフ、そしてトロリーポールです。どれも今となっては保存車か博物館の標本を観察するくらいのことしかできません。昔の電車の写真を見てもポールの根元にあるバネの構造は屋根の陰になってよくわかりません。それでも調べてみるとその構造は何種類かあるようで、圧縮バネ1本がポールと反対側に出っ張っているものやバネ2本あるいは4本で引っ張り上げるものなどです。結局大沼電鉄のデ1の詳細はわからず、引っ張りバネ2本タイプで製作することにしました。

伊香保電気軌道保存車のポール       横浜市電博物館の標本 

ポール製作素材
 実は前照灯と同じで、ポールにもこれを使って作ろうと企んでいたモノがあり、早々と準備して物置でずっと保管していました。チョッと心配していたのは、その長さが適切かどうかということでしたが、実物の図面と照合したり屋根の上に載せてバランスを眺めたりしたところこれまたピタリと決まりました。モノとはスキーのストックです。先端に行くほど細くなっていますが、これを一から作るとなると金属やプラスチック類では無理で木材から削り出すしかありません。一方、スキーのストックは形状といい、重量(中空アルミ)といい、このために存在していたのかと思うほど最適な素材でした。ストックは左右どちらかが曲がったり傷んだりすると残りの一本も用済みになります。保管していた2本はそんな事情から対ではなく、微妙に太さが違っていますがパッと見では気になりません。

ポール昇降部組立図面

 博物館で撮った写真や模型の解説図を参考にしながらホームセンターで使えそうな部品を漁ります。回転盤とか回転プレートと呼ばれる台座を利用するとポールの転回(首振り)ができます。先端の集電用溝車は戸車を分解すれば使えそうです。サイズや材質は色々ありますが、鹿部電鉄では電圧の関係で集電は行わないので安価なプラスチック製にしました。ポールの根元にはステンレス製の蝶番を使用して昇降できるようにします。こうやって集めた部品を眺めながら構造図を作成し、ポールの重量や重心位置を実測し、昇降に必要な張力を計算してバネの仕様を決定します。バネは見た目の大きさも考慮して通販のリストから選定しました。一部の部品は鋼板から切り出して穴あけやタップ加工し、黒色塗装してから組立てました。ポールを降ろす時に使うコード(ひも)を配線用クリップで取り付けます。コードは普通ならレトリーバー(Retriever)と呼ばれる巻き取り器に取り込まれるのですが、大沼電鉄の電車にはそれがなくて手すりにグルグルと巻き付けてあったようです。余談ですが、同様に尾灯(テールライト)も当時の大沼電鉄の写真には写っていません。デ1の電気配線図には「尾灯」の記述があり、いくら軌道(路面電車)であっても法的に必要な装備であるはずなので不思議でなりません。

ポール完成状態
コード未装着

 屋根上に歩み板を並べ、ポール先端が車体よりすこし出っ張るくらいの位置になるように台座を取り付けました。コードを巻き付ける手すりはアルミパイプを曲げて正面窓下に取り付けてあります。コードが全部出払ってもポールが車庫の梁に接触しない高さに括っておきます。これは非常に重要なことで、うっかり前側のポールを高々と上げたまま車庫に進入したりするとポールや屋根に深刻な損傷が発生する可能性があります。まぁそんなことが起こらないように、写真撮影でもない限り普段は常にポールは下げてフックに引っ掛けた状態にしています。集電しないので実用上は全然問題ありません。


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