2021/06/07

前照灯(ヘッドライト)

  鹿部電気鉄道改め鹿部造船所で早々とカヌーが完成し、電車はいささか遅れを取ってしまいました。それでも車体とともに屋根にも塗装が施されているとやはり鉄道車両らしく見え、以前に比べると庭での存在感はかなりインパクトがアップしました。近くのリゾートホテル宿泊者が散歩で我が家の前を通りかかった折に足を止めてしげしげと眺めて行くことがあります。まぁ、庭に線路やトロッコがあるだけでも初めて見た人は「あれっ?」と立ち止まるようです。それはさておき、大沼電鉄にはデ1型と全く同型同寸の付随客車フ1型がありました。前照灯と集電用ポールを装備していなかったので現状はまさにフ1です。

 鹿部町史写真集に駒ケ岳をバックに大沼湖畔を走るデ1の姿があります。この写真では、前照灯は路面電車っぽく正面窓の下に取り付けてあります(おへそライト)。同じく鹿部停留場に停車中のデ2の写真には雨樋の上、つまり郊外電車のように屋根に取り付けられている様子が写っています(おでこライト)。「デ1とデ2で取り付け位置が違っていた」という説と「撮影時期の違いによる」という説がありますが、どちらも決定的な根拠や言説があるわけではありません。

おへそライトのデ1       と     おでこライトのデ2
 鉄道省へ提出された車両竣工図および製造元の日本車両で作成された組立図では、いずれも前照灯は屋根上に取り付けられています。路線は大沼公園駅前をはじめ併用軌道区間が点在するとともに山間部でシカやキツネが生息する雑木林の間を通っていたので、遠近両方を照射する必要があったことは想像できます。鹿部電鉄では無蓋車を推進運転することがあるので屋根上に取り付けることにしました。とは言っても、夜間に運転することはまずないでしょう。

素材:非常用ライト
(実際に使用したものではありません)
 この電車のヘッドライトはあるモノを利用して作ろう、ということを随分前から考えていました。「あるモノ」とは非常用懐中電灯です。ホームセンターや家電量販店で山積みして、乾電池が4個付いて1300円くらいで売っていました。おそらく外国製で、スイッチ接点兼用の板バネがすぐに弾力を失って点灯しなくなるのが目に見えています。しかし使うのはレンズと反射板とその外周部だけ、いずれ作る必要があるので買っておくべきでした。というのは、20189月に発生した胆振東部地震の影響で、北海道では乾電池や懐中電灯が店先から消えて久しい状況が続いていたのでした。翌年になってやっとの思いで見つけたのはなんとも無粋なLEDライト、そもそもたたき売りをしていた理由が旧式の電球タイプだったためとその時気付きました。その後、執念で探し出した11000円近い価格の非常用懐中電灯を躊躇することなく2個買い求めました。

 懐中電灯を分解して先端部の構造と寸法を調べ、どうやって前照灯らしく改造するか検討しました。胴部は塩ビ管から切り出し、後部の蓋は木製とするものの、旋盤は使えないのでジグソーと木工用ヤスリ、サンダーなどを駆使して成形、最後は接着剤と木ネジで組み立てることにしました。アルミ押し出し材2×10を折り曲げてステーを作り、木ネジで屋根に固定してあります。

 前照灯のサイズは実物の採寸から割り出したわけではなく、非常用懐中電灯を利用する発想から始まったにもかかわらず、車体とのバランスは本当に計ったようにピタリと決まって、一気に電車らしくなりました。難を言えば、昔の電車の灯りはトローンと黄色味を帯びてどことなく眠そうに見えたものですが、アルミ蒸着した反射鏡がキラキラと輝いていかにも近代的過ぎることでしょうか。

完成した前照灯             前照灯取付

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