2021/02/02

ブレーキの試作

  バネの効いた台枠はゴトゴト転がる無蓋車とは違って静かに優雅に走ります。またまたトロッコ遊びに興じる日が続きました。遊びやすくするためにベニヤ板を切って仮の床板にするとともに、運転席、車掌席(運転席の反対側)にも足が置ける一段低い(200)床を張りました。運転席の床板最前部分はブレーキ装置の取り付け部を兼ねています。

   床板を取り付けた台枠           ブレーキハンドル

 本当は、ブレーキは実物に倣って空気圧で作動する直通空気ブレーキにしたいところです。鉄道の運転で何が難しいかと言えば、ブレーキ操作に尽きると運転経験者は答えます。ブレーキハンドルを左に向けると「ユルメ」、中央が「カサナリ」、右が「コメ」です。「ユルメ」はブレーキ解除、つまりブレーキシリンダーの空気を抜く操作です。「カサナリ」はシリンダーを締め切ってブレーキ力を保持すること。「コメ」位置では圧縮空気をシリンダーに籠めることでシリンダーの圧力を上げることができます。シリンダー圧力はそれぞれの位置の保持時間で決まりますので、同じハンドルの位置でもブレーキング(圧力)状態は変わります。また同じシリンダーの圧力でも速度によってブレーキの効き方(減速度)が変わるので、スピードが下がってくるにつれてユルメてやらなければ乗客が将棋倒しになることはご存知の通りです。以前に運転させてもらったことがある庭箱鉄道のSL風機関車は直通空気ブレーキシステムになっており、大変実感的で玄人好み、マニアックです。

直通空気ブレーキ

 直通空気ブレーキは将来像として諦めたわけではありませんが、これから作る電車はブレーキハンドルから伝わる力でブレーキがかかるメカニカルリンク方式にします。つまりハンドルを回す力(右方向に押し付ける力)がブレーキシューに伝わって制動力になるので、自転車のブレーキハンドル、自動車のブレーキペダルと同じ感覚です。

 モデルの電車は当然両運転台型ですが、鹿部電鉄では一方にのみ運転台を設けることにします。理由は構造が簡単になることが一番ですが、こんな小さい電車で運転方向が変わるたびに乗り降する面倒くささを避けたいことのほうが大きいかもしれません。つまりコントローラーもブレーキハンドルも片側に1個ずつの装備です。

共用水栓と犬釘から作ったハンドル
 運転台のブレーキハンドルは、ブレーキ弁を模した上部軸受と床に取り付けられた下部軸受で支えられたφ10の軸を回転させるようになっています。軸の端部は対辺7mmの正方形に加工されており、それにちょうどかぶさるように正方形の穴が開いたハンドルをはめ込みます。というか、取り外し可能な共同水栓用で蝶型ツマミのついたハンドルをホームセンターで買って来て、それに合わせて軸径と軸端の形状を決めたのが実態です。蝶型ツマミの部分を切り落とし、犬釘の頭部を加工して木製の握りと結合し、実感的なブレーキハンドルが出来上がりました。それに引き換えブレーキ弁を模した部分は手抜きで、それらしく木の角材から削り出したブロックをパテで整形し、飾りのナットやプラグを接着してあります。

 ブレーキハンドルでφ10の軸を反時計方向(右方向)に回すと床下のレバーとリンク機構でバネを介してブレーキシューが車輪の踏面に押し付けられ、ブレーキがかかります。シューだけが木製(クリ材)で、それ以外は平鋼と山形鋼製です。これらの部品は全部金鋸とヤスリで自作加工しました。フライス盤を使った機械加工のようなミクロン単位の高精度切削ではありませんが、小さな模型作りで培った手仕上げ職人の技の見せ所です。ブレーキ軸の下側先端はレバーにあけた四角穴にキッチリ嵌め込み、ハンマーで叩いて力技でカシメました。溶接機があれば肉盛りして万全を期したいところですが、仕上がりはしっかりしています。

ブレーキ機構

 ハンドルの可動範囲は約90°で左側約30°は「ユルメ」、中央約30°は角度に応じてバネが撓んで制動力が大きくなり、残りの右側30°はハンドルの力がそのまま加わりながらリンク系全体の撓みでシューを押し付けます。通常の運転では中央辺りまで持って来れば穏やかに制動がかかり、実物の「ユルメ」操作のように少し左へ戻せば最後は自然に停車します。

 この時点では台枠にブレーキだけが付いた状態で、駆動系がないのでコントローラーはありません。足で蹴りながら台枠に飛び乗り、ブレーキ操作で思い通りの位置に停車させるのは普通のトロッコ遊びとは違って実に愉快で、また電車の運転に一歩近づいた感がしました。


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