鉄研のメンバーには曲りなりにでも動力で走る姿を見せたかった、と少し残念でした。実は手元にあるモーターを使ってまずはなんとか動かすことができないかと真剣に考えていたのです。電車の動力になりそうな何種類かのモーターのストックの中から最大出力40Wの可変速モーターに目を付けていました。電源はAC100Vなのでそのまま使うには電力の供給方法を考えなければなりませんが、とりあえず40W程度のモーターで電車を動かすことができるかを判断する実験には使えそうでした。このスクラップモーターにはギアボックスが付いていなかったので、出力軸と車軸の間で減速する必要があります。電車は人が歩く程度の速度(4km/Hr)になればよいとすると、車軸の回転数とモーターの最大回転数から減速比が計算できます。その結果減速比は1/16にすればよいという予測のもとで計算を進めました。実際には中間軸を設けて1/4×1/4の2段減速になります。
さて車両を動かすための動力としてモーターを使用する場合には、車両の走行特性とモーターの出力特性を比較する必要があります。ここでいう走行特性とは速度と走行抵抗の関係のことで、一定の速度を維持するために必要な力をグラフにしたものです。モーターの出力特性は、速度(回転数)に対して(歯車などを介して)どれだけの引張力(回転力)を伝えることができるかを示すグラフです。モーターの出力である引張力は想定される速度の範囲で常に走行抵抗を上回っている必要があります。目を付ける点は、速度が0の時の抵抗力(静摩擦力)がモーターの起動力以下であることと、想定している速度での走行抵抗が引張力より低いことの二つです。
車両の走行特性とモーターの出力特性 |
実験に供したモーターの 出力特性図 |
走行抵抗は実際に車両を押してバネばかりで測ることができ、モーターの出力はカタログの特性図から計算で求めることができます。ただ走行抵抗は線路の状態(錆や潤滑等の表面状態、継目等の凹凸、勾配、曲率)で変動するようで、場合によってはかなり大きくなることが想像されるのでモーター出力には充分な余裕を持たせる必要があることがわかりました。走行抵抗の実測値とモーターのカタログ値を突き合わせると、このモーターで電車の台枠をなんとか動かすくらいの実験はできそうな感覚がつかめたので、モーターと減速機構を組み込んで実証実験をすることにしました。仮駆動部の機構設計を行い、発注した部品が揃ったところで鉄研御一行様の訪問があったというわけです。
実証実験のために試作した駆動部 |
お祭りが終わって一週間ほどで組み立てが完了しました。さて動くでしょうか?電源はAC100Vのコンセントから供給するヒモ付きです。コントローラーをガムテープで台枠の足元に固定し、スイッチON。回転数制御ツマミを回すと唸りを上げながらゆっくりと動きはじめ、ツマミを戻すとそのまま惰性で走るではありませんか。ただ、停止している場所によっては唸るだけで発車しないことがあり、足で地面を少し蹴ってやらないといけない場合もありました。電源供給方法、起動トルク、最高速度、解決すべき問題が色々ありますが、まずは40Wでなんとか動くことが確認できたのは大きな成果でした。
その後、ヒモ付き電源は12V中古バッテリーと自動車用インバーターを接続して車載AC100V電源に置き換え、移動範囲の制限なく長距離(?)試運転ができるようになりました。動画撮影時に映っている車体枠はSPF材を使用した仮設で、この上に棟木を渡して防水(防雪)カバーを掛けます。試作した駆動部はこの後取り外して電車は翌(2017年)春まで冬眠します。
その後、ヒモ付き電源は12V中古バッテリーと自動車用インバーターを接続して車載AC100V電源に置き換え、移動範囲の制限なく長距離(?)試運転ができるようになりました。動画撮影時に映っている車体枠はSPF材を使用した仮設で、この上に棟木を渡して防水(防雪)カバーを掛けます。試作した駆動部はこの後取り外して電車は翌(2017年)春まで冬眠します。
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