ここで三角関数の復習をしましょう。直角三角形の三辺の長さをa、b、cとし、直角でない一つの頂点の角度をθとすると、下図のような関係になります。半径がaの円周長は2πaですから中心角がθの扇形の弧長はそのθ/360倍になることを思い出してください。
この三角関数を何に利用するかと言えば、妻板の窓幅や幕板、腰板の長さの計算に使うと便利で、実物のスケールダウンに有効な手段になります。16番の模型を真鍮やぺーパーで作る時に妻板の展開図は真正面から見た寸法と異っていて、例えば正面3枚窓なら中央は図面通り、両側は1mmほど幅広にケガき、折り曲げてから様子を見ながら切り抜く、という大雑把な加工を私はしていました。何台も様々な車両を作っていると、実物を見ただけで妻板の曲率や窓の大きさをどれくらいにすればいいか見当がつくようになります。大きな模型の場合は失敗したら作り直せばいいと気楽に考えられませんので、加工前に綿密に寸法を計算しておくことが失敗を防ぐ手立てになります。具体的にどんな計算をするのか簡単な例で説明します。右図は一般的な車体実寸法の妻板部の横断面図(上)と正面図(下)です。仮に車体幅2800mm、正面窓は幅800mmの三枚、妻面の曲率は均一で半径3000mmとします。この図の三角形OABを上の図のOABに当てはめるとaとbが既知なのでsinθが逆算できてθ=27.8°がわかります。そして妻板の出っ張りもcosθから346mmとなります。同じように計算すると800mm幅の両脇の窓が正面から見ると762mmになることもわかります。設計寸法を黒字で、計算結果を赤字で示してあります。この計算を応用すると正面図を測った数値から展開寸法を計算することもできます。
さてキハ40000は正面4枚窓で竣工図によると中央寄りの窓幅は580mm両側が500mm(いずれも車内側内寸)、妻面の半径は推定2700mmです。窓の比率を保持したまま1/3にスケールダウンし、車外から見た窓と桟の寸法と正面図上の寸法を計算します。つまり半径900mmの円弧上の窓の幅に対する中心角を求め、cosを掛けると正面図の寸法になります。同じように妻板の中央がどれだけ出っ張っているかを計算し、幕板や腰板を短冊状の細板から製作する際の素材寸法と併せて補強材(図中④の弓形部材)の設計に利用します。屋根に薄い杉板を貼り付けて曲面を形成する際の材料設計にも使うことができます。
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