2022/01/19

妄想トレイン 後編

  車体の妄想はどんどん膨らんでいきますが、事の発端が急曲線通過時の走行抵抗を低減しようということですから足回りを真剣に考えなければなりません。独立車輪付きの短軸距ボギーをどのように実現するか、さらに駆動軸の左右独立回転をどういう手法で解決するかが命題です。

独立車輪のバリエーション
 通常車軸は両端を軸受で支えられ、そこに2個の車輪が固定されて両輪は同じ回転数で転がります。左右の車輪が独立回転するためには何らかの方法で軸を左右分離するか、さもなければ一本の車軸に一方または両方の車輪が軸受を介して取り付けられる必要があります。一本軸の場合は図のようなバリエーションが考えられます。
BCでは付随車輪の場合機能的な差はありませんが、加工や材料のコストの面でBがまさっています。Dの車軸は回転する必要がなさそうに思えますが、台車枠に完全に固定されてしまうと台車の捩れが許容されず、軸バネの自由度もなくなってしまうので現実的ではありません。

 軸受は使用目的に応じて多くの種類があり、ここでは便宜的にそれらしく図示してありますが、形式によって取り付け方や寸法的制約があるので条件に適した軸受の選定と車輪側の寸法形状を検討する必要があります。すでに鹿部電鉄の無蓋車や電車の軸受として使用しているピローブロックは、深溝玉軸受と呼ばれるボールベアリングが取り付け穴付きの鋳物のハウジングに納められていてDIYで簡便に使用できる優れものです。一方玉軸受やコロ軸受(ローラーベアリング)をそのまま使用するには、取り付け部の寸法公差や固定(抜け止め)方法の決定などチョッとした機械設計の知識が必要になります。実物の鉄道車両には一般的に円錐コロ軸受が使用されますが、車両重量が二ケタくらい軽い上に速度も低い庭園鉄道ではもっとも汎用的な単列深溝玉軸受で充分に負荷を受けることができます。回転数や使用時間などタカが知れているので限界荷重や寿命の計算など難しいことは考える必要なく、退役技術者の頭の体操にはちょうどいい題材です。

独立車輪軸受の構造案




 既存の無蓋車、電車に合わせて車輪径はφ230、車軸径をφ35とします。ボス径はφ75あるので軸受を取り付けるのに充分な加工しろが確保できます。屋外使用、メンテフリーが必須条件になるのでグリス封入型を選定し、できるだけ工作機械による加工を少なくして市販部品を使うことでコストを抑えるように留意した構造を図に示します。



 さて、付随台車の独立車輪はこれで問題解決ですが、動力台車の差動滑り対策を立てねばなりません。考え方としては次の選択肢があります。

①自動車のようなデファレンシャルギア使用

Bタイプ独立車輪を使用して11輪駆動

③同上で2モーター使用22輪駆動

④同上で1モーター使用22輪駆動

実際問題として①を自作するには加工部品点数が多く、コスト面で自信が持てません。電動シニアカーの構造はよく知りませんが、中古品(スクラップ)の利用ができるようであればモーターやバッテリーを含めた流用が可能かもしれないので一考の価値があり、今後機会を見つけて調査しようかと思います。~③は図示の通りの構造になります。ボギー車で1輪駆動はやはり心もとないので②にもう1セット駆動軸を、というわけで対角上に動輪を配置したら③になります。2本の車軸は機械的に繋がっているわけではないので差動滑りは起こらないはずです。モーターを1個にするためにチェーンで両軸を繋いでしまうと元も子もありません。そこで動輪を片側に寄せて同じレールの上を走るようにしたのが④です。片側の車輪だけが摩耗するなどと心配していてはエンドレスの走行などできません。どうやらこれで急曲線の走行抵抗を可能な限り低減した庭園鉄道車両の理想像が浮かんできました。
 次に台車の妄想に移ります。2軸電車の単台車の軸受にはピローブロックを使用しました。実はピローブロック(軸受ユニット)にも多くの種類があり、目的や取付場所によってハウジングの材質や形状、サイズが選択できるようになっています。
ピローブロック(軸受ユニット)の種類 旭精工H.P.より

 注目はテークアップ型で、ハウジングの両側が溝になっていてペデスタル式(軸箱守式)台車を再現するのに打って付けなのです。ペデスタル式というのは比較的古いタイプの台車で用いられていた軸箱保持の構造で、軸受両側のガイドで上下方向のみに動きを与えてバネで振動を吸収するようになっているものです。以前からテークアップ型ピローブロックを使ってこの種の台車を作りたいと思っていたので渡りに船です。余分な部分を切り落として軸バネと組合せ、台車枠にはめ込むことで意外と簡単にそれらしく仕上げられそうです。札幌市D1040TS-115台車もキハ40000の菱枠型TR27(TR28)台車もペデスタル式なので最終判断で迷いそうです。 
  TS-115ペデスタル式台車         ペデスタル式菱枠型台車の妄想

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