2024/01/09

キハの構体設計

  暖房の効く工房がないので、冬の間は車両の製作作業が出来ません。そこで外の作業ができない期間は設計に没頭することにしています。その題材はたくさんあって、しっかり図面を描いておかないと材料購入や加工の段階で計算や加工のやり直しに迫られることがあります。キハ関連でざっと考えただけでも、台車の付属部品やブレーキ、駆動部、センターピン、車体構体、側窓と扉、屋根等々。新設車庫とその分岐のほかデ1とトについても自動連結器化はずいぶん前から懸案になったままです。全部のケリをつけようとするとまた何の進展もなくなってしまうので優先順位を考えて着手しなければなりません。キハは最終的にはガソリンエンジンで駆動したいと思っていますが、とりあえず来年中に外観が鑑賞に堪えられる状態になるようにしたいので車体の製作を急ぐことにします。

 キハ40000の実物が半鋼製だったことから、当初実物に倣って木製の側板の表面にブリキ板を貼り付けることを考えていました。これは工作が面倒なうえにきれいな仕上りにする自信が持てなかったことから断念しました。そのかわり鋼製の骨組みに木製の側板を貼り付けることで半鋼製車体とします。工作用ヒノキ角材を使って側板の試作をしたところ、想像以上に実感的な側板を製作できたことに起因しています(2023419日「キハの窓試作」参照)

 その鋼製構体は台車用の素材と一緒に購入した30mmの角型鋼管で製作します。定尺は6000mmですが、運搬の都合上3000mmに切断してあります。車両全長が約3.4mあるのでデ1の時のように四隅に柱を立てるには少し寸足らずです。はしご状に組立てた床構体と天井構体を4本の柱でつなぐために、扉のすぐ外側(車端より窓一個分内側)に柱を隠すように配置します。その前後に妻板ユニット、両側面に側板、さらに屋根を被せて車体を構成します。16番のペーパー模型では側板の上下に補強用角材を貼り、妻板と屋根板を組み合わせて箱型にしますが、この15インチゲージ車両は型鋼で作った骨組に板を貼っていく実物の車両製作に近い工法です。もっとも近年は実物も模型と同じ方法が主流になっていると聞いたことがあります。

車体組立構想

 というわけでまず骨組みの詳細設計に取りかかります。こういう構造物は溶接で結合するのが頑丈であり常道なのですが、鹿部電鉄工場には溶接機がありません。t3程度の鋼材溶接ならDIY用の小型機が販売されており、しかも中古品なら手軽な価格で入手できるようです。私は学生時代の実習を含めて何回か簡単な溶接をした経験があるものの、いずれも酷い仕上がりでなかなか自信が持てません。練習を重ねると上手になれるかも知れませんが、手元に溶接機があっても他に使い道を思いつかないので投資する気になれません。そこで鋼材の結合はガセット(補強材)を用いたボルト締結式として設計を進めます。

角型鋼管をボルト締結する構体組立図

2024/01/01

謹賀新年

 時の過ぎる速さは10年歳取るごとに倍になるように感じます。10歳の頃、「大人(20歳)になるのに今まで生きてきたのと同じだけかかるのか」とうんざりしましたが、実際にはそこまで長い年月ではありませんでした。仕事がいやで、「早く定年退職したいけど会社勤めは永遠に続くのではないか」と思い嘆きましたが、振り返ってみるとすんなり自由の身になっていました。64歳で鹿部に移住し趣味三昧の極楽生活が始まって満10年になりますが、これは本当にアッと言う間でした。

 歳取るとトキめきがないから時間が速く過ぎる、と言う説があります。私はこの10年、それまでに経験したことのないような感動を何度も味わったにもかかわらず、やっぱり時が経つのは速かったと思います。苦痛は長く続き、快楽は一瞬で終わるのかもしれません。残り僅かな人生を、少しでも長くじっくり享受したいと思います。



2023/12/21

防雪カバー

吹き込んだ雪が付着しています
 今シーズンすでに何回か雪が降りましたが、デ1にカバーをかけていませんでした。以前に作ったカバーは、粘着テープで貼り合わせたところが剥がれたり破れたりしているので作り直すことにしていたからです。カバーを作るにはリビングのテーブルをどけてビニールシートを広げ、透明粘着テープで貼り合わせなければなりませんが、立ち座りが大儀で身体が硬くなった高齢者にはこれが難行なのです。冬に向けてビニールは買ってありましたが、なかなか着手する気にならず、かと言って放っておいたら車体が傷むのでやっと重い腰を上げたというわけです。

 前回は立体的に車体を覆うように作りましたが、体力を慮って単純な形態にしました。称して「肉屋の店先で揚げたてコロッケを包む紙袋形」です。長方形のシートの三方を粘着テープで貼り付け、残った一方を開いて電車に被せるのです。ポールが前後に出っ張っているのでむしろ理に適った形状です。1.2m幅のシートなので裾の方はチョッとミニスカートみたいになっています。

チョッと丈が短い

 12月も半ばになると冬本番で、連日最低気温が-10近くまで下がります。全国ニュースで「大寒波襲来、北海道は大雪」などと流すものですから、知り合いから「大丈夫?」と気遣いが寄せられます。鹿部は太平洋側に位置するので西高東低の気圧配置ではあまり雪は積りません。爆弾低気圧が通過したり、弱い低気圧でも停滞したりすると太平洋からの吹き込みで一気に数十センチ積ることがあるので厄介です。まぁひと冬に何度もありませんが。


2023/12/17

待避線(余談雑談) こういうの欲しい

  旧型客車の直角椅子を設けた休憩小屋を庭の片隅に作りたいと書きました(2023/6/2)。小屋を建てる代わりに廃車体の一部を運び込めればいいのですが、それは意外に大きいし費用もかかりそうなので現実には無理です。ところが函館市内と鹿部の隣町七飯町に鉄道車両らしき建物が使われている所がありますので紹介します。

 ラーメン店「ブルートレイン」

 湯の川温泉電停の近くに旧国鉄のワフをそのままお店にしているラーメン店があります。そのままと言っても屋根や側面には板が貼り付けられ、デッキ部には階段や玄関?が作りつけてあるので、なんとなく元ワフという感じです。ところが近づいて足元を観察すると、2段リンクの足回りが本物であることを物語っています。また内部には貨車当時の板張り内装が残っています。こちらに移住してきて初めてその名を知った時は「確かに色はブルーやけど、トレインには程遠いなぁ。」と思っていました。しかし何度かその前を通るうちにいつしか羨望を抱くようになってしまっています。

ラーメン ブルートレイン

 喫茶店「COFFEE TIME

 新川町電停から50mほど南東方向(電車通りから直角)に歩くと右手に赤とクリーム色に塗り分けられた車体が目に入ります。塗色に似合わず客車っぽい感じの車両で、店の前の駐車スペースからデッキに入れます。どう考えても鉄道マニアが廃車体を譲り受けたか、鉄道車両を真似た建物を置いたように見えます。ただ実物の客車の形式に思い当たるものがなく、やっぱり作り物らしいなと思いながら一度なかで鉄話をしたいと機会を窺がっていました。過日近くに買い物に行ったついでに入ったところ、外観ほどに店内は鉄っぽさが感じられず、唯一それらしいのはメッキして磨き上げられた犬釘がディスプレイとして壁に飾られていたことぐらいでした。マスターに聞いたところ、彼自身はまったく鉄っちゃんではなく、先代(父親)がオリエント急行好きで開店する時にこのようなデザインにしたのだそうです。オリエント急行ならこの客車も納得です。

喫茶 COFFEE TIME

 花直売所「小松花園」

 函館から鹿部方面に赤松街道(R5号線)を走り七飯町で函館新道に合流する200mほど手前にある花農園の直売所です。私は高速道路(函館新道)の走行が苦手なので函館への往復にはいつもこの道を利用するのですが、ずっと有蓋貨車の廃車体だと思っていました。貨車だと思っていた理由が屋根のカーブで、単一半径の薄い屋根になっていることからして客車や電車の車体断面には見えません。ところがプレスドアの貫通扉(引き戸)の両側の窓はHゴム固定なので電車の平妻連結面を切り取ってきたかのようでもあります。いかにもな形状の縦樋が付いていますが、それは電車なら側面ではなく妻面側にあるはずです。屋根にはガーランド型ベンチレーターが載っていたりするので、スクラップの寄せ集めかなと思っていました。その後色々な写真を調べていて「これだ!」と気づいたのがヨ8000です。前後の庇と側板は切り取られてなくなっていますが、各部にその名残りを見出すことができます。

花直売 小松花園

      ヨ8000     Wikipediaより

 おまけ「函館牛乳」

 函館空港の西方約2km、函館酪農公社の工場に牛と触れ合ったり乳製品を味わったりできる施設があり、そこに元函館市電の1000型(1006)が保存してありました。廃車体の利用ではなく展示してあるだけで、車内に入ることはできませんでした。ビューゲルはなく、台車は1台を縦割りにして片側からのみ見えるようにしてありました。過去形で書いているのは2019年に撤去されたためです。私がそこを訪問したわずか3か月後のことで、好きな車両だっただけに残念です。

函館牛乳(酪農公社)

2023/12/14

待避線(余談雑談) 鉄道模型のスピードについて

  昔から気になっているのですが、鉄道模型が運転される時のスケールスピード(実物換算速度)は速過ぎるのではないでしょうか?曲線部に入るとカクッと曲がって、動画で見てもいかにも模型ですと言わんばかり。市販品は最小曲線半径で脱線転覆しない程度に最大速度が設定されているのではないかと思われます。Nゲージ等小さなスケールほど、またレイアウトが大きいほど、傾向として速く走っているようです。一般的に自作、市販品にかかわらず、全体のバランスや細部に拘ってできるだけ実物のイメージを再現するように作られています。なのに、なぜか時間軸だけが車両やレイアウトのスケールと合っていません。スピードが遅いとエンドレスを廻って手元に戻って来るまで待ち遠しくて、ついついパワーパックのツマミを回してしまうのでしょう。模型に限らず、車を運転していても多くのドライバーが法定速度を越えて走っているように、何か本能的に駆り立てられる心理が働くものなのかもしれません。

鉄道博物館の巨大レイアウト

 鉄道模型では細部に拘って普通の人なら省略してしまうような小さな部材を取り付けたり、車内の天井や床下の裏側も忠実に再現したりなど、いろんな工夫をして実物っぽく見えるように努力する人がいます。小さな軽便鉄道レイアウトで実にゆっくり走る列車やそれに合わせて車体がゆらりゆらりと揺れるギミックを組み込んだ車両を見たことがあります。電圧を下げただけでは動きがぎこちなくなるので、減速ギア比を大きくしてスロー運転が出来るように工夫しているようです。これらは模型の時間軸も忠実にスケールダウンしたように見えますが、実は時間だけを頑なに縮尺しなかった結果であると言えます。

 鹿部電鉄はどうかと言うと、駆動モーターの出力不足により最高速度は約4/hに過ぎません。スケールスピードで12km/hはどう考えても超鈍足です。しかし庭で走っているのを見て遅いと感じたことはありません、むしろ線路の長さ(庭の広さ)、モデルの古さ(見るからにひ弱そう)などに馴染んでちょうど良い速度に見えます。電車の大きさや見る人との距離感、モーターや車輪の奏でる音響などにも調和しているからではないでしょうか。

 と考えると、模型の実スピードを縮尺で割ってスケールスピードを計算してもあまり意味がないように思えてきます。博物館の大レイアウトの列車がスケールスピードに忠実に走ると退屈で仕方ないことでしょう。逆にロムニー・ハイス・ダイムチャーチ鉄道みたいに広大な大地を走る場合を別にして、一般的な庭園鉄道ではわざとゆっくりエンドレスを周るとか、往復運転やスイッチバックをすることでスピードと無縁の、実物では味わえない遊びを違和感なく楽しむことができます。

ひとりスイッチバックごっこ

 それにしても、やっぱりNゲージは速過ぎる。

2023/11/24

YouTubeあれこれ

  庭の冬支度が一段落し、物置に散らかっていたTR27の部材(再分解していました)もカヌー格納庫に収納してしまったし、とにかく寒くなったので外の作業は春までお預けです。YouTubeには一年近く投稿していなかったので、TR27製作中に撮りためていた写真や動画を編集することにし、チョッと訳あってまず英語版を作成しました。3分弱にまとめ、最後はおふざけで終わります。

https://www.youtube.com/watch?v=_iLU5_GfwIM

日本語版は独立回転車輪などの走行抵抗低減機能について、このブログで説明してきた内容に触れようと思っていますのでいずれお楽しみに。

 投稿した後次々と表示される関連動画に目を遣ると、ほとんどが英語または読めそうもない外国語のタイトルが付いているのについ見入ってしまうのですが、その中にOn30の卓上レイアウトがありました。Oスケール(1/45)30インチナロー(762mm)の、アメリカ風森林鉄道、蒸気機関車が木材を積んだトロッコを牽いて複雑に敷かれた線路をゆっくり走ります。シーナリーはもちろん周辺機材や建物、積み荷も凝った形状になっていて作者の拘りが伝わって来ます。毎日飽きずに運転しては機関士になり切ってるんだろうなと目を細めました。

https://www.youtube.com/watch?v=qG-X-f6oGGY

それにしても見たところ1m×50cmくらいのレイアウトじゃやっぱりその内に飽きそうに思えます。おそらくその作者は車両や周辺のストラクチャーにコツコツと手を加え、線路際のガラクタや人形、留置してあるトロッコの位置を毎日のように変化させることで生きた鉄道に仕立て上げているのだと思います。機関士は窓から左手を出しているだけで実際には動いていないけれど、掌を精一杯振っているように見せている(見えている)ことで毎日飽きずに運転を続けることができるのでしょう。

 そのレイアウトを45 (Oスケールの逆数) するとほぼ我が家の敷地と同じくらいの大きさになるのですが、我が身に照らすと毎日見て運転して飽きることはありません。ただ線路の上を往復するだけでも充分心満たされるし、車両や線路の傷んだ所を修理するのも楽しいものです。買い物から帰ってきてトに雑貨を満載して母屋まで運ぶと、意図しなくても積み荷はその都度変わるわけで、こんな小さな路線でも鉄道本来の使命を果たしていると思えて嬉しくなります。

 自家用軌道をお持ちの“原物合わせは基本ですチャンネル”さんが最近自宅軌道を森林鉄道と称してYouTubeに投稿されました。

https://www.youtube.com/watch?v=ey3y53FyhJ0

庭の奥の植木を剪定した後、手動トロッコで枝葉を広い場所まで運び出す様子が撮影されています。曰く「大量輸送は鉄路の得意分野」「引きずって来るよりなんぼか楽しい」。そうです「自分ン家に鉄道があると便利だ」なんていうのは単なる方便で、わざわざトロッコに積み替えてわずかな距離を運んでも少しも楽ではありません。その代りそれはメチャクチャ楽しい、家に線路のある人にしか味わえない至上の喜びを感じることができます。“原物合わせ・・・”さんは「飲み終わりの酒瓶の運搬が主です」と自慢げにおっしゃいますが、キッチンから酒瓶をわざわざトロッコに積んで表まで運ぶ姿を羨ましいと思う人なんかいませんよね。しかしもし、わずかでも感じるものがあるようなら自家用鉄道のオーナーになる資格があると思います。

2023/11/20

TR27台車の製作 続編

油性ペイント乾燥中
  仮組みした台車はブルーシートを被せて線路の端に留置していたところ、吹き込んだ雨に晒されて鉄肌むき出しの部分はあちこち赤錆が発生していました。防錆目的を兼ねて全体を黒色塗装するため、一旦全部バラします。油性ペイントの場合は塗装前の脱脂が不要なのでひと手間省けますが、埃や金属粉(切断、穴あけ時の切粉)はきれいに除去しておく必要があり、特にネジ溝に残っていると固着して面倒なことになります。一方でペデスタルと軸受には塗料が付着しないようにしなければなりません。お天気の良い日を選び、刷毛で片面と側面、端面にペイントを塗って材木の上に並べて乾燥します。この塗料は数年前に買った後少し使って置いていたもので、やや賞味期限切れの感がありました。というのはなかなか表面がサラっと乾燥せず、2日ほど屋外に放置しても指先で触れると部分的に濡れている箇所が残っているような状況からも窺えました。季節が進んで朝夕には露が降りる日もあったことがそれを助長していたと思います。塗り残した裏面を塗装していると突然雨が降り始め、天候不順が続いたのでさらに屋内で10日ほど乾燥させました。先に仮組みをしていた1台はあまり手直しすることなく再び組み立てることができましたが、もう1台は切ったり削ったり穴あけなおしたりと随分手こずっています。

 この台車の組み立てを始めてから3ヶ月以上経過しているのにまだ完成を見ていません。TR27を自作しようという大胆な挑戦に対する計画が甘かったのが最大の要因ですが、その他にある原因の一つがカヌー格納庫の雨漏り対策に手を焼いていることです。色々な対策を打ちましたが、ひと雨降るごとにどこからともなく床に濡れが広がり、まだ悪戦苦闘が続いています。ガレージの屋根に上っての作業は危険を伴うので、これ以上の対処は中止して格納庫内の雨水飛散防止対策に変更するつもりです。これも気温が下がれば凍り付くので根本対策の実施は雪が融ける春まで文字通り凍結です。この他に線路の延長や駅、転轍機の改良もこのまま来春以降まで持ち越しになると思われます。


 もう一つ遅延に拍車をかける出来事がありました。言い訳のオンパレードですが聞いてください。少し前から加齢に伴ってトイレが近くなったことは書いていましたが、検査の結果前立腺ガンの疑いが高くなり通院や検査入院を繰り返していました。幸いなことにこの部位のガンは、治療をすれば5年生存率100%とも言われているので、これが原因で鹿部電鉄の存続が危うくなることはないと思っています。まぁこの歳になると何があってもおかしくありませんので、主治医の指示に従って出来るだけ長く趣味生活が満喫できるよう健康維持に気を配るつもりです。   

 そうこうしている間に裏の駒ケ岳はほぼ例年通りに冠雪し、紅葉を楽しむ間もなく急に冷え込んで氷点下の朝には里でも雪がチラつくようになりました。外の作業はそろそろおしまいで、残った冬支度を急がなければなりません。

 落ち葉の吹き飛ばし処理(翌日には元通り)   除雪車対策として車止めの撤去    

雪化粧の北海道駒ケ岳