2024/06/17

TR27台車の走行抵抗試験

  車体製作の合間を縫って完成した台車の走行抵抗特性を測定しました。この台車は左右独立回転車輪を採用することで曲線通過時の差動滑りをなくすのに加え、軸距(ホイールベース)をスケールより短めにすることでアタック角をより小さくして横滑りによる走行抵抗を低減する工夫が加えられています。その仕組みの詳細は2021年12月19日の「鉄道用車輪の話 続編」を参照ください。

 すでに昨年仮組の状態で台車を押して曲線通過時の状況を確認したところ、良い感触が得られたので具体的な数値を測定しようと考えていました。どうせやるなら完全に台車が出来上がってからと思い、その方法を検討していたのでした。件の投稿で引用した1955年(昭和30年)頃の研究論文を読んで、当時の乏しい計測技術(機器)で速度や牽引力を記録する涙ぐましい努力に頭が下がる思いがしました。ならば鹿部電鉄で近代的な計測器が使えるかと言えば、唯一あるのはホームセンターで買った10kgフルスケールのバネばかりが1個だけ。正確な速度さえいまだに計ったことは一度もありませんでした。というわけで、大層なタイトルですが実のところ本当にいい加減な測定結果の報告です。せっかくなので鹿部電鉄の初号車たる2軸無蓋車も同じ条件で測定して比較の材料にしました。デ1は軸距が800mmで無蓋車と同じである一方、駆動系の抵抗があるので測定対象から外しました。

 走行抵抗はバネばかりを台車または無蓋車にワイヤーで引っ掛けて目盛りを読みます。手の引張り加減でその力は大きく変動しますが、感覚的に安定した平均値と判断した数字を記録します。速度は、一定(3~5m)の距離に目印を置き、スマートホンのストップウォッチを使って通過時間を測り、時速に換算します。停止状態から動き出す瞬間の起動抵抗、動き始めて速度1㎞/h前後で抵抗が安定する最小値、さらに3~6km/hの抵抗値を記録しました。手加減、手心満載の測定で、今どき流行りのデータ捏造、偽装のそしりがあればあえて甘んじます。

 とは言え、計測値をグラフにするとそれらしい走行抵抗特性曲線を得ることができました。これは手で押したり引いたりして得た感覚に合致するので全くのウソではありません。まず図1をご覧ください。TR27台車単体の直線、R5m、R4mの走行抵抗です。曲線部では走行抵抗が大きくなっており、独立回転車輪や軸距短縮の効果はそれほど顕著ではないように見えます。R4mの急曲線走行中の車輪を間近で観察するとやはり横滑りが起こっていることは明らかで、その影響を皆無にすることはできないようです。下の動画を参照ください。次に図2はTR27と2軸無蓋車の走行特性の比較です。両者の差として、無蓋車は両輪固定、軸距はTR27が500mm無蓋車が800mm、重量はTR27が70kg無蓋車が100kgです。直線部では独立回転車輪と軸距短縮の効果はないはずなので、この走行抵抗の差は重量または製作後10年の経年劣化によるものではないかと思われます。しかしR4mにおけるTR27の走行抵抗の増加は無蓋車に比べるとかなり小さく、目論見通りの結果になっています。

 上記の研究論文ではレール表面が濡れた状況で走行抵抗がどのように変化するかを調べていますが、明確な結論は得られなかったようです。一方でレールに潤滑油を塗布すると走行が滑らかになり、電車で曲線部を力行する時の速度が上昇することを経験しているので、この効果を定量的に把握しておくことは価値があり、今後機会を見て測定をしようと考えています。レールへ潤滑油塗布するとブレーキが効きにくくなる弊害もあり得失の検討に重要なデータになります。

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