2024/06/27

待避線(余談雑談) 刃物の切れ味

  私の得意料理は千切りキャベツ、葉の厚さより幅が細いフワフワキャベツにとんかつやカラアゲを載せると彩だけでなく味にも影響を与えます。料理包丁は日に何度も使うので、刺身やキャベツを切る前には気合を入れて研ぐことで切れ味が蘇ります。折り刃式のカッターナイフでボール紙を切っていて裏側に切り残しが出るようになったら、「パキン」と刃を新しくすると気持ちよく作業が続けられます。ドリルは切れ味が悪くなると切り粉の出方が変わるのでグラインダーで研ぎ直しますが、先端の切れ刃が上手く削れた時はドリルの両側にらせん状の切り屑がⅤ字型に広がり、切削音も静かになります。

丸鋸用直角ガイド
 工具の切れ味はホントに少しずつ悪くなっていくのでそれに気づかないことがあります。音や振動が大きくなったり、刃が真っすぐ進まなくなったり、進み具合が遅くなったりすることで何かおかしいと思う場合もあります。実は少し前から電動丸鋸で角材を切ろうとしてガイドを当てがっていたのに、何回やっても切り口が直角にならず苦労していました。ガイドの作り方を教えてくれた家具工房の長沢さんに相談したら「直角が悪いンじゃないの?」と言われ、一から作り直しましたが、やっぱり切り口の角度が一定せず、途方にくれていました。ところが先日新しい替え刃に交換してみたところ、音も振動も進み具合もすべて一挙解決、切り口はスベスベでもちろん直角度もバッチリ決まりました。この電動丸鋸は鹿部に移住して来る前に義父のDIYを手伝うために買ったもので、最初から付いていた刃は15年近く使っていたことになります。

チップの損傷状況
 一方昨年購入してキハの台車や構体製作に重宝していたチップソー切断機がやはり直角度不良に加えて異音や異常な熱が発生するようになりました。刃先を点検したところ全周で3ヶ所のチップが欠けてなくなっているではありませんか。慌てて替え刃についてネットで調べたら、値段は数百円から1万円と幅があり、直径はもちろん被削材の種類、刃の材質形状、刃数等によっていろいろな物があるようです。世の中にたくさんの種類があったとしても、近くのホームセンターには数えるほどの在庫しかなく、結局函館の工具専門店へ足を伸ばして、軟鋼用として耐久性の高い替え刃を買いました。チョッと高いかな?と思いましたが、切れ味の良さは仕上がりだけではなく作業性や精神衛生の改善にもつながると考えて奮発しました。さて遅れて届いた構体横梁用□30mm角型鋼管の切れ味は?まるで豆腐を切っていると言えば言い過ぎですが、何の抵抗もなくハンドルが下がって行き、耳をつんざく金切り音はどこかに消え、アッと言う間にウソのような美しい切断面とともに正確な直角に仕上がりました。元々付属していた刃は木金両用と謳っていただけに普及品だったのかもしれません。私がやっている事は所詮趣味のDIYなので大層な機械や本職が使うような道具は猫に小判ですが、せめて替え刃くらいはいい物を使うべきであるという教訓でした。

2024/06/21

キハの車体製作 構体の組立て

  台車の組立ての時は通し穴とネジ穴の位置が合わずに苦労しましたが、構体の加工に際して徹底的に治具の使い方に留意したこともあって組立ては意外なほどにすんなりと行うことができました。

     台枠と台車         4個のメッキが光る台車固定用ボルト
台枠結合                構体完成

 ガセットが片面のみであり、組立て後の剛性がやや気がかりでしたが、しっかりとした組上がりになっています。上部を横から揺すっても構体自体が歪むことなく心皿両脇の側受けで台車が交互に荷重を担って軸バネが撓んでいます。部材の一部(横梁)が未入荷で、この後追加組込みしますが、一応これで構体製作を完了します。

 引き続きこの骨組みの周りに妻板や側板、屋根などの木工部材を取り付けることになります。ところがまだ専用の車庫がないので当分の間ブルーシートで雨風をしのがなければなりません。木工作業の間に現品の寸法や構造をチェックする必要があるためグルグル巻きではなく、必要な時に簡単にまくり上げてアクセスできるようにブルーシートに細工をしました。天井(屋根)には1800×900×t12の合板(コンクリート型枠用防水処理済品)2枚を置いて雨が溜まらないようにしてあります。

   合板を2枚置いて          ブルーシートを被せる(棺桶みたい)

 ついでなのでこの状態でデ1の駐泊所を通過して大型車体が構造物に接触しないか確認しました。完成車体の幅は800mmで、900mmの天板を被せた状態で大丈夫だったので建て替えの必要はないことがわかりました。机上ではピタゴラスの定理で確認済でしたが、あらためてひと安心です。

2024/06/17

TR27台車の走行抵抗試験

  車体製作の合間を縫って完成した台車の走行抵抗特性を測定しました。この台車は左右独立回転車輪を採用することで曲線通過時の差動滑りをなくすのに加え、軸距(ホイールベース)をスケールより短めにすることでアタック角をより小さくして横滑りによる走行抵抗を低減する工夫が加えられています。その仕組みの詳細は2021年12月19日の「鉄道用車輪の話 続編」を参照ください。

 すでに昨年仮組の状態で台車を押して曲線通過時の状況を確認したところ、良い感触が得られたので具体的な数値を測定しようと考えていました。どうせやるなら完全に台車が出来上がってからと思い、その方法を検討していたのでした。件の投稿で引用した1955年(昭和30年)頃の研究論文を読んで、当時の乏しい計測技術(機器)で速度や牽引力を記録する涙ぐましい努力に頭が下がる思いがしました。ならば鹿部電鉄で近代的な計測器が使えるかと言えば、唯一あるのはホームセンターで買った10kgフルスケールのバネばかりが1個だけ。正確な速度さえいまだに計ったことは一度もありませんでした。というわけで、大層なタイトルですが実のところ本当にいい加減な測定結果の報告です。せっかくなので鹿部電鉄の初号車たる2軸無蓋車も同じ条件で測定して比較の材料にしました。デ1は軸距が800mmで無蓋車と同じである一方、駆動系の抵抗があるので測定対象から外しました。

 走行抵抗はバネばかりを台車または無蓋車にワイヤーで引っ掛けて目盛りを読みます。手の引張り加減でその力は大きく変動しますが、感覚的に安定した平均値と判断した数字を記録します。速度は、一定(3~5m)の距離に目印を置き、スマートホンのストップウォッチを使って通過時間を測り、時速に換算します。停止状態から動き出す瞬間の起動抵抗、動き始めて速度1㎞/h前後で抵抗が安定する最小値、さらに3~6km/hの抵抗値を記録しました。手加減、手心満載の測定で、今どき流行りのデータ捏造、偽装のそしりがあればあえて甘んじます。

 とは言え、計測値をグラフにするとそれらしい走行抵抗特性曲線を得ることができました。これは手で押したり引いたりして得た感覚に合致するので全くのウソではありません。まず図1をご覧ください。TR27台車単体の直線、R5m、R4mの走行抵抗です。曲線部では走行抵抗が大きくなっており、独立回転車輪や軸距短縮の効果はそれほど顕著ではないように見えます。R4mの急曲線走行中の車輪を間近で観察するとやはり横滑りが起こっていることは明らかで、その影響を皆無にすることはできないようです。下の動画を参照ください。次に図2はTR27と2軸無蓋車の走行特性の比較です。両者の差として、無蓋車は両輪固定、軸距はTR27が500mm無蓋車が800mm、重量はTR27が70kg無蓋車が100kgです。直線部では独立回転車輪と軸距短縮の効果はないはずなので、この走行抵抗の差は重量または製作後10年の経年劣化によるものではないかと思われます。しかしR4mにおけるTR27の走行抵抗の増加は無蓋車に比べるとかなり小さく、目論見通りの結果になっています。

 上記の研究論文ではレール表面が濡れた状況で走行抵抗がどのように変化するかを調べていますが、明確な結論は得られなかったようです。一方でレールに潤滑油を塗布すると走行が滑らかになり、電車で曲線部を力行する時の速度が上昇することを経験しているので、この効果を定量的に把握しておくことは価値があり、今後機会を見て測定をしようと考えています。レールへ潤滑油塗布するとブレーキが効きにくくなる弊害もあり得失の検討に重要なデータになります。

2024/06/13

キハの車体製作 構体部材の加工

  いよいよ車体製作が始まります。台車完成の勢いが冷めないうちに、魚釣りも庭の草刈りにも目を瞑ってキハの製作に打ち込むことにしました。

 まずは□30の角型鋼管を組立てるに当たって素材の切断、穴位置のケガキ、穴明け、タッピングを行います。切断は昨年購入したチップソーを使用することにより正確できれいな断面を得ることができました。前に記した通り組立てはガセットを介したボルト結合なので、通し穴とネジ穴のピッチが合致するように寸法的に正確な加工をした治具をあてがってクランプで固定してからまずφ2の下穴を明けていきます。治具は構体となる角型鋼管にあけるネジ下穴用とガセットにあける通し穴用の2種類を用意します。これらの治具同士の穴位置が完全に合致していることは絶対条件で、加工中に治具が位置ずれを起こさないように注意することと、加工が終わった後穴同士の相互関係をノギスで確認することを忘れずに行います。最終的に02mm程度の誤差に抑えることを目標にすると組立てはスムースに進められるはずです。

構体の材料                 穴あけ治具

 5月下旬から6月にかけて北海道にはないはずの梅雨で屋外作業は悩まされます。これは鹿部特有の山(駒ケ岳)と海(内浦湾)に起因する気象らしく前線による降雨ではないので本当は梅雨ではないのですが、毎年この時期ジトジトと雨やら霧の日が続きます。風がなければ軒先にテントを張ってこじんまりした作業はできますが、いつ降り出すかわからないので長尺材の加工や塗装は晴天の日を待つしかありません。

やっと来ました塗装日和
 台車を製作した時に塗料がネジ溝に廻って困ったので、下穴加工が終わったらタッピング(ねじ切り)の前に油性ペイントで塗装します。素材購入時に防錆目的でクリアラッカースプレーを吹いていましたが、部分的に赤錆が発生していました。サンドペーパーで錆を除去し、ペイント塗装まで数日間は屋内保管なので軽く防錆油を塗布しておきます。




タッピング完了
 塗料が乾燥したらタッピングです。ガセットを組立てるネジの総数は約150ヶ所あり、TR27台車の約3倍に上ります。スパイラルタップを使うので効率よく作業を進められるとはいえ、同じ加工の繰り返しはうんざりします。ただ漫然とタップを廻していると無意識に指や袖が工具に引っかかって無理な力が加わり、工具を折ってしまうことにもなりかねませんので、常に緊張感を持ち続ける必要があります。時々休憩を取りながら根気強く作業を続けました。

 組立て用のボルト(六角穴付きM5×10)は必要数に余分を見て予めネジ専門店で購入済なので、全部のタッピングが終わったらすぐ組立て作業に取りかかります。鹿部電鉄初のボギー車が線路際の障害物と干渉しないか(どの程度余裕があるか)や走行抵抗の測定をしなければならないので、まず両台車を繋ぐ台枠から着手します。枠組みの直角度や平行度は正確に出せるだろうか?台車はうまく首を振ってくれるか?ボギー車の走行音や乗心地は?布団の中で考えている内に心地よい眠りに落ちていきます。


2024/06/08

小設計変更

  車体製作の前にというか、製作中急に思いついて構造を変更することにしました。台車の両脇に側受けと称するプレートを取り付けて車体下部のローラーから偏荷重を受けることにしていましたが、このローラーを台車側に付けることによりメンテナンス性を改善します。メンテというより故障対策、ネジが緩んだリ潤滑剤が枯渇して動きが悪くなった時に車体の下に潜り込んでの作業はやりにくいし危険を伴うので対策を考えたわけです。

台車に側受けローラーを取り付けるよう設計変更

 台車は今後動力装置やブレーキ機構を組み込む予定があるので、車体をジャッキアップしておいて前後に引き出すことを考えていました。ジャッキアップの前に車内からボルトを緩めると心皿が取り外せる構造にしてあります。もしローラーをはじめ台車に不具合が発生した時はこうやって修理をしたり、下回りの改造や改良をすることが可能になります。

2024/06/03

待避線(余談雑談) ハンドタップについて

  金属材料などにネジを切る工具をタップと呼びます。一般的にネジ切りは機械加工によりますが、DIYではハンドタップが一般的です。呼び径の約80%径の下穴にタップ先端を差し込み、押し気味にハンドルを回すと雌ネジが削られていきます。

 中学校の技術家庭科の授業で先生が実演して見せてくれたのを覚えています。「半回転廻したら1/4回転戻して、また半回転する。」その時はなぜ1/4回転戻すのかわかりませんでした。就職して現場実習の時に職場長が同じことを説明してくれてその通りにするとアルミ合金製の大きな部材にネジ加工ができました。その時わかった1/4回転戻す理由は、時々戻してやらないことにはハンドルが重くなってタップを廻し続けることができないからでした。ところが最近手にしたタップは戻さなくてもどんどん廻せる優れものです。こういうものが半世紀前にあったのかどうか知りませんが、何年か前に知り合いから譲り受けたガラクタ工具類の中に混ざっていたので試しに使ってみたのでした。

左ストレートタイプハンドタップ 右スパイラルタップ
それぞれM6×1(呼び径×ピッチ)とM5×0.8

 ストレートタイプのハンドタップは一回転も廻すと切りくずが詰まってハンドルが動かなくなってしまうのに対して、スパイラルタップはらせん状の溝に沿ってそれが排出されるので連続的に加工ができるということを初めて体験して知った次第、機械技術者としてはチト恥ずかしい話です。一方向に廻し続けられるだけでなく、下穴に対する食いつきが良く、母材表面との直角度の保持も容易で作業能率が格段に高いと感じました。ただ芯の径がやや小さく、無理をすると折れやすいので注意深く作業する必要があるとのことです。キハの鋼製構体製作には数多くのタップ加工が控えており、能率向上が大いに期待されます。

 動画の後半にスパイラルタップが登場します。