2022/01/31

妄想ステーション

  次期増備車両(導入時期予測困難)の妄想もさることがら、鹿部電鉄建設開始以来予定していながら未だ実現していない駅舎、建物の建築計画があります。

 北海道へ移住して来てまだ間のない頃、札幌へ足を延ばした際に北海道銘菓の製造元である石屋製菓の「白い恋人パーク」に立ち寄りました。そこには「白い恋人鉄道」という550mmゲージのミニ鉄道があったのでつぶさに観察させてもらいました(これは202110月営業終了)。それはそれで大いに参考になったのですが、その近くに子供が遊べるミニハウス広場があり、サイズ的に15インチゲージ鉄道のシーナリーにピッタリだとインスピレーションを感じました。その後家内のリクエストで帯広郊外の「紫竹ガーデン」という庭園を訪ねたところそこにもミニハウスがあり、嬉々として子供が出入りする微笑ましい光景を目の当たりにして「いつか線路脇にミニハウスを建てるぞ。」と決意したのでした。
白い恋人パークのミニハウス(上と左下)および紫竹ガーデン(右下)
大沼公園駅舎設計図 寸法は後で追記
 帰宅後国立公文書館の所蔵書類の中に電鉄大沼(公園)停留場の新設工事設計図として建物の図面があることがわかり、コピーを入手しました。建物内部の寸法まで記入された貴重な資料です。国鉄大沼公園駅に対抗するかのように山小屋風の三角屋根を誇る洒落た建物で、「ミニハウスを建てるならこれだ。」と決めました。現役時代の写真こそありませんが、鉄道廃止後駅舎は熱烈な大沼電鉄愛好者に譲渡され、薬局に改装してしばらく存続した後そのまま20mほど東に牽引移動(曳家)したそうです。そのご子息から当時の建物の様子について伺うことができました。駅や電車の写真をいっぱい収めたアルバムがあるはずだったがなくなってしまったと残念がられ、それでもわずかに残っていた写真を示しながら、屋根は青色、壁は灰白色であったとの説明を聞くことができました。ここまで解れば1/3スケールの駅舎は作ることができます。
薬局として移築後の元大沼公園駅舎

1/3スケールの大沼公園駅舎

昭和5年(1930年)新築再建直後の鹿部駅舎
絵葉書
 大沼電鉄の終点鹿部停留場(後の鹿部温泉駅)は開業半年後に駒ケ岳の大噴火によって大破し、翌年新築再建されました。田舎の村の駅にしてはモダンで大きな赤い三角屋根、内部は3階建てであったようです。こちらは建物の図面類が見当たらずスケールダウンは叶いませんが、チョッと考えがあってこの三角屋根をモチーフにした倉庫の建築を思いつきました。ガレージに車を入れても奥に1mほど余裕があるので、スキーやキャンプ、カヌー用品を置いてあるのですが、かねてからDIYの材料や道具類に加えてボール盤作業が出来るくらいのスペースが欲しいと思っていました。無粋な鼠色トタン波板の造りも気になっていたので、ガレージの前に赤い三角屋根の小屋を置き、前面を入母屋風にして何枚かの折戸をシャッター代わりにすれば鹿部温泉駅の雰囲気を醸し出すことができるのではないかと考えました。車を入口側に停めれば奥2~3mを倉庫スペースとして十分な広さが確保できます。
ガレージの前に鹿部温泉駅をイメージした小屋を建てる
階上は資材置き場にして外の梯子と窓を使って出入する
 私の拘りで大沼電鉄の駅に執着しているわけですが、そうでなければこれらは単なる小屋でしかありません。鹿部にいて最も身近な駅と言えばこのリゾート内にあるJR鹿部駅です。大多数の住民は自家用車を持っているので、実際にJRを利用するのはほとんどが鹿部中心部から函館などに通学する学生です。とはいえ、リゾート住民がキノコ狩りや歩くスキーに行く時の集合場所にしたり、散歩の途中で休憩に立ち寄ったりとちょっとした鹿部のランドマークになっています。おなじミニチュアハウスであっても、赤く深い屋根にクリーム色の壁、ピンクの帯の建物はだれが見ても「鹿部駅だ」と気づくはずです。戦時中(1945)の新築以来80年近く経過しており、20年ぐらい前までは暗赤一色だったのですが、少なくともリゾート住民の大多数は現在の色調を鹿部駅だと認識しています。その他に大木から切り出した駅名標やなぜか屋根の櫓の上で回り続ける風力計など、そんな特徴をちりばめたJR鹿部駅の1/3モデルを線路際に置けばインパクト強そうだなと思ったりします。
          夏のJR鹿部駅(2010年頃)   原木に書き込んだ駅名標と屋根上の風力計
建物実測値から作成したJR鹿部駅3面図 1/3スケールにするとちょうど人の背丈ほどになる
 国定公園大沼の湛水は銚子口の水門から大沼電鉄と並行して鹿部に向かう折戸川を流れ、噴火湾に至るまで3ヵ所の発電所で電力を作り出していました。1965年にその水は函館側の七飯発電所へ暗渠で導かれ、折戸川沿いの3発電所は稼働停止するとともに流量は激減しました。現在各発電所は牧場の倉庫として利用されたり廃墟となって放置されたりしていますが、荒廃したと言えど辛うじてその姿を遺しているのがせめてもの救いです。このレンガ造りの発電所の建物を規模縮小して鹿部電鉄の線路脇に建てたいと思っています。元の建物が大きいのでスケールダウンしても人が立ったまま出入りできる倉庫あるいは作業場として使用できそうです。コツコツとレンガを積んで建てることができればいいだろうなぁと思う反面、レンガも1/3のスケールにしなければ迫力に欠けるのではないかと悩ましく思い、小さなレンガ風の外壁材を貼り付けてそれらしくする簡便法でごまかす手も考えました。タービンや発電機を搬入した大型扉やアーチ形の窓に格子状の窓桟、石造りの角柱などどうやって表現するか考え始めると止まらなくなってしまいます。
大沼電鉄に電力供給していた頃の折戸川第二発電所  と    その遺構       
  いずれの建造物も外観がそれなりの存在感を示すわけですが、内部の待合室や改札口、切符の販売窓口も再現したいものです。一方で神戸の実家に置いてきた大量の鉄道関係蔵書(鉄道模型趣味、鉄道ファン、ピクトリアル、海外鉄道写真集他)と模型をいずれ鹿部に持って来た時の保管場所にしようかとも考えています。できればレンガ造りの発電所に線路を引き込み、壁一面に本棚と模型展示棚を作り付け、一角に薪ストーブを置き、旧型客車を彷彿とさせる直角座席に腰かけて傍らのデ1を眺めながら、昔懐かしい駅売りの土瓶に入ったお茶を飲んだら(酒は飲めないので)楽しいだろうなぁ、とまたまた妄想を逞しくしています。

2022/01/22

妄想トレイン 続編

  後編を書いて終わろうと思っていましたが、妄想が止まらないので続編を記します。D1040もキハ40000も気動車なので動力にエンジンを使ってはどうか、とこれは15インチゲージ鉄道を始めようと最初に考えた時から小型ガソリンエンジンが念頭にありました。もちろんその時は動力の伝達方法まで気が回っていませんでしたけど。内燃機関を動力源とする場合必ず考えないといけないのが変速機とクラッチ、逆転機のことです。小型バイクの部品を流用したと思われる(あくまでも想像です)モデルを見たことがあるので絶対に不可能というわけではありません。ただ、ちょうど良い部品が見つかったとしてもそれらを流用するために周辺部品を自作するのは費用、技術(道具、設備)、運用面でかなりの無理があるだろうと思われます。でも妄想するだけなら自由だし、お金も要りません。

線路脇の草刈り
 北海道の田舎に移住して色々な初体験をしましたが、その内の一つが庭の草刈りです。フキ、イタドリ、スギナ、タンポポやイネ科の雑草が短い夏に生命力を爆発させるかの如く、刈っても刈っても成長してきます。2サイクルエンジンの付いた肩掛け式草刈り機で刈り払うのが、冬の雪かきと同様にこの地での日課です。時々エンジンの清掃や調整で簡単な分解修理をすることもあるのでその構造はだいたいわかりました。数万円出せば新品が買えるし、汎用エンジン単体の販売もされています。実は農業用品の販売店で修理の請負をしているようなところがあって、そういう店裏の作業場へ行けばポンコツが転がっているので、事情を話せば選り取り見取りタダで分けてもらうことができるかも知れません。

 草刈り機は、エンジン起動と同時に回転刃が動き出すと危ないので、出力軸に遠心クラッチが内蔵されています。スロットルレバーを最小位置にしておけばクラッチが切れて軸は回転せず、レバーを引いてエンジンの回転数がある程度上がると出力軸が連れ回りを始めます。ただ、ガソリンエンジンの回転数-トルク特性と車両の走行特性がマッチするかが問題です。つまり一般論ですが、ガソリンエンジンからトルクを取り出せる回転数範囲(クラッチが繋がってから最大まで)は車両運転に要求される回転数より狭く、変速ギアやトルクコンバーターに類する機構を介してトルク特性を改善することが必要になってきます。この問題を解決するため、さらに妄想が膨らみます。

ディーゼルエレクトリックDF200
 我が家の裏には函館本線が走っていてまさに北海道の頸動脈、今や旅客輸送は風前の灯ですが、貨物輸送は頼もしくもその大役を担っていて” Red bear DF200”が先頭に立って毎日幾多のコンテナを満載した重量列車が函館方面へ勾配を駆け上って行きます。このDF200はディーゼルエレクトリックと呼ばれ、エンジンで発電機を回しモーターで動輪を駆動する電気式ディーゼル機関車です。ヒントはここにありますが、全く同じ方式ではありません。あくまでD1040かキハ40000の運転方法に似せた取り扱いで動かしたいと拘っています。キハ40000の場合は手前に引けばエンジンの回転数が上昇するスロットルレバーがあり、クラッチペダルとチェンジレバーで変速し、戻したスロットルをもう一度引くという動作を4(4)繰り返して加速していきます。つまり電車の加速と同じようにモーターと直列に接続した抵抗を抜くためにわざわざ疑似的に変速操作をするという実に面倒臭いことを企んでいます。D1040では電車のそれに似たコントローラーで3段加速し、充分な速度に達したら一旦ノッチオフにしてから変直切替レバーを「直」に入れ、再びフルノッチに戻して最高速まで加速することにすれば計4段となり、キハと同じ仕組みで動かすことができます。あとは運転台の機器(スロットルやコントローラー)を車種に合わせてそれらしく作れば楽しく運転できることになります。
キハ40000の動力伝達概念図

D1040運転台 床には足踏みブレーキもある                    
      コントローラー主ハンドルの右側(運転手から見て)が変直切替、左が前後切替
札幌市交通資料館
 下の実験動画をごらんください。同型のDCモーターの端子を互いに接続した状態で一方の軸を回転させると、発生した電力で他方のモーターが回転します。もうお分かりいただけると思いますが、エンジンで一方のモーターを動かして他方のモーターで車輪を駆動すれば車両が動くわけです。ただ単純にそうしただけでは過電流や速度の頭打ちが懸念されるので発電機とモーターの間に抵抗を入れ、速度に応じてそれを抜いていくという電車の制御と同じ方法をとるわけです。キハではチェンジレバーの位置で抵抗値が変わるようにし、D1040ではコントローラーのノッチでそれを行います。接点の切替だけで前後進が簡単にできるのも電車と同じです。

 ガソリンエンジンの回転を直接機械的に車輪に伝達する代わりに発電機とモーターを使うことであまり手間やコストを掛けずに気動車を製作することができそうです。悩みは2サイクルエンジンの甲高い排気音をなんとか腹に響くようなディーゼルエンジンの低音に変えることができないか、太鼓の皮を共鳴箱に貼り付けてエンジン軸に取り付けたバチで「ドドドド」と叩くのはどうかとか、またとめどない妄想が広がります。

2022/01/19

妄想トレイン 後編

  車体の妄想はどんどん膨らんでいきますが、事の発端が急曲線通過時の走行抵抗を低減しようということですから足回りを真剣に考えなければなりません。独立車輪付きの短軸距ボギーをどのように実現するか、さらに駆動軸の左右独立回転をどういう手法で解決するかが命題です。

独立車輪のバリエーション
 通常車軸は両端を軸受で支えられ、そこに2個の車輪が固定されて両輪は同じ回転数で転がります。左右の車輪が独立回転するためには何らかの方法で軸を左右分離するか、さもなければ一本の車軸に一方または両方の車輪が軸受を介して取り付けられる必要があります。一本軸の場合は図のようなバリエーションが考えられます。
BCでは付随車輪の場合機能的な差はありませんが、加工や材料のコストの面でBがまさっています。Dの車軸は回転する必要がなさそうに思えますが、台車枠に完全に固定されてしまうと台車の捩れが許容されず、軸バネの自由度もなくなってしまうので現実的ではありません。

 軸受は使用目的に応じて多くの種類があり、ここでは便宜的にそれらしく図示してありますが、形式によって取り付け方や寸法的制約があるので条件に適した軸受の選定と車輪側の寸法形状を検討する必要があります。すでに鹿部電鉄の無蓋車や電車の軸受として使用しているピローブロックは、深溝玉軸受と呼ばれるボールベアリングが取り付け穴付きの鋳物のハウジングに納められていてDIYで簡便に使用できる優れものです。一方玉軸受やコロ軸受(ローラーベアリング)をそのまま使用するには、取り付け部の寸法公差や固定(抜け止め)方法の決定などチョッとした機械設計の知識が必要になります。実物の鉄道車両には一般的に円錐コロ軸受が使用されますが、車両重量が二ケタくらい軽い上に速度も低い庭園鉄道ではもっとも汎用的な単列深溝玉軸受で充分に負荷を受けることができます。回転数や使用時間などタカが知れているので限界荷重や寿命の計算など難しいことは考える必要なく、退役技術者の頭の体操にはちょうどいい題材です。

独立車輪軸受の構造案




 既存の無蓋車、電車に合わせて車輪径はφ230、車軸径をφ35とします。ボス径はφ75あるので軸受を取り付けるのに充分な加工しろが確保できます。屋外使用、メンテフリーが必須条件になるのでグリス封入型を選定し、できるだけ工作機械による加工を少なくして市販部品を使うことでコストを抑えるように留意した構造を図に示します。



 さて、付随台車の独立車輪はこれで問題解決ですが、動力台車の差動滑り対策を立てねばなりません。考え方としては次の選択肢があります。

①自動車のようなデファレンシャルギア使用

Bタイプ独立車輪を使用して11輪駆動

③同上で2モーター使用22輪駆動

④同上で1モーター使用22輪駆動

実際問題として①を自作するには加工部品点数が多く、コスト面で自信が持てません。電動シニアカーの構造はよく知りませんが、中古品(スクラップ)の利用ができるようであればモーターやバッテリーを含めた流用が可能かもしれないので一考の価値があり、今後機会を見つけて調査しようかと思います。~③は図示の通りの構造になります。ボギー車で1輪駆動はやはり心もとないので②にもう1セット駆動軸を、というわけで対角上に動輪を配置したら③になります。2本の車軸は機械的に繋がっているわけではないので差動滑りは起こらないはずです。モーターを1個にするためにチェーンで両軸を繋いでしまうと元も子もありません。そこで動輪を片側に寄せて同じレールの上を走るようにしたのが④です。片側の車輪だけが摩耗するなどと心配していてはエンドレスの走行などできません。どうやらこれで急曲線の走行抵抗を可能な限り低減した庭園鉄道車両の理想像が浮かんできました。
 次に台車の妄想に移ります。2軸電車の単台車の軸受にはピローブロックを使用しました。実はピローブロック(軸受ユニット)にも多くの種類があり、目的や取付場所によってハウジングの材質や形状、サイズが選択できるようになっています。
ピローブロック(軸受ユニット)の種類 旭精工H.P.より

 注目はテークアップ型で、ハウジングの両側が溝になっていてペデスタル式(軸箱守式)台車を再現するのに打って付けなのです。ペデスタル式というのは比較的古いタイプの台車で用いられていた軸箱保持の構造で、軸受両側のガイドで上下方向のみに動きを与えてバネで振動を吸収するようになっているものです。以前からテークアップ型ピローブロックを使ってこの種の台車を作りたいと思っていたので渡りに船です。余分な部分を切り落として軸バネと組合せ、台車枠にはめ込むことで意外と簡単にそれらしく仕上げられそうです。札幌市D1040TS-115台車もキハ40000の菱枠型TR27(TR28)台車もペデスタル式なので最終判断で迷いそうです。 
  TS-115ペデスタル式台車         ペデスタル式菱枠型台車の妄想