2025/10/26

待避線(余談雑談) 庭園鉄道の法的位置づけ

  -本投稿の主旨は法律の内容や運用の詳しい説明をすることではありません。私はこう言う風に解釈して庭園鉄道を楽しんでいる、というお話しです。本稿の内容を根拠にして発生したトラブルに関して当方は一切の責任を負いません。-


 「庭園鉄道は届出とか認可の必要ないのですか?」とよく聞かれます。「自宅の庭で趣味として楽しむ限り法的な規制はありません。」と答えますが、これはある意味正しい一方、誤解を招きかねない説明でもあります。例えば公道や公共の場に勝手に線路を置いて運転するのと違って、自宅の敷地に線路を敷くことは誰にも咎められませんが、自分の土地だからと言って何をしても良いというわけではありません。私有地でも法の効力は及ぶので自ずと制約はあります。例えばエレベーターなどは自家用であっても法律で届出や定期検査が義務付けられています。

夏の日の鹿部電鉄

冬の日のデ1
 遊園地などの遊戯施設では建築基準法(施行令)に技術基準が明記されており、構造を基準に適合させたうえで届出や登録、型式取得等が必要になります。実は、遊戯施設の技術基準は上記のエレベーターに適用される条文が準用されています。遊戯施設と言ってもブランコやすべり台のことではありません。その定義は素人には非常にわかりにくく、「動力の有無、有償無償を問わず、一時的施設であっても、不特定多数が遊戯目的での移動に利用するものの中で一定の条件に該当すれば『遊戯施設』と見なされる」ようです。ただ鹿部電鉄は不特定多数利用者の遊戯目的のために運転しているわけではないので遊戯施設の範疇から外れることは明らかで、建築基準法による規制(技術基準の適用や届出)の範囲外であると考えています。

2階からの俯瞰 天守から領地を眺める殿様の気分
 私は、15インチゲージはスケールの大きな模型だと思っていますが、Nゲージや16番と違って最悪の場合人身事故が想定されます。また実物の鉄道とは大きさが違うだけではなく、輸送という任務も営利という目的もないので一般的な鉄道の概念とは全く異なる存在であると言えます。さらに、作った人や所有している人によって目的や実態がそれぞれ違うため、一括りにして規制することが難しいのでしょう。そこで遊園地の鉄道は遊戯施設という範疇の中で法的に安全管理を義務付けることになっているのではないかと想像します。この解釈では遊戯施設と見なされない限り、自家用庭園鉄道は法律の縛りなしに建設し、運転することが楽しめるはずです。ただし自分自身の安全は言うまでもなく、家族や訪問者に危害が及ばないように配慮することは重要です。法規制の対象外であってもいったん事故が発生したら、被害者が家族であれ、知人であれ安全管理上の過失が問われることは免れません。

 仮に庭園鉄道が遊戯施設に該当するならどのような基準が適用されるかというと、建築基準法の解説書という文書があってここで多岐にわたる項目ごとに細かく記述されています。全部は書ききれないので関係する部分のみ具体的に挙げると、構造、強度、材料、疲労を考察した計算方法、各種構造物(モノレール、コースター、飛行塔、観覧車等)の計算留意点、法的手続き(認定、届け出、検査等)、関係法令などがあります。

函館公園の新幹線型列車
「子供汽車」に分類される
 その中に「子供汽車」というページがあって「定員時に最大速度から3m以内で安全に停止できる制動器を備えること。」「身体が届く範囲から周辺構造物までの距離が0.15mを下回らないこと。」「機体の通過範囲から0.3m離れた位置に安全柵を設けること。」「進行方向は一方向とし、出発時と同じ状態で到着する軌道形態 (エンドレス) とする。」「運転開始合図装置、ITVによる監視、インターホン等の連絡装置を設けること。」等の他地震、火災対策、耐久性や耐候性などが数十項目にわたって記述されています。これらが基準通りに装備されていないと検査に合格せず、認可されないことは言うまでもありません。

庭園鉄道は運転もさることながら建設も楽しい





 明らかに問題が起こるであろう事柄について対策を義務付ける規制があり、近年ではドローンの発達によって事故が予測されるので法律が整備されています。一方で同種の事故多発が契機となって法律が制定されることがあります。そもそも日本国内の自家用庭園鉄道なんか数えるほどしかないのでわざわざ法律で事故が起こらないように規制するという発想自体がないのでしょう。今後15インチゲージが普及して度々重大事故が起こるようなことになると法規制が厳しくなる可能性が絶対にないとは言えません。大切なのは、法律があるから対策を取らなければならないという消極的な考えではなく、自身を含めて傷害、物損、環境への影響を最小にする気遣いが必要だと考えることです。事故だけでなく、ライブスティームにおける近隣への煙害、見学者の雑踏や迷惑駐車の問題、車両の製作や線路敷設の際の騒音(電動工具や槌音)等、現代社会では法以外への配慮も求められます。


 動力の有無は有償無償の区別と同様遊戯施設の定義に関係ないことは上に記した通りです。過日鹿部っ子教室で子供たちが乗ったトを指一本で押すという実験をしましたが、これは遊戯目的ではなく鉄道車両の走行抵抗が非常に小さくてエコな乗り物であることを体感学習することを趣旨としたものでした。


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